お知らせ医療コラム

■ 2019.04.15

登山に最も必要なのは技術ではなく体力であるー百名山を達成するイロハのイー

登山に最も必要なのは技術ではなく体力であるー百名山を達成するイロハのイー

社会医療法人財団大和会理事長・杏林大学名誉教授 大野秀樹

「誰も選手交代ない」。これは、登山の本質の1つです。病気、外傷などで行動不能にならない限り、どんなに疲れても苦しくとも、自分の足で歩かなければなりません。登山では、最も弱い人のペースに合わせて歩く必要があります。1人でも弱い人がいれば、ペースは激減します。天候の急変など、歩行速度を上げたいときにもそれができず、全員が危機的状況に陥りかねません。山本正嘉・鹿屋体育大学教授は、中高年者の集団登山は極力避けた方がよい、と唱えています(『登山の運動生理学とトレーニング学』、東京新聞、2016)。さもなければ、数名に1人はサブリーダーをつけ、それぞれ別パーティーとして行動できるように配慮すべき、と。つまり、集団登山では、最も弱い人でも登ることができる山をチョイスすることが重要です。

一方、それではいつまでもやさしい山にしか行くことができません。その解決には、個々の登高能力を知り、適切なトレーニングによって登山体力を改善することが必要です。それには、六甲タイムトライアルがよく知られています。すなわち、山麓の阪急電鉄・芦屋川駅からロックガーデン、雨ヶ峠を経て六甲山最高峰(931.3 m)まで、累積の標高差が984 m、標準タイムが3時間35分のコースを、自分の体力に無理のない範囲でなるべく速く登ります。そのタイムから、自分がどのレベルの山に行ける基礎体力があるかを評価します(図1)。例えば、4時間6分以上かかる人は、5メッツ以下の体力で、低山ハイキングでも困難かもしれません(メッツは、身体活動の強さを、安静時(1メッツ)の何倍に相当するかで表す単位)。これは、高尾山(例えば、稲荷山コースの標準タイムは高尾山口駅から1時間40分)など多くの山に応用できそうです。

次に、登山体力増進です。トレーニングとしてまず浮かぶのはウオーキングでしょうが、山本氏は、平地でのウオーキングは登山のトレーニングとして充分ではない、と断定しています。そこで、坂道を利用したり、荷物を背負ったり、負荷をかけると、より効果的になります(図2)。最も有効なのは、どんな低山であっても実際の登山であり、月に2回は実施したいものです。その他、筋力トレーニングなど、目標の山のレベルが高くなれば、よりハードなトレーニングが要求されるのは、他のスポーツと変わりがありません。

こうした地道な努力を継続すると、無雪期の百名山を達成することは夢ではなくなるでしょう。

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