科学委員会主催のフォーラム「登山を楽しくする科学V」が3月5日、品川区の立正大学大崎キャンパスで開かれた。このテーマでのフォーラムは3回目。定員200人の大教室はほぼ満員の大盛況、半分以上が会員以外の一般参加者だった。
講演のトップは、山岳気象アドバイザーの城所邦夫氏の「観天望気」。風や雲の動きから、平地とは異なる山岳気象の判断の仕方をカラー写真とともに分かりやすく話した。
次に管理栄養士の牧野千歳氏が「アクティブライフを支える食生活」として、栄養素がどうエネルギーに変わり蓄えられるかを解説。登山前、行動中と分けてどんな食事が望ましいかを具体的に示した。
3人目は、外科医の箕岡三穂氏が登場、「足が攣る・原因と対策」と題して、足攣りのメカニズムを医学的に解明した後、自分の体験も交えて[掌らない方法]「攣ったらどうするか」を話した。
最後はトムラウシ山遭難事故調査特別委員会座長を務めた節田重節氏による「コンビニ登山の危うさを露呈したトムラウシ遭難」 ツアー会社にすべてお任せのお手軽登山に自分の安全まですべてを委ねていいのか、と指摘した。今回の事故は気象遭難であり、第一義的な責任はツアー会社、ガイドにあるとしながらも、「登山がコンビニエンス(便利)になったことで失ったものは大きい。自然の前では謙虚に」と訴えた。参加者も熱心に聞き入り、安全登山への関心の高さを感じさせた。
いろいろなテーマが取り上げられるフォーラムは回を重ねるごとに一般からの参加者が増えている。過去の参加者をデータペース化し、開催案内を送る努力もあり、リピーターが増えているのも特徴だ。講演した4人はいずれも山岳会会員、日本山岳会の人材の厚さも実感した。
(米倉久邦)