「山の日」事業委員会

■ 2014.10.12

「山の日」を意義ある祝日に

「山の日」を意義ある祝日に

未来を生むJACの今後の活動

「山の日」を8月11日と定め、国民の祝日とする法案が4月23日、衆議院の本会議で賛成多数で可決され、5月中には参議院でも可決されて成立する見通しとなった。

日本山岳会など山岳5団体の制定運動がきっかけとなって国会議員たちが動き、超党派議員連盟が設立されてから1年。国民の祝日「山の日」が制定され、法律は平成28年から施行されることになる。運動開始から5年で得た成果である。

「海の日」が、成立に40年を要したことを考えれば、非常に短期間での実現であった。当然、そこには理由があるように思える。

なぜ山岳5団体が結束できたか、なぜ党派を超えて国会議員が結束できたか、なぜ「山の日」がいま(「いま」に傍点)必要とされたのか。

●希有な日本の山を知ってほしい

「山の日」制定協議会で作ったリーフレットのキャッチフレーズは「山を考える」である。山について考える日を1日作ろうという思いではじまった。

日本は山の国である。国土の73.2%が100m以上の山地・丘陵地にあり、国土の68.55%が森林におおわれている。同時に日本列島とその山は、世界的に見てきわめて特異な存在である。

まず第1に「地形」。いまの日本列島は、2つの大陸プレートに2つの海洋プレートが沈み込むことで、大陸から切り離され、弧状に曲げられ、火山の影響などによって、複雑で多様な地形地質を持つ列島および山が形成された。

第2に「気候」。春夏秋冬がある温帯気候に加え、亜寒帯と亜熱帯を持ち、夏は雨が多く冬は乾燥し、日本海側では偏西風の影響で世界でも希有な豪雪となる。

この雪と複雑な地形、南北に長い列島と島々のおかげで、氷河期の動植物が生き残るなど、生物多様性を実現してきた。

第3は「ひと」。日本列島に住む人々は、山を畏れ山から恵みを得て生きてきた。山を神体として崇め、信仰の場としてきた。山と共に暮らし、文化や歴史を培ってきた。

レジャーとしての登山人口の多さは世界でも群を抜いている。それは身近にある日本の山の素晴らしさでもある。季節の花々や紅葉、渓谷、滝、池塘、雪渓。溫泉もあり、うまい水で作られた料理もある。

●山からはじまる未来

これまで日本人が山とうまく共生してきたかと言えば、そうとばかりも言えない。

飛鳥時代以降、森林の著しい伐採が行われはじめ、幾度となく過剰利用と資源回復が繰り返されて、現在では有史以来最大の森林面積を得るには至っているものの、山崩れなどによる災害や野生動物の被害、さらには里山の過疎化など直面する課題も多い。

だが、地球温暖化抑制や生物多様性など地球環境保全の役割が重視される一方で、近年国産木材の需要も高まり、観光資源や遺伝資源、健康維持あるいは地域再生の場としても、問題は多々あるものの、日本の将来につながるものとして注目されている。そして自然共生の伝統的な知恵等々にも「期待」が集まる。

日本は少子高齢化と人口減の道を進んでいる(山岳団体もしかり)。加えて経済成長が行き詰まり、急速な情報化やグローバル化、あるいは都市化によって、生活基盤および精神基盤が不安定になっている。

山を考えることが、日本の未来を見いだすと大仰なことを言うつもりもないが、「期待」があることは確かである。「山」が持つ様々な資源や「山」と係わってきた価値観あるいは多様性が、日本に安定した〈生活〉をもたらす可能性を秘めている。

「山の日」を「山を考える日」にするのはこれからである。山を趣味として、研究として、仕事として、居住の場として係わる、多様な会員が在籍する当会が、それを率先してやる必要があるだろう。

「山の日」は成立をもってはじまりとなる。

永田 弘太郎(「山の日」制定プロジェクト)

(『 山』5月号)