A班は雲一つない秋空のもと、右手に大東岳(おおあづまがだけ)の橙色に輝いた山頂を見ながら歩き出した。
トップを行く柴崎リーダーが時々立ち止まって木々の名前など説明するが、20名の大部隊では後部の者には聞きとれない。30分ピッチ程度のゆっくりしたペースで小行沢を過ぎ、杉林の中の立石沢に着く。ここからやや急な上りとなり、ブナ、カエデ、ミズナラも現われて、秋山の雰囲気となる。
ひと登りで稜線の見晴台。正面に大きな船形山。宮城支部員はキノコ探しに忙しい。高木かまばらになり、イヌガヤの赤い実が目だち始めた頃1013メートルのピークに飛び出し、ブナもみじに燃える大東岳が大きくそびえて見えた。
こぶし平を過ぎ、ハナコスリの急坂にかかるが、鼻がこすれる程ではない。やがて傾斜は次第にゆるくなって、11時5分、1366メートルの頂上に出た。東に松島湾、西に月山が見え、付近にはイヌツゲ、シャクナゲ、ドウダン、チシマザサ、ゴヨウマツなどが繁っている。
ビールで乾杯の後昼食。食後記念撮影しようとした時に、宮城支部の佐々木郁男氏が登って来たので、全員でカメラに納まり、12時40分出発。
5分ほど下がった所で、蔵王、最上・仙台両神室、小東、南面白の峰々が見渡せた。禰吉ころがしの急斜面を下り、沢に沿って行くと、広いブナ林の中、快適なナメ状の樋ノ沢の出合に着いた。ここからは小乗岳あるいは北石橋への道を右に分けつつ、大行沢の林の中を進む。やがて沢の左岸をへつるようになり、裏磐司展望台に出た。昨日見た表磐司と遅って木が繁り、岩も堅そうだ。続いて雨滝に出、滝の下で雨シブキを浴びる。後はひたすら歩いて15時45分、全員無事山荘に着いた。
(北野忠彦)
B班は大行沢に沿って歩く。さまざまな色合のもみじが青空に映えて誠に美しい。シブギになって落下する雨滝を過ぎ、紅葉に彩られた壮大な裏磐司の岩壁を左に眺めて歩く。岩壁中央にスズメバチの巨大な巣があるというので、交互に双眼鏡で覗く。京淵沢ではナメコ、サワモダシ、ブナカノカ等の収穫があった。9時40分材木沢の出合に善く。ここの徒渉点では、宮城支部員が老会員を背負って渡るという一幕もあった。最奥の北石橋は高さ30メートル、長さ20メートル位の天然の見事な石橋である。早速写真を撮ったり、スケッ千をしたり、上に挙じ登ったりして楽しみ、ここで昼食。
帰路、梯子滝付近では野猿が数十匹現われ、しばらく私どもと前後して行道した。、エサを与えると、野性を揖なうおそれがあるというので、エサを与えることは止めた。磐司山荘には15時20分に着いた。
入浴後、再び宮城支部会員の車で仙台駅に向かった。改めて柴崎講師並びに宮城支部の皆さんに心からお礼を申し上げる次第である。
(参加者)一般 遠藤明男、菅野弘章、賀嶋増造、林桂子、入谷浩右、中村あや、風見清子、宮前淑子、中村恒子、犬塚玲子、須藤節子、野々ロ文子、茂木洋子、北村義男
宮城支部 庄司駒男、星勝堆、佐々木郁男、柴崎徹、千田早苗、佐々木豊喜、遠藤昭冶、高僑二義、佐々木裕二、後藤邦慶、鈴木晃三、
科学研究委員 鳥居亮、中村純二、斎藤桂、梅野淑子、石田要久、大本淑子、森武昭、石井恵美子、奥野道治、北野忠彦 以上35名
(中村純二)
山549 (1991/3月号)