医療委員会

■ 2016.02.25

JAC110周年記念シンポジウム 「御嶽山噴火について考えるー体験者の声を聞く」を主催    医療委員会担当理事 野口いづみ

JAC110周年記念シンポジウム

「御嶽山噴火について考えるー体験者の声を聞く」を主催

医療委員会担当理事 野口いづみ

医療委員会は110周年記念事業として、6月の名古屋夏山フェスタと11月の松本フォーラムに参画したが、今回、東京で御嶽山シンポジウムを主催した。

12月4日(金)に、慈恵医大高木2号館南講堂にて、「御嶽山噴火について考えるー体験者の声を聞くー」(18:00~20:45)を開催した。参加者は約140名で、会場はほぼ満席だった。JAC会員は約50名、地方からの参加者は10名程度、女性が6割を占めた。

浜口欣一医療委員会委員長が司会を担当し、最初に御嶽山噴火被災者へ黙祷をささげた。重廣恒夫監事による開会の挨拶後、野口がシンポジウム開催の経緯を紹介した。

まず、福岡孝昭科学委員会委員長が、「火山噴火と安全登山」のテーマで講演をした。御嶽山は完全な静穏状態ではなかったが登山規制はされていず、水蒸気噴火だったために予知が難しかったという。噴火後、予知体制と情報伝達が改善され、噴火の緊急情報が携帯電話にメール送信されるようになり、関係省庁の救助体制の整備が行われているそうだ。百名山の1/3が活火山。活火山には危機意識を持って登山し、火山ガスに注意するとともに、噴火に遭遇した時の安全対策として、火口から遠ざかる(尾根や高い所を下り、谷を下ってはいけない)、爆発には休止時があるのでタイミングを見計らって山小屋・シェルター・岩陰へ避難する、ヘルメット・ザックをかぶる、濡れ手拭いで口・鼻を覆うなどをあげた。火山の学習の必要性を説いてしめくくった。

次に、小川さゆり山岳ガイドが、「御嶽山噴火に対する思い」と題して、噴火時に山頂にいながら生還できた経過を淡々とした語り口で詳細に報告した。噴火直後の多くの写真とビデオは臨場感を与えた。被災者が多かった理由として、正常性バイアス(逃げ遅れの心理:自分は大丈夫と思ってしまう)と多数派同調バイアス(集団心理:周囲と同じ行動をとれば大丈夫と思ってしまう)を挙げ、これらにとらわれないことが必要であると述べたが、正常性バイアスにとらわれない者は10~15%という。生死を分けたものは、危機意識を持って、瞬時に判断し、命を守る行動に移れたかどうかであり、自分の命は自分で守る意識が重要と強調した。小川氏の講演の内容は、運だけではなく、冷静な判断力があったことを示していた。また、自分の言葉で語ることのできる貴重な生き証人という印象を与えた。

最後に、噴火の翌日に山頂で活動を行った唯一の医師である上條剛志氏が、「御嶽噴火災害における医療活動」を報告した。写真から痛ましい現場の惨状がうかがえた。医学的には、被災者は低体温症によると思われる例が少なくなかったこと、岩陰に隠れて亡くなっていた者は反対側の身体に損傷を受けていたことなど、予想外の知見だった。DMATの指示で1時間しか滞在が許されなかったことが残念だったが、生存者に対する診療だけではなく、被災者のトリアージ(重症度、救出順を決める分類タグ付け)や救助者の医学的サポートなど、多方面の医療の需要があったという。災害医療と山岳医療の連携活動は初めてで意義は大きく、今後、山岳の現場で傷病者を救える体制の構築と、医学的検証によって得られた知見が生かされることが必要と強調した。

3人の演者がそれぞれの立場から熱のこもった講演をし、あらためて御嶽山噴火が学ぶことが多い災害であったことを浮き彫りにした。講演後に活発な質疑応答が行われた。小林政志会長が感想を述べ、浜口委員長が閉会の挨拶をした。模様は12月6日の読売新聞に報道された。

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