医療コラム

■ 2014.01.28

バイアグラが高地肺水腫に効く? 721号

バイアグラが高地肺水腫に効く?

 

志賀 尚子

 

急性高山病が重症化すると、呼吸困難となり、血痰を吐き、意識不明になって、ついには死に至ることがあります。それが高地肺水腫です。現在、ニフェジピンという薬(狭心症や高血圧の薬)が唯一効果のある治療薬とされていますが(注:一刻も早く高度を下げることが最優先です!念のため)、最近国際的に注目されているのが、このバイアグラなのです。ちなみにこれは商品名で、薬剤名をクエン酸シルデナフィルといいます。1999年の発売開始以来、勃起不全の治療剤として脚光を浴びていますが、その薬理作用は、サイクリックGMPを分解する酵素であるホスホジエステラーゼタイプ5の活性を選択的に阻害する、というものです。

高所での低酸素環境に限らず、低酸素に曝されると、肺の血管が収縮し、肺動脈の圧が上昇して肺水腫が起こります。バイアグラがなぜ効くかというと、肺の血管を拡張する作用があるためで、これにより肺の血流やガス交換が改善され、肺動脈圧も低下してきます。

最近の研究報告では、健康な男性12人(平均29歳)をバイアグラ内服群と偽薬内服群の2群に分けて「海抜レベルから1035mまで登り1日滞在後、ヘリで4350mに到達、6日間滞在し、この間バイアグラあるいは偽薬を連日服用した後、再び海抜レベルまで下降」というスケジュールで種々の検査を行ったところ、バイアグラ内服群では有意に高所での肺動脈圧の上昇が抑えられ、動脈血酸素飽和度(動脈血の酸素化のレベル)も偽薬群ほど低下せず、また通常の高所順化身体反応が障害されることもなかった、すなわち「バイアグラが高地肺水腫の治療薬として有望」とのことです。ただし、実際に高地肺水腫患者で使用して効果が認められた、という報告はまだないようです。

さらに「海抜レベルでの低酸素環境およびエベレストのベースキャンプにおいて安静時と運動時のデータを調べたところ、バイアグラ内服群では、偽薬群に比べ、肺動脈圧が低下、心拍出量が増加し、運動能力が高まった」という研究報告もあります。

まだまだその有効性および副作用による危険性は確立していませんが、今後のさらなる研究が期待されるところです。