平成19年度の活動の一環として、恒例のシンポジウムが2月1日午後5時から東京館第一会議室で開催された。平日の夕刻という時間設定で参加者数が懸念されたが幸い非会員を含め76名の参加があった。現代登山においてますます存在感を増すGPSへの関心の高さが窺われた。
プログラムは箕岡委員長の挨拶、続いて当日わざわざお出で下さった宮下会長にも一言ご挨拶をいただいたあと、芳野赳夫科学委員の基調講演「GPSの活用の現状と可能性」で始まった。
GPSの原理、地上での正確な位置を求めるためにアメリカ国防省が行っている活動など、貴重な講演にうなずく参加者の姿が目立った。
初めに登壇した筑波大附属高教諭・山の展望と地図のフォーラム代表、田代博氏は「カシミールとGPS」という演題で講演された。「カシミールとは<可視見る>からネーミングされた景観描画ソフトです」との話に思わず笑いが漏れる。GPSデータをカシミールに取り込むことでデジカメ写真の撮影地の確定や山座同定に活用するなどの手法が紹介された。
2番目の講演は大蔵喜福科学委員と宮崎紘一常務理事による「高所登山への応用」であった。マナスル、チョモランマ、マッキンリー、チョ・オユー登山において大蔵氏が収集したGPSデータを宮崎氏が地形図上に落とした映像が大画面で映し出された。トラックバック機能、ウェイポイントへのナビなど安全登山に大いに役立つばかりでなく、登山後に収集された諸データを分析すれば次回の山行に有効に活用される、などの指摘がされた。
最後の講演は安井康夫アルパインスキークラブ会員の「国内での使用経験」であった。登山や山スキーでGPSを活用するに当たっての事前準備や山行中での留意事項など、経験に基づいた情報が述べられた。スキーシーズン中でもあり、この情報は実用面できわめて有効なものであった。
休憩後、芳野氏の司会で「GPSの賢い使い方」をテーマに講演者全員でのパネルディスカッションが持たれた。
安全登山のためには大いにGPSを活用すべきだが、それによって地形図が不要になる、ということは決してなく、読図力や地形図上での位置確認をする力を磨く必要性のあることを、異口同音に指摘されたのが印象に残った。参加者からも活発な質問が相次ぎ、予定した時間を超過して盛会のうちに閉幕した。
(記・平野裕也)