2月28日、日本工業大学神田キャンパス(多目的ホール)において、科学委員会主催フォーラム「登山を楽しくする科学」が開催された。200人近い申込者が殺到し、会場が狭いため日本山岳会会員の方は、3月28日再度ルームで行うことにしてそちらにまわっていただいた。それでも委員は別にして100人を超える方々にご参加いただいた。お断りせざるを得なかった方々には申し訳なかったとしか言いようがない。来年からは会場の選択に意を用いる必要があることを痛感させられた。
米倉久邦委員の総合司会によって始まった。講演は6題。@「山で雷にあったら」芳野赳夫委員、A「ハチ、ヒル等の対策」北野忠彦委員、B「腹式呼吸」松浦祥次郎委員、C「快適な衣類」織方郁映委員、D「ストックで楽に登る」箕岡三穂委員、E「山の植物学」石井誠治委員であった。必ずしも全員がその道の専門家というわけではないのだが、よく調べてきて要領よくまとめてくださった。また、会場からも多数の発言があり、討論会という性格にしたいという当初の目的を達することができた。できることであれば、講演抄録を順次「山」に掲載してほしいくらいである。
なかでも「避雷対策」は専門家の意見として、周知できることを期待したい。
「ハチ、ヒル等対策」ではダニが媒介する病気があること、ハチは相手を刺激しないこと、ヒルには塩水スプレーが有効など実際的な知識が披露された。
「腹式呼吸」の演者は、ヒマラヤの5000b級のトレッキングで動脈の酸飽和濃度がほとんど毎日90lを越える効果があったと語った。
「快適な衣類」では、速乾性素材、ゴアテックスの有効性とその理論が示された。
「ストックで楽に登る」では、歩行に関与する筋の話、筋収縮の理論、なぜストックを使うと安全にかつ楽に登れるかという話が提供された。
最後に石井氏がハイマツとカラマツの話をされて会場は盛り上がった。
委員は立ちっぱなしでご苦労であったが、フォーラムは大盛会であった。
(箕岡三穂)