8月の山行は、おいらと小山さんが幹事だった。はじめ、清里から飯盛山に登り、「つくも会」が管理している中林山荘に泊まる予定だった。だが、飯盛山に登る希望者はゼロ。で、中林山荘にだけ行くことになった。これだけを聞くと何事もなかったように聞こえるだろうけど、今回も、色々なことがあったんだ。まあ、聞いてくれ、皆の衆。
まず、おいらと一緒に幹事をする予定だった小山さんが、行く直前に突然肺炎で入院しちゃったんだ。それでも小山さんは、この山荘を管理している吉澤さんに頼んでくれて、当日吉澤さんが、山荘までの道案内をしてくれることになった。
当日の朝のこと。小淵沢で集合だったんだが、菅原さんが来ない。携帯でメールをいれると、すぐに返事がきて、「いま乗っている」というんだ。みんなで顔を見合わせた。「一体、何に乗っているんだ … ?」菅原さんは、一人で小海線に乗り換えて、甲斐小泉に行ってしまったんだ。そこで、おいらと辻橋さんが買出しに行き、吉澤さんと高橋さんは駅で菅原さんを待つことになった。
買出しから戻って、駅で菅原さんと無事合流。シャトルバスで泉郷に向かった。バスを下りたところにホテルがある。そこから山荘までの道は分かりにくく、吉澤さんがいなかったらウロウロしたに違いない。でも、さすがに高原だから涼しい。東京の暑さがウソみたいだ。
小屋はカビの臭いが充満。先ず、皆で布団と毛布を干し、すぐに掃除だ。それが終わると、辻橋さんは、すぐに台所で何やら始めてくれている。間もなく保坂さんが車で到着。
吉澤さんは、昼飯を食べ、缶ビールを一本飲んだだけで、「この辺は狐と狸しかいないから騒いでも大丈夫だよ」と言い置いて、帰ってしまった。
例によって昼間から酒盛りだ。夕方になってホテルの温泉に行き、帰ってから、ふと気がつくと永田さんの声がする。おいらは、いつの間にか眠ってしまったんだ。
「永田さん、どうも」とおいらが言うと、「武藤さん、さっき、挨拶したじゃない」と言われてしまった。記憶喪失症になったみたいだ。狐にバカされたらしい。
永田さんは、地図の通りに歩いたら違う家に着いて、困って辻橋さんにメールを入れ、迎えに来てもらったらしい。地図が間違っていたら遭難しちゃうよ。
ところで、狐のせいで記憶喪失症になったおいらは、風呂に行ったことさえ全然思い出せない。何だかおかしな気分だ。
おいらが寝ている間に、辻橋さんと保坂さんが晩飯の支度をしてくれていた。いつも通りの、笑い声がいっぱいの宴会だった。寝たのは12時をまわっていた。
|