恒例となった科学委員会主催のフオ−ラム「登山を楽しくする科学(Y)」が3月15日13〜17時に東京の立正大学大崎校舎で行なわれた。会員外を含め約百数十名の出席者は熱心に3つの講演に耳を傾けた。出席者の評価は内容、会場なども含め、すべてについて好評であった。
日本の南極観測には多くの日本山岳会員が参加、その登山技術が大きな役割を担ってきたため、なじみが深いテーマでもあった。
一つ目の講演は、南極に何度も足を運ばれ、第53次の越冬隊長をされた国立極地研究所の石沢賢一氏により、南極探検の話から始まった。1911〜12年のノルウェー(アムンゼン)とイギリス(スコット)による極点到達競争。そこに日本の白瀬隊による南極大陸到達が加わる。日本隊の南極観測は57年に「昭和基地」で開始された。これまでに過去72ヵ年間の環境情報の缶詰である氷床コアが人手され、オゾンホールが発見され、多数の隕石が発見(月・火星起源を含む)されたことなどの成果について解説された。
二つ目の講演は、登山時の疲労対策として使用している方も多いと思われる「サポートタイツ」の効果について、聖マリアンナ医科大学の油井直子氏の講演。その効能について、比較実験結果を用いて説明。中高年、体力の十分でない女性登山者を対象に、疲労を減らすメリットが説明された。タイツの使用はサポーターの使用より優れている、とのこと。
最後は地形学者小疇尚委員による「山の姿を読む−谷川岳と大雪山」の講演。
山頂部が尖った姿の谷川岳と、山頂部が高原状で緩やかな地形の火山起源の大雪山の地形がどのようにしてできたのかの説明。谷川岳は氷河による浸食により鋭い谷地形に、大雪山の山頂部は周氷河作用によって形成されたことが解説された。“なるほど”と納得の説明であった。
終りにあたって、快適な会場を提供いただいた立正大学に篤く御礼申し上げます。
(科学委員会・福岡孝昭)