「登山を楽しくする科学V」が3月23日、品川区の立正大学大崎キャンパスで開催された。会場となった大教室は、公募の一般参加者や山岳会員など約200人の聴衆でほぼ満員。4時間にわたる3テーマの講演に熱心に聞き入った。フォ−ラム後のアンケートでも、88%が「大変良かった」「良かった」と回答、「期待外れ」はゼロで予想を超える大好評だった。
最初は、東京農大の中村幸人教授の「日本の高山植生は東アジアの避難場所」氷河期を通して千島列島、アリューシャン列島を経て北海道、本州へと下ってきたが、ひと口に高山植生といっても、地形や地質、気候など環境条件で4タイプに分けられるという。隔離されて1万5千年、特に白馬岳、北岳で多様な高山植物が見られると締めくくった。
続いて、立山カルデラ砂防博物館の福井幸太郎学芸員が登壇。日本で初めて現存する「氷河」と認められた剱岳三ノ窓雪渓、小窓雪渓、立山・御前沢雪渓を踏査し、クレバスに下りて氷を確認、1ヵ月に30センチの「流れ一を特殊カメラに収めるまでのユ−モア大好評だったフォーラムで講演に聞き入る聴衆たっぶりの現場体験に皆、感心していた。
アンケートでも93習が 「興味深い」と回答した。
最後に、茨城県自然博物館動物研究室の山崎晃司主席学芸員が、ツキノワグマの「本当の生態と人との軋蝶の現状と題して講演。ほとんど知られていないツキノワグマの生態を、貴重な画像や映像をふんだんに使って説明。近年の大
量出没の背景には、奥山のエサ不足、里山の消失など複合要因があるという。実際に遭遇しても人身事故の確率は低いとし、大声を出して逃げるなどをせず、落ち着いて行動するように、とアドバイスをしていた。
(米倉久邦)