医療委員会

■ 2016.08.25

第36回日本登山医学会開催報告 上小牧憲寛

第36回日本登山医学会開催報告

第36回登山医学会会長・済生会宇都宮病院・上小牧憲寛

2016年6月4-5日、栃木県総合文化センターに於いて、第36回日本登山医学会を、日本山岳会の後援を得て開催した。栃木県における初めての開催であり、参加者は171名であった。大会のテーマは「次世代の認定山岳医のために」であった。会長が認定山岳医委員長であるため、認定山岳医制度にスポットライトを当てつつ、若い世代への期待をこめて決定したテーマである。

学術集会は会長講演からスタートした。演題は「山と登山者がデータを与えてくれる」で、18年間行ってきた国内外の登山活動に伴い、高所で得たデータと、海外へ登山に行った仲間から得たデータを分析した研究結果を紹介した。同時に、若い研究者も高所へ赴きデータを収集し、登山医学の研究にいそしむことを勧めた発表であった。

シンポジウムの主題は「外からみた認定山岳医制度」とした。多忙のため講習を受講する機会がない臼杵尚志理事、研修の場を提供している国立登山研修所前所長の渡邊雄二先生、登山技術の指導を統括している角谷道弘ガイド等が考えを述べた。

パネルディスカッションの主題は「次世代を担う認定山岳医、認定山岳看護師の一人として」であった。若い認定山岳医5名に、各々の認定山岳医として今後どのような活動をしたいのか、認定山岳制度をどのような方向へと導いていきたいのか語ってもらった。

特別講演1では、青海大学医学部高原医学研究所所長の格日力先生が、高所における肺高血圧症について講演した。

特別講演2では、国立スポーツ科学センター・センター長の川原貴先生が、アスリートの医・科学サポートについて講演を行った。2020年開催予定の東京オリンピックではスポーツクライミングの競技会が行われる予定で、日本山岳協会医科学委員会のメンバーに、本講演を参考にしていただければ幸いである。

一般演題は8つのテーマ(集団登山・山岳事故、循環器・呼吸器、山岳診療所、登山歩行、生理学、高地環境・登山環境、スポーツクライミング、高山病・高所順応)について40演題発表され、活発な質疑応答が交わされた。

学術集会の終了後の5日午後には市民公開講座「竹内洋岳の8000m14座登頂とそれを支えた猪熊隆之」を開催した。プロ登山家の竹内洋岳氏が8000m峰全14座登頂の経験を、株式会社ヤマテン代表取締役の猪熊 隆之氏が天候情報の提供について、約250名の聴衆を相手に語った。竹内氏の、ガッシャーブルムII峰で雪崩埋没事故によって腰椎骨折、血気胸、肋骨骨折を来たしたが、九死に一生を得て8000m峰全14座を登頂した報告には凄まじい説得力があった。猪熊氏の、気象予報士として登頂を果たせるよう天候の情報を発信し安全登山を支え続けた事実が聴衆を魅了した。一般登山者も竹内氏の登山に対する姿勢を参考に思い出に残る登山を行い、気象予報会社からの天候情報を得て安全な登山を行っていただければ幸いである。

(写真1:「パネルディスカッションの様子」)

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