医療コラム

■ 2014.01.28

山での腹痛(1)―胆石症が原因の場合― 726号

山での腹痛(1)―胆石症が原因の場合―

 

内藤 広郎

 

登山中といえども平地と同様にいろいろな原因で腹痛が起ります。平地であれば、すぐに医療機関を受診できますが、山ではそれができません。従って、緊急性のある場合を速やかに見極める必要があります。今回は、ありふれた病気の1つである胆石症が原因で腹痛が発症する場合について紹介します。
肝臓で作られた胆汁は肝臓から外に出たところで一本の胆管となり、途中、袋のようにふくらんだ胆嚢にたまってから、十二指腸に流れ込んで、脂肪の吸収を助けます。これらの途中のどこかに石ができることを胆石症といいます。胆石症のうちでも胆管に石ができる場合は胆管結石症と言いますが、頻度は少なく、胆管という胆汁の流れる狭い通り道に石ができますので通常いろいろな症状が出ます。従って、これに気づかず登山をすることはあまりないと思われます。一方、胆嚢に石ができる胆嚢結石症は人間ドック等の超音波検査で3~4%の人に偶然発見されるともいわれ、決してまれな病気ではありません。特に女性は男性の約2倍頻度が高く、40歳以上、肥満傾向の人はさらに多くなりますので、中年以降の女性にとっては無症状といえども注意が必要です。

胆石発作は登山中にはじめて起こることもありえます。また、胆石発作のために過去に医療機関で治療を受け、その後は無症状ということもあると思います。一般に胆石の腹痛発作は食後に胆嚢が収縮した際に起こりやすく、典型的にはみぞおちや右上腹部に鈍痛からさしこむような痛みまでいろいろな程度の痛みがあり、嘔吐、発熱や、黄疸を伴うことがあります。過去に発作を起こした人は、経験的に痛みの性質から同じ発作であることがわかりますが、無症状で経過していた人は上記のような症状であれば胆石発作の痛みを考えてください。

胆石発作は過食をしたり、脂肪分の多いものを食べた後などに起こりやすいので、登山中は食事内容を考えると胆石発作を起こす可能性は高くはないと思われます。しかし、発
症すれば絶食、点滴による治療が原則ですので、何らかの方法での速やかに下山、医療施設への搬送が必要になります。従って、胆石発作が考えられれば、まずは水分のみで、食事は中止した方が無難です。もし、無理をすれば、急性胆嚢炎から穿孔、敗血症、急性膵炎など、生命に関わる合併症を併発しかねません。

 

従って、胆石発作の既往があり、しばしば山に登るという人は、消化器の専門医と相談して手術による事前の治療を考慮すべきだと思います。最近では、腹腔鏡を使った胆嚢摘出術が主流ですので、数日の入院で済み、しかも傷もほとんど目立ちません。さらに言えば、山によく登る中年以降の人は健診をきちんと受けて、少なくも自分は胆石があるのか、ないのか、はっきりさせておいた方がいいでしょう。