講演会
「日本の山・世界の山」
2004年11月18日(木)ルームにて
講師 : 小疇 尚氏(明治大学教授) |
11月18日 日本山岳会ルームにおいて「日本の山・世界の山」と題して講演会が開催された。講師は明治大学教授 小疇 尚氏で平成13年3月以来2度目の講演である。
今回の内容は日本の山と海外の山との形や成り立ちについて、スライドとOHPを駆使して一時間強にわたる講演であった。
地球上の陸地の3分の1は山であり、世界の山全部見た人はいないのではないか。
大山脈には3つの成因があり、1つは大陸間のプレートのぶつかり合いで押し上げられ大規模な山脈として誕生し、ヒマラヤなどに代表される。ここはユーラシア大陸に南のインド亜大陸が衝突し、その縁が隆起して生まれた。また7000b以上の山があるのは、ヒマラヤを含むチベット高原の周辺だけである。2つ目は海洋プレートが大陸プレートの下に潜り込んで出来るもので、南北アメリカ大陸の太平洋岸の山脈。3つ目は海洋プレート同士の衝突によるもので、太平洋の西側の弧状列島(島弧)で前面に海溝があり活火山が並んでいる。
島弧では山の規模が比較的小さく、富士山、台湾の玉山、ニュージーランドのマウントクックなどで、いずれも最高峰は4000bに満たず、その成因によって高さに限界があるようだ。
山は誕生とともに姿、形をかえてゆくが、それには1、山脈のでき方 2、山の地質 3、山の浸食作用 4、時間の4つの要因がある。今回は山の姿を決める大きな要因としての山の削られ方を重点に説明された。山をけずる道具として氷河、川、残雪等がある。
日本の山は氷河の作用は少なく、川や残雪によることが多い。 それに対し、外国の山は氷河の作用によるものが多い。氷河による浸食は、山頂直下の谷頭から滑りだした氷河は両岸を削りとり、U字谷を形成し、その圧力により横に広がる傾向がある。氷河が山地から離れ山麓氷河になると、氷河は扇状に広がり、浸食力を失う。 そこにはモレーンができ谷側には細長い氷河湖が出現し、氷河が海に押し出すと先端が浮いて岩盤の浸食作用が衰えて山麓氷河と同様に奥の深いフィヨルドが形成される。一方で氷河の上部では足元が削られるので、急峻な岸壁ができる。さらに氷河上に落下した岩石は巨大なものも含め簡単に運びさり、山は益々痩せ細ってホルン、アレート、バットレスなどの高山地形が形成される。また山全体が氷河に覆われると滑らかな丸みを帯び、山腹や谷のみが急傾斜した山になる。
日本の山は外国の山と比べ起伏が小さく、繋がっていてアクセントに乏しい。 山の削られ方は、日本にも氷河地形の痕跡があるが、川の浸食作用が大きい。川は横への力が小さいためたに谷はV字形になる。さらに日本の山の大きな特徴は残雪による作用が大きい。雪崩に削られた山は、越後山脈の谷川岳、銀山平、御神楽の前岳などに見られるように、谷の斜面が滑り台を並べたような特異な地形になる。これはべた雪の影響が大きく谷の傾斜は並列にほぼ40度で上から下まで同じ傾斜である。
ハイマツ帯は日本のみにあると思われているが、東欧などには日本に似たハイマツ帯があり世界各地の山にハイマツがある。ハイマツを焼き払って牧畜に利用するなど山の上に生活の場があり、トレッキングなども気軽におこなわれている。
(平野 彰)
山717-2005/2