昭和58年7月16日夕刻、霧の深い藤七温泉彩雲荘に、岩手山や茶臼岳などを越えて来た会員が、三々五々集って来た。
17時から、岩手自然保護協会の伊達功講師による岩手地方の動物、鳥、昆虫、植物などの、美しく珍らしいスライド映写が行われ、岩手地方の高山植物は、早池峯を主体とする北上山地群と、八幡平を主体とする奥羽山地群とに分けられ、後者は裏日本の影響をも受けるのが特徴であるなどのお話を伺った。質問には、佐藤岩手支部長のユーモア溢れる解答も加わり、和やかに終了、引続いて懇親会に移る。
山岳会創立の年に生まれた最長老青木昇会員の、数十年来の念願である藤七温泉が、今回の計画に折り込まれていることを知るや、「行かずばなるまい」と参加したとの自己紹介に、拍手が湧き上った。
17日、天気は回復せず、あたり一面は霧、しかし予定通り (もっこ)岳の植物探索行に全員出発する。登山道にはイワシモツケ、オトギリソウ、コケモモ、イワハゼ、キバナノコマノツメ、ネバリノギランなどが咲き、講師は質問責めにされる。山頂にはハクサンシャジンが咲いていた。厚い雲のため、山頂の雄大な展望は見ることができず、残念だった。
帰途大休止して昼食をとり、雪渓の間に咲くミズバショウや、イワカガミ、ヒナザクラの大群落、また温泉元湯の噴気孔などを眺めながら、彩雲荘に戻った。そのほか、各自八幡平山頂や、その周辺の湿原、熔岩が落下して作られた、天然の石組庭園蓬莱境の見学などもできて、有益であった。14時半解散。
その後、七時雨山登山希望者6名は、緑一色に拡がる大草原の中に建つ七時雨山荘まで、岩手支部会長の車で送って頂く。中村委員長夫妻は、早速目の前の田代山に登る。夕映えの稜線を行く二人の影が、山荘から眺められ、大変印象的であった。
明けて十八日、山荘の主、立花幹雄会員の車で、登山口の車走り峠まで行き、七時雨山に登る。この日、天気は一転して快晴となり、暑い夏の陽ざしの中を、博学能弁な70才の三ツ石会員の愉快話に爆笑しつつ登る。道端にはヤマオダマキ、ノイバラ、ホトトギス、ウツボグサなどが咲いていた。
正午一等三角点の頂に到着、岩手山、八幡平など周囲の山々の展望を楽しみながら、昼食をとった。
下山して山荘に帰着後、立花会員の車で、花輪線荒屋新町駅まで送って頂き、今回の探索行の全予定を終了することができた。
終りに今回の山行で種々お世話になった岩手支部の皆様に厚く御礼申し上げる。
(参加者)伊達功(講師)、佐藤敏彦、佐藤紀子、石村実、石村日満子、田鎖寿、佐藤正、和田庄司、関口宏、森一彦、*青木昇、*三ツ石清、子吉格郎、*望月計市、藤原健、土井高夫、麦倉啓、*中村あや、及川昭、宮前淑子、宮前安子、高橋恭子、*中村純二、高遠宏、小西奎二、高橋詢、以上26名
(*印は七時雨山登山参加者)
(望月計市)
山459 (1983/9月号)