公開セミナー・報告
「最近の山岳通信の発展と応用」
日時 : 平成17年11月15日(土)
場所 : 東京しごとセンター地下講堂 |
11月5日(土)、飯田橋・東京しごとセンター地下講堂で公開セミナーを開催、 65名の参加者があった。
ヒマラヤ遠征隊のような大きな登山隊から、個人の山行にいたるまで、山岳通信は登山の戦術や安全確保、あるいは遭難救助にきわめて重要な役割を占める。
1番目の演題は、本会会員の芳野赳夫氏が「わが国の山岳通信の発展の概要」と題して、山岳通信に使用できる通信機器の進歩発展の歴史を解説した。
もともと山岳通信専用の機器というものは存在せず、軍用の通信機器を転用したのである。大きい、重たいという属性を、登山用に小型、軽量化していった歴史がある。その歴史の中で、真空管から半導体への転換は通信機器を根底から変えてしまうほどのドラスチックな変化であった。現在使われている登山用の通信機器の中で、実質的に一般登山者に有用な通信手段は、携帯電話と衛星携帯電話の二つであると思われる。
2番目の講演は電気通信大学助教授を努める富澤一郎氏が、「GPSの原理と使用法」を専門家の立場から講演した。自分の位置を知るための通信機器として、カーナビ、船舶用などに広く用いられているGPSは、人工衛星とか電波といえば難しく思えるが、実際は測量点を宇宙に持って行っただけで、基本は三角測量であると解説した。
3番目は再度、芳野氏が、「山岳地における携帯電話の利用」というテーマで講演した。携帯電話の普及は、およそ国民一人当たり1台になるという。だが山岳地では基地局が遠い、見通しが悪いといった理由で接続できない地域が多い。 また、バッテリーの消耗も激しいことに注意する必要がある。
最後に本会理事の古野淳氏が「海外登山における衛星携帯電話の使用法と運用手続き」について講演された。極地、高山、未開地などでは衛星携帯電話が実質唯一の通信手段となっている。特別な設備を必要としない衛星携帯サービスには、インマルサット、イリジウム、スラーヤ、エイシス、グローバルスター、Nスターなどがある。いずれも民間のサービスであり、使用料、カバー範囲など違いがある。またサービス停止という危険性もある。通常の携帯のように山岳地に入ったら使用できないという欠点はない。日本国内での使用も始まり、性能は良いが問題は使用コストであろう。
なお、講演内容の資料集は残部があるので、科学委員会まで申し込みいただければ有料で配布します。
(箕岡 三穂)