科学委員会
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2002年
講演会「山の気象」
2002年(平成14) 7月4日
山岳会ルーム
講師:城所邦夫
例年行っている気象入門講座として
参加者14名  報告:山688(石橋正美)

 気象講座

 「山の気象」

2002年7月14日 ルームにて
 講師 : 城所邦夫氏

 恒例の科学委員会主催の気象講座が7月4日(木)ルームに於いて、城所邦夫会員を講師に迎えて開催された。


 最初に、 観天望気では全く予想できなかった天候の急変についての体験例を挙げて、それを予知しうる方法はあったのか否かについての質問に答える形で講座が始まった。

 即ち12月であったが、 前日山頂でおこなった観天望気では無風快晴、大気が安定し、翌日の昼過ぎまでは雨が降らないだろうと思われた。そして非常に寒い夜を過ごした翌早朝、気温が急上昇し生暖かさを感じたので、温暖前線が通過したものと考え、もはや雨は降ることはない筈だと思った。ところが朝から全天雲に覆われ、やがて雨が降り出した。この天候の急変は予知できたのか・・ということだった。

 これに対する講師の答えは「天候の急変は予知できた」ということであった。その判断の仕方は、(1)この早朝の時間帯はまだ気温が下がる途中にある筈。気温上昇で温暖前線が通過したと判断したならば、何故通過時に雨が降らなかったかと疑ってみる。そして気温上昇は温暖前線の接近時とは別の原因があるかもしれないと推察する。(2)気温が下降時に急上昇したことは、上層の気圧の谷が接近してきたものと推察され、それによって雨を伴った地上の低気圧が接近してきて雨を降らしたものと考えられる。

 と、このようにして、標高の高い山では、平地よりも上層の気象現象を考えるべきだと説き、地上の天気図と上層の気圧の谷との関係を図をもって説明され、加えて観天望気だけではなかなか判断が難しいので、出来る限り天気予報や天気図を参考にして、総合的に判断するのが望ましいと結論づけられた。

 また夏山につきものの台風についてふたつ。ひとつは、台風が大陸に上陸して熱帯低気圧から温帯低気圧となって勢力が衰えたようでも油断してはいけない。数日後には日本に接近して、山の天気は大荒れとなる。まさに鯛は腐っても鯛、台は弱っても台、要注意とのこと。台風についてもうひとつ。台風は進行方向の右側(危険半円)に最も強い風雨をともなっているので、台風が接近していなくてもこの区域の山の東や南斜面は大雨が降りやすい。

 よく「梅雨明け10日は天気がよい」と言われるが、実際はどうだろうと最近の傾向を調べてみたら、関東・甲信地方の最近10年間の梅雨明け後の連続好天日数は、平均8日となった。最近は気候変動が早めの傾向にあるとはいえ、関東・甲信地方の梅雨明けは平年7月20日となっているため、平年並みに梅雨が明ければ、27日頃まで好天が期待できよう。

 以上が講習の概要であるが、もとより天気図を読みこなせるわけでもなく観天望気にそれほど自信があるわけでもないが、気を入れて聞き入ってみれば私なりに新しい収穫があった。参加者が比較的少なかったのが残念だったが、少ないだけに講習会というより有志の勉強会という雰囲気だった。参加者 14名。

(科学委員会 石橋正美 記)
山688-2002/9月号


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