お知らせ山想倶楽部

■ 2018.07.01

安達太良山行(標高1699.6m)山想倶楽部

 

記・西谷可江

期 日:2018年6月25日(月)~26日(火)

参加者:石原達夫、高橋 聰、吉永英明、横田昭夫、醍醐準一、西谷隆亘、西谷可江(7名)

 

遠い昔、私が中学生の頃だったか、国語の教科書に載っていた高村光太郎の「智恵子抄」。

「智恵子は東京に空が無いといふ。ほんとの空が見たいといふ。(中略)智恵子は遠くを見ながら言ふ。阿多多羅山の上に毎日出てゐる青い空が智恵子のほんとの空だといふ。あどけない空の話である。」

この詩に出あって以来、いつか訪れてみたい阿多多羅山(安達太良山)は、ずっと私の心の片隅にそっと静かに在りました。

 

6月25日(月)晴

梅雨の晴れ間とはいえ、高気圧に覆われた日本列島。最高気温が35度を超え「高温注意情報」が発表された今年全国初となる猛暑日。

熱気でムッとするほどの真昼の東京駅を12:36発・新幹線で郡山へと向かった。

東北本線に乗り換え二本松に着く頃になると、安達太良山は、その稜線に二つの小さな突起を青い空にくっきりと描き、車窓一杯に山裾をひいている。穏やかな山容を瞼の奥にしっかりとしまい込んでいるうちに14:31、二本松着。城壁を思わせる駅舎。二本松には戊辰戦争により落城した霞ケ城の石垣など昔を偲ばせる風景が残っていて、菊人形の開催場所にもなっているという。安達太良連峰を描いた大きな看板が目を引いた。

送迎車で今夜の宿・岳温泉の「()()の郷、あずま館」に向かう。「ほんとの空があるあだたら高原」の看板を目にしながら宿に着いたのは15:00。緑の静寂に包まれた宿。かつて、皇族方がお泊りになったのか、写真が掲げられている。広い和室も室礼も、大窓の向こうに見える緑の樹々にも、ほっと心が和む。小憩後、温泉で寛ぐ。案内によると岳温泉は天然温泉の中でも希少でめずらしい「酸性泉」でメタケイ酸がたっぷり、レモン並の酸性があって「美肌の湯」と言われている。西暦800年代から知られ、江戸時代は賑やかな湯治場として栄えたとか。「俳句の湯」と名付けられた大浴場の壁に掲げられた句を鑑賞しながらお湯を楽しんだ。歓談しながらゆっくりと夕食を戴き、明日の登山に想いを馳せつつ就寝。

 

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満開のサラサドウダン

6月26日(火)晴

7:00、朝食。8:00、タクシーにて宿出発。8:10、奥岳登山口ロ-プウエイ乗り場着。

今日も登山日和。雲一つない真っ青な空。駐車場には十数台の車。

十数人の登山者が見られる。8:30始発のロープウェイに乗車。眼下に町並みを見ながら山頂駅(標高1350m)までの標高差400mを10分で上る。ロープウェイを降りると満開のサラサドウダンに迎えられる。目の前の木道入口には、皇太子同妃両殿下行啓記念碑がある。顔に触れるばかりの灌木の木道を進むと、「200m先、この上の空がほんとの空です」と書かれた標識がある。見上げると、青く果てしなく広がる智恵子の「ほんとの空」にセミの声が吸い込まれてゆく。シャクナゲ、マイズルソウ、ゴゼンタチバナ、ツマトリソウなどに心躍らせながら行けば、涼風に乗ってウグイスの声。カッコウの遠鳴きに聞きほれ、タニウツギに見惚れながら仙女平分岐に到る。可憐なイワカガミに驚きの声をあげつつ登れば程なく、10:06、頂上着。

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安達太良山頂上

1623年、安達太良山噴火。1653年山崩れ発生。溶岩がごろごろところがるザラザラの赤茶けた山肌に、かつての噴火を暫し想い描き、また、遠く万葉集に詠んだ古の人々にも想いを馳せる。山頂は乳首山とも呼ばれるだけあって岩峰が小高くピンと尖がっている。すっきりと晴れていれば吾妻山や磐梯山が望めるというが、薄くガスが広がって前山の緑と麓の家屋が少し見えるだけ。何もない頂上は風があって、独立峰であることを認識する。

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馬の背から沼ノ平をバックに記念撮影

 

 

 

広い噴火口を見下ろしながら10:20、牛の背から峰の辻分岐をくろがね小屋へ向けて出発する。咲き誇るイワカガミを愛で、灌木の中にツバメオモトの真白の花を見つけては脚を止めつつ、12:50、くろがね小屋に到着。55年前に建てられたとは思えないほど小屋の外観はきれいであった。中に入って冷たい飲み物を求め、小屋の外で、涼風の中、昼食を摂る。登山客は我々の他に、中に1人、外に5人ほど。至って静かである。

既に昼食を済ませていた後続のメンバーとここで合流し、くろがね小屋を後にすれば、程なく源泉の井戸があり、傍らにくろがね小屋管理車と明記した車が止められていた。元湯の湧きだし口15カ所から毎分1350リットル湧き出る60~90度の温泉が岳温泉まで8キロの距離を引き湯して約40分かかって流れていくそうだ。くろがね小屋も温泉付きの通年の宿である。少し歩きやすくなった山路を行けば、両側の灌木の下から沢音が響く。ウグイスの声に癒されながら、湧き水の冷たさに感激する。勢至平を経て奥岳登山口へと、抉れた段差のある歩きにくい旧道を延々と下るが、やっと、なだらかな歩きやすい道となり、セミの大合唱に見送られて14:10、奥岳登山口到着。今朝と同じく数人の登山者に出会うが、辺りは静けさに包まれている。お喋りをしながらタクシーを待つこと30分。

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湯日(ゆい)の郷、あずま館

昨夜の宿に立ち寄って温泉で一日の汗を流す。16:30頃、タクシーにて宿を出発、青い植田を見ながら二本松駅へ向かえば、一面に広がる雲間から差す薄日は弱弱しい。

郡山17:30の新幹線に乗車。好天に恵まれて安達太良山行が無事に終わったことに、何から何までお世話くださったリーダーの石原さまに、また、同行の皆さまと楽しく過ごせた幸せに感謝しつつ帰途についた。

心の片隅にずっと静かに在り続けていた安達太良山。今、目を閉じれば、智恵子の青い空の下に、長く山裾を引く安達太良山が、たおやかに横たわっている。