小疇尚氏 2018年秩父宮記念山岳賞を受賞 「日本の山岳景観に関する研究」により

 小疇尚(こあぜたかし)会員(明治大学名誉教授)  第20回秩父宮記念山岳賞 業績名「日本の山岳景観に関する研究」

 

(1)  小疇尚氏は、多くの著書・論文などを通して、地形学・地質学の分野で多大な業績をあげており、この研究分野の第一人者である。

(2)  研究業績として、著書(単著)4件、著書(共著)2件、編著6件、主要論文6件、報告書6件、辞典など4件と豊富な実績をあげている。中でも、2011年に執筆した「日本の寒冷地形に関する研究」(第四紀研究5に掲載)は、小疇氏の研究の集大成を要約したもので、第四紀   学会学術賞を受賞した際の記念論文である。                                                                           

(3)これらの業績を通して、以下のような成果をあげている。                

                                         授賞式で挨拶する小疇尚氏  

①     日本の山岳景観の成り立ちに、地表の凍結・融解に起因する周氷河作用と氷期の氷河作用が大きな役割を果たしていることを、現地での詳細な調査と野外観測による定量的・実証的研究を通して明らかにし、日本の山岳地形研究の発展に大きく寄与した。

②     世界の山地、寒冷地との比較研究を通じて、日本の山岳景観の特徴を明らかにした。

③     世界の中緯度山地の比較研究を通じて、森林限界より上の高山帯で自然景観が最ものは良く残っている日本の山地であり、その要因として日本の高山では家畜の放牧が行われなかったことを指摘している。

小疇氏は、上記のような知見を、多くの後援会などを通じて、専門家だけでなく一般市民や登山愛好家にも分かり易く解説し、日本の山岳景観の魅力や山の自然に関する知識の普及に貢献してきたことも評価することができる。 公益社団法人日本山岳会 平成30年度年次晩餐会記念講演会要旨より引用

以下に千葉支部だよりから小疇氏の記事を抜粋し供覧します。

1.天神平と一ノ倉沢周遊 2015年10月24日(土) 支部だより33号より

一ノ倉沢では小疇先生から「谷川岳の氷河地形/一ノ倉沢を中心に」という、先生労作の小冊子を頂く。谷川岳東面の地形が氷河作用により形作られたという説明をお聞きし、氷河地形、モレーンの観察と解説を受ける。今までただ沢や岩を登っていたが、谷川岳にも昔氷河があったというお話を伺い、大変為になった。

2.小疇先生と行く谷川岳氷河地形観察会 2016年6月5日(日)  支部だより36号より

 6月5日、10時15分、谷川岳ロープウェイ駅に集合。小疇先生とお弟子さんの小久保さんを含め、総勢21名。まずはマチガ沢出合を目指して出発。途中の林道では植物観察。マチガ沢出合で最初のレクチャー。実際にどの部分が氷河に削られ、どの部分がモレーンであるか、など、現物に即してご教示いただく。また、対岸の白毛門側は、尾根には針葉樹、斜面には灌木と全く異なる植生を持ち、これも斜面に積もった雪が動いていることの証左だそうだ。一の倉沢出合前の広場には地形と、その生成に関するパネルが立ち、説明文には小疇先生のお名前が!パネルの前で再度氷河地形の説明。岩稜から岩壁、スラブ、モレーン、と続く地形が一目瞭然であった。雪崩による浸食だけでこの地形を作るとするなら、百万年以上もかかってしまう勘定になり、山ができる前から削り始めなければならないので説明がつかないとか。

3.丹那断層と函南原生林の自然観察会 2017年4月23日(日) 支部だより39号より

晴天の4月23日(日曜)、講師の小疇尚先生指導の下に自然観察会が行われた。参加者は、先生、一般参加者(3名)を含め23名だった。午前7時30分、津田沼駅前に集合しマイクロバス で最初の目的地「函南原生林」へ向かう。午前9時30分、函南原生林の入口に到着する。ここは、江戸時代から禁伐採林として手厚く保護されて今に至っている。現在は、学習の道として自然観察路が整備され一 般に開放されている。標高600~800mに位置し ブナ、イヌシデなどの温帯林から樹齢500年以上だ。林道は標識が整備されていて、木々には名前が表示されていた。次の目的地である「丹那断層公園」へ向かう。 最初に丹那断層のズレの跡が良くわかる「火雷神社の断層」で先生からお話をしていただいた。断層が神社の石段と鳥居の真ん中を通っているため地震時に水平に1mズレたのが良くわかった。 公園では、断層地下観察室や丹那盆地周辺地形模型などがあり、断層の様子がさらによくわかった。当時の農家の大変さや丹那トンネル掘削時の苦労話などを先生からお聞きした。

4.北欧で見たオーロラ 小疇 尚 支部だより41号より

2017年9月6日、久しぶりに太陽表面で通常の千倍以上という大規模な太陽フレアが発生し、11日にも2度目が起きて大量のプラズマ粒子が地球に降り注ぎました。それによってオーロラが出現し、南極昭和基地(南緯69度)では活発に動くオーロラが観測され、カナダやフィンランド北部でも観察されたことを後で知りました。たまたま北欧旅行中にその大オーロラに遭遇しましたので、その様子をお伝えします。

 実は35年前、スカンディナヴィア山地北部を一人で訪れて山々を巡ったことがあり、今はホテルに変わったその時の小屋に泊まって「昼間はハイキング、夜はオーロラ観察」という旅行社の宣伝に懐旧の情を覚えてツアーに参加したのです。この付近は調査などで何度か訪れましたがオーロラに遭遇したことはなく、今回も運が良ければとは思う程度で、それよりも懐かしい山々との再会を願っていました。

 9月11日、昭和基地と同緯度帯のスウェーデン北部のアビスコ・ツーリスト(北緯68度)着。一新された食堂での夕食時から空を覆っていた雲が消え始め、10時を過ぎたころ星空にオーロラが出現しました。それははじめぼんやりした白い一条の筋でしたが、やがて明るさを増して西の山入端からヴェールのように広がり、北斗七星をおおってゆるやかにひるがえり始めました。時折その裾が黄色く輝いて、さながら羽衣をまとった天女の華麗な舞を見るようでした。

 つづく2日間は山や湖畔を歩きましたが、曇天でオーロラは駄目でした。天気が好転した9月14日、ノルウェー北西部のスヴォルヴァー(北緯68度)に、懐かしい山々を車窓から眺めながらバスで移動。夕食後外へ出ると、すでに西の空に薄いオーロラが現れていたので、身支度を整えて観察適所へ急ぎました。

夜の帳が下りるとオーロラは明るさを増すとともに、全天の大半を覆うかと思うほどに広がって激しく動き始め、最盛時には天頂から放射状に降り注ぐ二重三重の青白い光のカーテンが渦を巻き、壮麗だった前回とは違って畏れを感じるほどでした(写真)。やがてその端がちぎれて幅広い一本の帯になり、さらにそれが広がって幾多の星をおおう薄いヴェールに変わって、見ていると天の川に吸い込まれるような不思議な感覚におそわれました。大規模な太陽フレアに旅程が重なる幸運に恵まれて、壮麗な宇宙の営みを見ることができ感動しました。

オーロラ写真 小疇尚氏撮影

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