■探索山行:
「フォッサマグナ」と「塩の道」を学習する
(平成14年6月8日・9日)
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山行に先立ち、井上先生(国立情報研究所名誉教授)による予備学習会が5月16日、ルームで開かれた.人間の生活に欠かせない塩の移送路は同時に物産の交易路、人と文化の交流路として整備されて来たことを学ぶ。
6月8日、参加者60名が大型バスと乗用車に分乗し新潟県糸魚川市に向う。
フォッサマグナパークに到着、早速小疇先生(明大教授)の説明を受け、糸魚川・静岡構造線の断層露頭と枕状溶岩を観察する。海底にあった堆積地盤が二つのプレートの激突により隆起した際に生じた地質状態を自分の目で見る。
次に「塩の道資料館」を訪ねる。ボッカの中心的役割を果たして来た根知地区の青年団が昭和48年より民具等の収集活動を開始し作り上げたものである。無雪期は牛方が、有雪期はボッカが塩や魚を内陸へ、帰路は生活用品を運んだ様子を思い巡らす。
糸魚川市より長野県小谷村へ向う。途中、姫川に沿って大規模な山の地滑りと崩壊現場を見る.構造線が生まれた時の断層がいたるところにあるため災害多発地である。
宿のサンテ・イン小谷の温泉でリラックスした後、小疇先生のスライドを使っての構造線の勉強会が行われた。
夕食と懇談会は例によって楽しい歓談と笑いで充満。
6月9日、快晴。塩の道の重要な中継地であった大網部落を8時半出発し根知の山口に向う。同行して頂いた「越後いといがわ塩の道を歩く会」の7名の方々から道々親切な説明を受ける。安全を祈っての石仏、道標や供養塔等が随所にある。牛の水飲み穴付近は細い急な道である。よくも重い荷を背にした牛が歩いたものと感心する。また、有雪期のボッカの苦労を思.う。
標高840mの大網峠で少休止、角間池へ。稀少種の「ルリイトトンボ」に会えたのはハッピーであった。
白池で昼食。鋭角に聳える雨飾山をバックに記念写真。ここから整備された道をどんどん下る。一本杉で山口の部落が見え出す。ボッカ達は往きには安全を、帰りには我が家の団欒を思ったことだろう。
山口にて解散。二日間の有意義な山行は無事終了した。
最後に、平成7年の大水害で鉄道も国道も寸断された時、生活物資が塩の道で運ばれたとのこと。複雑なフォッサマグナの地域で、塩の道は先人達の智恵が残したものと改めて感じた次第である。
(科学委員会・向野暢彦)
山687-2002/8月号