夏山シーズンを前にした6月27日、城戸邦夫会員を講師に、科学委員会の気象講座がルームで開催された。
観天望気とはよく聞く言葉だが、専門家でもないわれわれが、刻々と変化する雲からどうやって気象の変化を読み取っていけばいいのか。今夏の山行に少しでも役立てばと思って参加した講座だが、充実した内容に、一日も早く夏雲沸く稜線に立ちたいと思ったのは、参加者全員の一致したところではなかっただろうか。
最初に、雲について、その成立には上昇気流が必須であること、さらに、高度および湿度と気温減率との関係や、凝結高度(空気中の水蒸気が飽和に達し雲の発生する高度)、露天温度(空気中の水蒸気が飽和する温度)などいくつかの専門用語について説明があった。
主題の「前線に伴う雲」では、「寒気と暖気がぶつかると前線が生じ、寒気が北西から暖気を押し下げ、暖気が北東に押し上げられることで寒気、暖気が反時計回りに回って、低気圧が発生する。低気圧の中心では上昇気流が生じ、さらに気圧が下がって低気圧が強まる。低気圧の前面には寒気の上に暖気が乗り上げる形で温暖前線が、後面には暖気の下に寒気が潜りこむ形で寒冷前線が生じる。
温暖前線および寒冷前線それぞれの特徴は、雲の形状、雨量、降水時間、気温の相違といった観点から説明できる。温暖前線は層雲状の雲を伴い、その雨城幅は300キロメートル以上で、変化は少ないが、長時間連続的な降雨をもたらす。
一方、寒冷前線は、積乱雲を中心とした集中的な雨をもたらし、その後寒気が入り込む。ただし、雨域幅は40〜50キロメートル程度しかないため、1〜2時問もすれば雨も上がるということであった。
前線の断面図を用いて、雲分布や雨域にまで説明がおよぶと、参加者からは活発な質問が発せられ、司会者に進行を促される一幕も。
山行の成否を大きく左右するだけに、参加者の関心は高い。
締めくくりは、講師自ら撮りためた雲のスライド映写で、経験を織り交ぜた解説は説得力がある。
特に、白馬山荘を定点とした8月のある一日の朝、立山側に積雲が発生した後の雷雲の消長は迫力が
あった。
参加者1人ひとりが自らの山行を思い起こしながら、改めて観天望気の大切さを確認しあう貴重な機会となった。参加者23名
(黒木 史子)