1、分水嶺とは
分水界、分水線、分水境界などという。雨水が異なる方向に流れる境界のことであり、至る所に分水界は存在するが、特に山岳地帯では山稜が境界になるので分水嶺という。
一つの河川の支流を含めた集水域を、その河川の水系という。分水嶺は水系の境界でもある。
2、分類
次のように定義した(近藤善則)
□大分水嶺・・・異なる海域に注がれる河川の支流、枝沢を含む水系の境界
中央分水嶺(界)とも言う
□中分水嶺・・・同じ海域に注がれる異なる河川の支流、枝沢を含む水系の境界。
例)北、中、南の日本アルプスはいづれも中分水嶺に属する。
□小分水嶺・・・同じ河川の支流、枝沢の境界
例)槍ヶ岳、東鎌尾根は代表的な小分水嶺で、梓川と高瀬川が安曇野で犀川となる
なお、学術的には、主分水界(大分水嶺、中分水嶺)副分水界(小分水嶺)に分けることもある
また分水の形として次のようなものがある(堀淳一)
□谷中分水・・・ひとつづきの平坦な谷の中にある分水界
□水中分水・・・ひとつの沢や川が異なる河川にわかれるところ。
□平行流間分水界・・異なる川が同じ方向に隣り合って平行に流れている間。
3、分水界の相違
大分水嶺の特定には次のようにいくつかの相違が見られる
現在得られる資料は、次の3点が主であり、これによる相違を次に示す
□National Atras of Japan(日本国勢地図帳)のRiver System(水系図)による。(以下「アトラス」と称す)
□全国分水嶺市町村協議会(分水嶺サミット)選定による中央分水嶺(界)(以下「サミット」と称す)
□日本河川水質年鑑(建設省河川局)による水系区分(大分水嶺の特定はない)
−1 北海道
北海道は、日本海、オホーツク海、太平洋の3つの海域の区分から、宗谷岬(日本海/オホーツク海)、知床岬(オホーツク海/太平洋)、松前半島の白神岬(太平洋/日本海)から、それぞれ中央部・大雪山系の三国岳へ至る境界を結ぶ線で一致している。
−2 本州東北部
東北、中部にかけては日本海と太平洋を中央背稜山脈で区分される。北端は津軽半島の竜飛岬、(アトラス案)と下北半島の大間岬、案(サミット案)で異なる。津軽海峡が日本海に属するのか太平洋に属するのかで特定されると思う。私としては下北半島(サミット案)をとりたいところだが、海上保安庁の海区では、津軽海峡は日本海、太平洋のいづれでもないとのことで、もし水位がさがったらどちらが先に陸続きになるかで決めると、竜飛岬に軍配があがる。
−3 本州西部
近畿から中国にかけては日本海と太平洋の間に瀬戸内海が存在し、これによる分岐が伊吹山地の北、三国ヶ岳から中国山地背稜を下関・壇ノ浦に至る線と、伊吹山地を南下し和歌山の北側に至る線に分つ。(サミット案では特定してないが、これには紀の川の北を通るか南を通るかで意見が分かれるところである)
鳴門の渦潮が瀬戸内海と太平洋の海流の混ざり合う現象からできるとすると、紀ノ川の北側- 淡路島となるが、海区区分では、瀬戸内海と太平洋の境は日の崎−蒲生田岬を結ぶラインとなっている。四国への繋がりを考えるとこちらの方がよさそうである。
−4 四国
四国は瀬戸内海と太平洋の区分になるが、ここには疑問が2つある。
東端は(サミット案)(アトラス案)共に吉野川の北側、鳴門から始まっているが、前項の海区を考えると、吉野側の南側となる。地形的には、中央構造線が吉野川にそって走り、北側が讃岐山地、南側が四国山地を形成しているので、どちらとも言えないが、水を分つ山稜として四国山地の方が標高や地理学的にふさわしいように思えるし、日本列島を鳥瞰すると、紀伊水道をはさんですんなり線が引ける。
西端は石鎚山から南下して足摺岬へ至る線(アトラス案)と石鎚山から西の佐田岬半島に至る(サミット案)線に意見が分かれる。こちらは佐田岬案が順当であろう。
−5 九州
九州は4つの海域が関係し、日本海と瀬戸内海の分岐、門司付近から始まり、南へ大隈半島の佐多岬へ至る線に加えて、日本海と東シナ海の区分が英彦山から西へ平戸に至る線となり、瀬戸内海と太平洋の区分が阿蘇の東、祖母山付近から東に佐賀関へ至る線として存在する。サミット案では佐賀関へ至る線は特定していない。
またサミット案では沖縄にも中央分水界として、明記されている
2001/6/20 分水嶺倶楽部HPより転載
さらに興味のある方は分水嶺倶楽部のホームページをごらんください |