1月25日、『山の高さ』の著者鈴木弘道氏をルームにお迎えして講演会が行われた。
富士山頂の三角点は1926(大正15)年設置、1962(昭和37)年低下改埋(注・三角点を低い位置に埋め直し、観測すること)されて、3775.63メートルとなっている。
1993年に、初めて頂上まで2級水準測量が行われ、山麓の三角点5点・水準点3点と山頂間のGPS測量 (人工衛星による測量)も行われた。
この測量の結果は国土地理院の公式の値にはならないが、剣ヶ峰の三角点は設置以来旧測量の誤差の範囲以上の変化はないことが分かった。
ビデオは、富士宮浅間神社への参拝からはじまり、御殿場の水準点を基点として山頂までの直接水準測量の模様を撮っている。測量には50日を要した。水準測量で得た値3774.97メートル、GPS測量で得た値3775.66メートルの約70センチの差は、富士山が新しい山で地殻が平衡の状態になっておらず、山頂直下のジオイド面の楕円体面上の高さが周辺より70センチ高いことを意味する。
エベレストのビデオは、スイスのウイルドとケルンを合併したライカのGPSの測量を追って撮っている。隊長はイタリアのジョルジョ・プレッティである。
インド測量局が世界最高峰であるエベレストを発見したときの測量(100マイル以上はなれたインド平原からの片観測)では8840メートルであった。1902年の測量では8882メートル、そして現在、標高は8848メートルが用いられているが、これは1954年にやはりインド測量局が測量したもので、当時の測地学の粋をつくして得られた値であった。
1975年には、中国隊がチベット側から登頂したときに、山頂に測量用標識を建て、天文、重力の測定も行い、ジオイドの推定も慎重にして、8848.13、±0.35メートルを得た。
積雪の深さ92センチメートルを除いており、前記の値よりいっそう精密なものと考えられる。
1992年秋のイタリア隊は、山頂に光反射用のプリズムをつけた標識を建て、GPSも運び上げ、中国およびネパールとの共同作業によって南北両側山麓から距離測定を含む測量を行い、山頂と南北両側でGPSの同時観測を行った。9時30分に頂上に達し、山頂に約2時間滞在した。このときの高さは8846.10メートルで積雪の深さ2.55メートルを除いている。
計算の詳細は未発表である。
1975年に、中国隊が工ベレスト山頂に測量用標識を建てて測量したことも、今度、1992年に中国、ネパール、イタリアの三国が共同作業によって山頂と南北両側からのGPSの同時観測を実施したことも、画期的なことであった。
エベレストを除いて、高山では測量のために登頂することができないのが普通である。登山できない高山の高さの測量の誤差としては、@観測点の高さA光の屈折量の推定B零点である山頂直下のジオイドの推定、がある
高さとは、ジオイドからの高さである。しかし、GPSは地球の中心からの距離に関する測量であり、地心距離が重要になる。ちなみに地球の中心から一番遠い世界一の山はアンデスのチンボラソ、日本では沖の鳥島となる。
鈴木弘道著『山の高さ』は、山の高さを求めるための理論も分かりやすく解説してあるほか、山岳標高一覧に1565峰の高さが整理されています。なお、お求めになる方の便を図って事務局に置いてあります。初版を求められた方のための正誤表も用意しています。ご利用ください。
(武田満子)