2019年8月 個人山行「花と雪渓の飯豊山」


西吾妻、蔵王連峰の夕暮れ(8/2三国小屋から) 写真撮影:小松恵美子  


日 程 2019年8月1日(木)〜4日(日)
目的地 飯豊山 (弥平四郎登山口〜三国小屋〜飯豊本山〜草月平、往復)
コース 8/1(木)
東京〜会津若松(車移動)
  東京18:00(2:30)→那須高原SA21:00(1:30)→会津若松IC〜東山温泉22:30
8/2(金)
弥平四郎登山口(新長坂ルート)〜三国小屋
  東山温泉5:00(1:45)→弥平四郎登山口7:10(0:20)→祓川山荘7:40(トイレ、水
  場なし)→(0:10)→水場→(2:40)→松平峠11:00(2:15)→上ノ越分岐13:20〜40(昼食)
  
(0:20)→疣岩山14:00(1:00)→三国小屋15:10
8/3(土)
三国小屋〜本山小屋=御西岳
  三国小屋6:00(2:10)→切合小屋8:10(2:30)→本山水場11:00(0:10)→本山小
  屋(荷物置いて)11:30〜12:30(0:25)→飯豊山12:55(1:00)→草月平(宴会)14:00
  〜14:50
(1:20)→飯豊山16:10(0:15)→本山小屋16:35
8/4(日)
本山小屋〜弥平四郎登山口(上ノ越しルート)
  本山小屋5:00(1:50)→切合小屋6:50(1:35)→三国小屋8:40〜9:05(0:50)→疣
  岩山9:55(0:05)→獅子沼分岐10:00〜10:20(1:20)→上ノ越11:40〜55(1:35)
  弥平四郎登山口13:30→日帰り温泉「柳津つきみが丘町民センター」15:00〜16:00
  (5:00)
→東京    移動所要時間は()書き
参加者 小松恵美子、渡辺真一、他4名(計6名)
記 録 文 / 渡辺   写真 / 小松



GPS軌跡図 初日:赤  2日目:香@ 3日目:黄 

 私が飯豊山に初めて登ったのはもう45年も前になる。石転び沢雪渓を登り、本山まで行ったのは記憶に残っているが、その後どこに下りたかは忘れてしまった。探してみたが、記録も残っていなかった。

そんな飯豊山に再び登って花を楽しみたいと思ったのはもう10年も前になるだろうか。密かにチャンスをうかがっていたのだが、なかなかハードルが高かった。
とにかく、アプローチが大変。公共交通を使おうとすると、使える曜日も運行している登山口も限られる。
 さらには運行回数も限られているためどうしても前泊が大前提で、所要日数が1週間近くなってしまう。
タクシーを使えなくはないが、距離が長いため料金は目が飛び出るほど高く、個人1人で行くには相当難しい・・・と言うことで、昨年から仲間に声をかけていたところ、今夏ようやく実現の運びとなった。

今回の同行者は山スキー仲間がメインの女性2名に男性4名で、女性の一人は当会会員の小松さん。
6名中、私と同年配が4名。飯豊山は基本的に避難小屋だが、シーズン中は管理人が入っていて場所によっては寝具や食事の用意も可能である。
宿泊管理費は一人2500円/泊で、寝具貸し出しは1000円であった。中でも一番感心したのは、トイレの清潔さだ。小屋の中に併設されていても全く匂いがしないし、洋式の腰掛け式だし備え付けのトイレットペーパーが使える。これも技術の進歩のお陰だろう。

8月1日(木)  東京〜会津若松(車移動)
 前日は夕方に東京を別々の場所から車2台で発ち、那須高原SAで合流して会津若松の東山温泉に宿泊。1泊2食付きで2万円前後する「庄助の宿 瀧の湯」というところに泊まった・・・のではなく、そこの温泉には入ったが、ここが経営するノンサービスで宿泊だけの宿に4千円足らずで宿泊。仲間がネットで調べて予約してくれたお陰だ。本館での豪華温泉の後は小宴会をして翌日に備える。

8月2日(金)  弥平四郎登山口(新長坂ルート)〜三国小屋
 翌日は5時出発、車で2時間ほどかけて弥平四郎登山口に到着。途中、人家もないような山中を1時間半以上走った。車を置いてから20分ほどで祓川山荘を通る。
地図には水が小屋の中で汲めるとあったが、水道は長い間使われた形跡がなく、他の水場を頼るしかないことが判明。少々焦ったが、そこから10分ほど歩いたところに沢水が流れていて、今日と明日朝分の水を確保できた。
 水場から梅雨明けのギラギラの夏空の下、大汗をかきつつ5時間以上かけて重荷を背負って疣岩山の稜線にたどり着くと、目の前には真っ白の雪渓を抱えた飯豊の山稜が間近にあった。
皆、感極まり思わず歓声がこぼれ出た。周りには望み通り花がいっぱい。名も知らぬ花が多い。
 ところが、夢中になってシャッターを切り始めた途端、重い目をして持ち上げた私の一眼レフは原因不明のエラーにより突然動かなくなってしまった。何というショック!! 
そのため、今回の写真は全て小松さんの撮影によるものである。


アサギマダラとヨツバヒヨドリ

タマガワホトトギス

センジュガンピ

ミヤマクルマバナ

 結局、上り4時間半のコースを、何と8時間もかかって何とか三国小屋に到着。
小屋近くには水場がないため、小屋の管理人さんは岩場のチョロチョロしか出ない水場に20Lのタンクを背負ってセットして水を確保しているとか。
そのため、水は有料でペットボトル1本が¥300/500mL、ちなみに350mL缶ビールは¥800。
 そんな中、食料担当者が保冷袋に入れて持ち上げた生の豆腐を使った麻婆豆腐が今日の夕飯メニュー。 横浜中華街の特選四川麻婆豆腐も加わり、贅沢な夕食を満喫した。もちろん貴重なビールをお供にして。なお、この日深夜に小屋の外に出た小松さんによると満天の星が眺められたそうだ。


三国小屋に到着

横浜中華街の特選四川麻婆豆腐 (相当辛かった)

三国小屋からの主稜線の夕暮れ (左から大日岳、御西岳、飯豊本山)



 飯豊山は福島県、新潟県、山形県にまたがっている。
車を止めたのは、福島県北端の弥平四郎登山口。三国小屋までの稜線は福島県と新潟県の県境。三国小屋は山形県も含めた3県の県境。それより北は新潟県と山形県の県境のはずなのだが、三国小屋から飯豊本山を越えて御西岳までの「登山道」が福島県に所属するという。
 しかも三国小屋から飯豊神社手前まではわずか幅1m足らずのごくごく狭い所領である。
三国小屋から本山に向かって歩く登山者は、真ん中を歩けば福島県、少し左によれば新潟県、右によれば山形県となるわけだ。
この複雑な県境となったのには廃藩置県の実施で、三国小屋から北側一帯は一旦新潟県になったものの、福島県喜多方市にある飯豊神社の麓宮と山頂の奥宮は切り離せないとの地元の主張が通ったため、登山道だけは福島県に戻されたからとのこと。

8月3日(土)  三国小屋〜本山小屋=御西岳
<三国小屋〜切合小屋>
 2日目も底抜けに晴れ上がった青空の下、三国小屋から切合小屋に向かう。
すぐに美しいピンク色が印象的なヒメサユリが咲いているのを発見、また、雪渓の近くではシラネアオイやチングルマ、コバイケイソウなどが咲き誇っていた。
 切合小屋には水が豊富にあり、喉を潤し、水筒にもたっぷりと補給する。この小屋は水に不自由しないためか、宿泊する人も多いようだ。

三国小屋から朝の朝日連峰

ヒメサユリ 

シラネアオイ

チングルマ

アカタテハとタカネマツムシソウ

大日岳とタカネマツムシソウ 

<切合小屋〜本山小屋>
 いよいよ縦走ルートは飯豊本山に向かって長い登りに入っていく。
稜線にはタカネマツムシソウが咲き乱れ、アカタテハがその花に群れていた。
登り切って飯豊本山のキャンプ場に着くと、直ぐ近くが水場だというので荷物を置き、ポリタンクを持って水汲みに行く。雪渓の直ぐ横から湧き水が流れ出ていて、飲むと冷たくて甘露水のように甘かった。
水を抱えて徒歩10分の本山小屋に到着。
コバイケイソウ

クルマユリ

飯豊本山からの大日岳の稜線(左端が草月平)

ミヤマウスユキソウ

ハクサンシャジン
(通常のシャジンに比べ枝分かれの花の数が多い)

<本山小屋〜草月平>
 そこに荷物を置いて飯豊本山と御西岳に向かう。飯豊本山は標高2105mで日本百名山の一つ。
飯豊連山の主峰であるが、連山の最高峰は御西岳の先にある大日岳(2128m)。
本山小屋では、最近その大日岳にクマが出たらしいとの話を聞いた。

本山小屋から身軽な格好で出発し飯豊本山に着いた頃、急にガスが湧き始め、視界がなくなったり晴れたりして周囲の景色に変化が出た。飯豊本山から御西岳方向の稜線はなだらかに上り下りして続き、やがて御西岳への最後の登りにかかるところに平らなお花畑がある。
ここは草月平という名前がつけられていて、ニッコウキスゲの広大な群落があった。

イイデリンドウ No.1

イイデリンドウ No.2

ミヤマコゴメグサ

<草月平>
 我々は、御西岳というピークにどうしても登りたいわけではないので、迷うことなく道を外れた砂地で宴会と相成った。ワイン、バーボン、シードルが供され、生ハム、レバーペースト付きクラッカー、オリーブ、缶ツマ等がところ狭しと並べられた。
そして過ごすこと約1時間ほど。ニッコウキスゲに流れるガスと雪渓と山並みを眺めながら、飯豊山の核心部を堪能したのであった。

草月平のニッコウキスゲ群落 
(奥は疣岩山〜三国小屋の稜線)

草月平のお花畑にて宴会

草月平より御西岳

<本山小屋>
 飯豊山最後の夜は、アマノフーズの「チキンカツの玉子とじ」+「小さめどんぶり」と、またしても豪華夕食となった。最近のフリーズドライ食品のレベルの高さにビックリ。
 食事が終わってしばらくした頃、夏の太陽は飯豊の山に静かに沈んでいった。
陽が沈んだのは飯豊連山の中央から北に位置する烏帽子岳と北股岳の間。
飯豊山の北方にある朝日連峰方面は雲海に包まれていた。

本山小屋にて2日目の夕食
チキンカツの玉子とじ (アマノフーズ) 

飯豊本山の右、烏帽子岳・北股岳への落日と雲海 (本山小屋にて)

8月4日(日)  本山小屋〜弥平四郎登山口
 最終日も、朝からよく晴れて飯豊連山がすっか/Bり見渡せる。だいぶ見慣れてきた花々に送られながら、稜線をひたすら歩いた。
疣岩岳の先の分岐で上りの新長坂ルートとは異なるルートに入ったが、結構上り下りが激しく、標高が低くなって暑い中、体力消耗を強いられた。林の中に入ってしまえば、強い日射しからは逃れられるが、風の通りが悪く、蒸し暑い。
 分岐から上ノ越まで1時間、上ノ越から弥平四郎登山口まで1時間のコースタイム予定が、合わせて3時間もかかってしまった。
最後には熱中症になりかけたメンバーも出たほど。Tシャツもズボンもパンツも全てぐっしょり。

飯豊本山から切合小屋、三国小屋方面を見る(この稜線を戻る)

獅子沼のモウセンゴケ

弥平四郎登山口近くのヤマアジサイ

 車に到着したら全て着替えて、さあ温泉に・・・向かうはずが、途中の道に通行止めがあり予定していた温泉は諦めるはめになった。 別の温泉を探して向かったら1時間半もかかってしまった。とにかくこの辺りは奥深い秘境の山なのだ。
とは言え、ようやく辿り着いたのは柳津の「つきみが丘町民センター」という源泉掛け流しのとても良い温泉だった。 ここで食事もする予定だったがお昼休みで食堂は閉鎖中。定時のバスで神戸に帰るメンバーのために温泉を出たあとは、帰り道を急ぐ。
 ところが8月最初の日曜日の夕方と言う時間帯。随所に渋滞が起きており到着時間が読めなくなり、途中の宇都宮から電車で向かってもらうことに。そうしたら宇都宮の駅前は祭りで通行止めに。
迂回道を急ぎ何とか電車に間に合わせた。
 2番目の同乗者を下ろす北浦和駅には午後10時前に到着した。私自身はその1時間後、自宅へ到着。
4日間の日程を何とか無事に終えることができた。
 自分自身では写真を撮れなかったが、代わりに小松さんがたくさんの素晴らしいショットを残してくれ、良き思い出となった。


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