科学委員会
KAGAKU                       マッキンリーの気象観測      


科学委員会TOP

マッキンリー気象観測登山隊

84年の同時期に行方不明となった植村直己氏が最後に確認された地点にほど近いデナリ・パス直下であった。主因は烈風による気象遭難が有力視された。

90年からマッキンリーの5715m地点に定点観測機器を設置。11年続けて隊を派遣して10年間に及ぶデータを集め、そして計画どおり観測を終了し2000年6月に一区切りをつけた。

各年度 気象観測データ概要
1990年度 有効測定期間:1990/6/15〜1991/6/26
最低気温(1991/2/3AM7:00) −58.2℃
最高風速(1990/8/27AM9:05) 63m/s(センサー崩壊11/22)
1991年度 センサー支持架大台が倒壊し再建不可。データ回収のみ設置なし
.
1992年度 有効測定期間:1992/6/22〜1993/2/8 (異常電流発生でロガー停止)
最低気温(1993/1/21、1/22) −51.0℃
最高風速(1992/9/12 PM) 43m/s(センサー崩壊9/中旬)
1993年度 有効測定期間:1993/6/17〜1994/6/25
最低気温(1994/3/4、AM10:15) −52.7℃
最高風速(1993/11/18 AM2:45) 41.47m/s(センサー崩壊11/下旬)
1994年度 有効測定期間:1994/6/25〜1995/6/19
最低気温(1995/3/15 AM0:00) −52.2℃
最高風速(1995/2/16 AM0:30) 63.89m/s
新規システム
最低気温 同上
最高風速(94/7/22 AM3:10) 82.5m/s(センサー崩壊9/6 66.7M/Sを記録後
1995年度 有効測定期間:1995/6/19〜1996/6/23
最低気温(1995/12/2、PM1:30) −59.4℃
最高風速(1996/1/12 AM4:30) 57.7m/s
1996年度 有効測定期間:1996/6/23〜1996/10/下
最低気温(1996/10/18、AM10:45) −45.7℃
最高風速(1996/10/28 PM1:00) 47.6m/s
1997年度 有効測定期間:1997/6/24〜1997/10/中
最低気温(1997/10/7 AM1:30) −43.4℃
最高風速(1996/10/10 AM10:45) 36.8m/s
1998年度 有効測定期間:1998/6/13〜1999/6/23
最低気温(1999/2/3 PM3:30) −57.4℃
最高風速(1998/7/3 AM6:00) 20.56m/s(センサー異常で7/下旬停止
1999年度 有効測定期間:1999/6/23〜1999/
最低気温(2000/*/ ) 分析中
最高風速(1999/*) 分析中
2000年6月21日 最終回収
注)*時間は日本時間
*風速は瞬時値の記録で、最大値を保持した物ではありません
*異常電流発生でロガー停止、CPU誤動作による動作停止を防ぐためワッチドックタイマーを付けていたが、落雷や静電気等原因不明の異常電流が流れ記録停止。1997以降はタイマーを外し誤動作をおこりにくくしたが、相当以上の電流により停止してしまった。

大蔵喜福著「マッキンリー気象観測機器設置登山隊11年の記録」2000/7/30(日本山岳会科学委員会)より

現地での評価

 4年目にこのプロジェクトは現地アラスカで話題になり、アラスカ大学地球物理研究所長の赤祖父俊一博士が注目してくれ、デナリ国立公園局とフェアバンクスとアンカレッジの気象台、そして私たちのプロジェクトで四者会談を持った。後は、地元のしかるべき機関(大学の研究機関か気象観測所など)に引き継いで貰いたいと考えていたので、以後に期待を持った。会談の内容は地球規模で活用できる大気サンプリング等まで広げ、汚染や温暖化などの実態まで観測できればすばらしい活動につながるだろうと、協力体制をつくることになった。また、このような高所山岳定点観測が広がっていけば、地球規模での価値の高いデータになるはずと話し合った。地元デナリ国立公園局レンジャーステーションでは、登山センターにリアルタイムにディスプレーできる器機の開発と設置をしたいとの希望もでた。

 残念ながらすぐには実現にいたらなかったが、99年にアラスカ大学に発足したIARC(国際北極圏研究センター・初代所長赤祖父博士)にこのプロジェクトを引き継いで貰えることになった。資金援助をNSS(米国科学協会)に依頼するため、新しい計画案をIARCから提出してもらって返事を待っているところだ。機器製作や実験など準備に1〜2年費やす必要もあり、実際はじまるのは少し先になる可能性が高い。

 同センターの計画案としては、高所極寒用のセンサーの開発製作と新たにデータを送信する無線装置(衛星使用)をつけたい意向。フェアバンクスにある大学と麓の町タルキートナのレンジャーステーションにリアルタイムで気象情報を提供し、航空関係や地球規模の環境データの分析などの研究に活用していきたいとしている。

 私自身はこの気象観測を身近な問題として登るためのタクティクスと遭難回避のための気象予測に役立つ簡易な方法を導きたいと思っている。なおデナリ国立公園局へは毎年のレポートを送付し大変喜ばれている。


UP

copyright(c) JAC−KAGAKU ( y-kon)