6月24日、7月2日の2回にわたり高層気象の基礎を学んだ。
第一回(6月24日)
講師・清水輝和子氏(日本気象協会)
地上天気図が高度0メートルの気象要素の分布を示すのに対し、高層天気図は一定気圧面上の等圧面の高度の分布を示すもの。建築物、森林など地上の影響を受けないので、前線の検出に都合のよい850ヘクトパスカル(高度約1500メートル)、対流圏の下層を代表し、下層の雲の広がりや降水量を判断できる700ヘクトパスカル(高度約3000メートル、対流圏の真ん中にあり、空気の動きを代表し、台風を押し流す500ヘクトパスカル(高度約5500メートル)ジェット気流の動きを見る300ヘクトパスカル(高度約9000メートル)などがある。
同じ等圧面では、高度が高いとその下の平均気温は高く、高度が低いとその下の平均気温は低い。両地点の気温差が大きければその高度差分大きく、気温差が小さければその高度差が小さい。したがって等圧面での風は前者で強く後者で小さい。
地上天気図の風速はm/secであるが高層天気図ではノットで表わし、その値を半分にするとm/secに換算できる。
偏西風の状況を500ヘクトパスカルの高層天気図で見ると、北極からの寒気とその南の暖気がほぼ平行して流れている東西流型から、波動が起きて寒気と暖気が蛇行する南北流型、さらにその蛇行が大きくなって寒気の流れの中に暖気後取り残されるブロッキング型に移行する。それが繰り返される。ブロッキング型になると異常気象になりやすい。
上層の寒気が南に下がっているところは(同一気圧面の高度が下がっているから)気圧の谷、暖気が北に押し上げているところは気圧の峰となる。気圧の谷の後方では下降気流が生じ空気は収束、地上では空気が発散して高気圧となる。逆に気圧の谷の前面では上昇気流が生じ空気は発散、地上では空気が収束して低気圧となる。高層天気図では高度が増すにつれて低圧部の軸が後方(西側)に傾く。この傾きが大きいほど低気圧が発達する。大まかには日本の西側に気圧の谷があると天気は悪く、東側にあると天気はよい。
この他エルニーニョ現象の時の高層の高圧部、低圧部の配置とその動きや、植村氏をはじめとするいくつかの気象遭難時の高層天気図の説明があったが、時聞がなかったのが残念であった。
第二回(7月2日)
講師・城所邦夫氏(元日本気象協会)
現在、1500キロメートルまでの超高層気象の構造が分かっているが、気象学で扱う範囲は50キロメートルくらいまでで、大気の循環のある対流圏は高緯度地方で8キロメートルくらいから赤道付近の18キロメートルくらいまでである。寒気と暖気の境界、圏界面は季節により違うが、地上で50〜60度の間と20度付近にあり、最上部ではそれぞれ70度付近、30度付近で、ジェット気流が流れている。圏界面の幅は約500キロメートルで低気圧が南北に動ける範囲に相当する。またこの中では空気が下降している。
同じ時の高層天気図と地上天気図を比較すると、高層の気圧の谷の全面に前線ができているのが分かる。
風向を示す矢羽は長い棒が10ノット、短い棒が5ノット、槍先形が50ノットを示し、その向きは等高度線に沿っている。高層天気図は手に入りにくいので、NHKラジオ第二放送の気象通報(9時10分、16時、22時)の最後に放送される富士山の気温と風力、風向を追っていけばおおよその高層の天気の動きを知ることができる。なお、富士山の四季の気温変化と日本各地での代表的な気象現象、富士山における気圧の谷通過時の気象変化と東京の天気経過についても説明があった。
高層気象というなじみの薄いテーマだったためか参加者が少なかったのが残念であったが、高層気象の概念が少しは理解できた。
(北野忠彦)
山651-1999/8