■探索山行:
「北方系植物観察と四阿山登山」
(平成17年6月18〜19日)
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これまで、緯度・高度でその土地の気象や動植物の分布等を考えがちであったが、今回の探索山行でその認識を改めた。
6月18日、池袋をバスで出発。菅平に着く頃には梅雨空も晴天となる。芳野委員の案内で、自生地での「ツキヌキソウ」を観察する。「ツキヌキソウ」は数万年前の間氷河期の植物で、日本では菅平だけに残る天然記念物である。「ツキヌキソウ」は葉柄が無く、対生の葉の両側がつながった形なので、茎が葉を突き抜けているように見える。両方の葉が茎を包み込むように合わさって葉の付け根の蕾を寒風から守るように進化したものと考えられる。
現地参加組と合流、総勢23名で筑波大学菅平高原実験センターを訪問。センター長の徳増征二教授より「菅平高原の自然と生物」の講演を受ける。
菅平の緯度は、石川県金沢、茨城県常陸太田とほぼ同じであるが、年間の平均気温は北海道稚内に近い。これは四阿山などの山々に囲まれ、そこの冷気が集まるからである。そのため、本州では最後まで氷河期の気象が残り、北方系の植物が見られるということだ。
次に寒冷湖である「菅平湿原」(天然記念物)で、北方系の植物や地名の由来である菅の群生の中を散策した。
続いて、電気通信大学・菅平宇宙電波観測所へ向かう。芳野委員が昭和43年に創設し、センター長として研究を続けてきた所である。冨澤一郎助教授より、施設の案内と観測テーマの説明を受ける。非対称円筒形のパラポラアンテナは中心周波数327MHzの電波受信用で太陽風を観測し太陽黒点の規模と位置などの関数の変化を調査していて、「太陽風加速の謎」の解明は将来の課題だそうだ。他のアンテナでは人工衛星の追尾を手動で行う学生訓練用、自動追尾型の観測用などがあり、屋内には機器の遠隔操作や受信された電波の監視、解析装置などが所狭しと並びそれぞれの説明をして頂いた。
さらに現在の研究内容としては1.地殻変動に伴う電磁放射の観測 これは地震の前兆と思われる電磁放射の観測 2.電磁圏全電子数の観測 これはGPSの衛星を利用して電磁圏の全電子数を連続観測し磁気嵐の変動特性を解明する等 3.太陽風の観測などが行われているとのこと等々。日頃耳にしない話に多少頭が混乱する。
宿泊は付属の宿泊棟で、夕食にアルコールも入り楽しい歓談となった。
6月19日晴れ、8時過ぎに牧場横の登山口より、4つのグループに分かれて四阿山を目指す。今の季節が一番と言われるように。満開のレンゲツツジが道の左右を埋め尽くす。高度を上げるにつれ、高山植物のナルコユリ、アズマギクの可憐な花が姿を見せる。
3時間ほどで山頂に到着した。残念ながらガスで眺望は聞かない。朝食後、記念写真を撮る。下山は菅平盆地を見下ろし気持ち良い山歩きとなった。バスに乗ったところで激しいにわか雨となる。ラッキーとはこのことか・・・・・。前泊の施設で汗を流し、のんびりと帰京。今回お世話になった筑波大学・電気通信大学各関係者の方々に改めて感謝申し上げる次第である。
(大友裕美)