会報4月号で高田眞哉氏から速報していただいたように、筆者らと木村茂雄氏(非会員)の3名で構成する神奈川工科大学自然エネルギー利用研究グループは、このたび日本学術振興会が制定する平成6年度秩父宮記念学術賞を受賞した
この賞は、本会名誉会員であった故秩父宮殿下がわが国の学術振興のために多大の尽力をされたご事績を記念して制定された賞である。そして、殿下がとくに山に関して経験豊かで造詣深かったことにかんがみ、「山」に関係
した科学で顕著な研究業績をあげた個人またはグループを対象として、毎年1件授与されている。
我々の研究グループは、昭和57年から北アルプス穂高岳山荘での風力発電の実験を皮切りに、数多くの山小屋で風力・太陽光・超ミニ水力といった自然エネルギー利用発電の実用化試験や技術支援・助言などを行って、多くの成果を上げてきている。
現在、自然エネルギーを利用した発電を行っている山小屋は、国内で112か所となっており、荷揚げ量の軽減ばかりでなく、排気ガスや排出物を出さない、環境に優しい山小屋の実現に寄与している。また、このような成果を生かして、ヒマラヤなどの海外登山隊や南極観測拠点での実用化にもいろいろな形で貢献してきた。今回の受賞は、これらの業績を評価していただいたもので、本会のほかに、日本山岳協会、日本太陽エネルギー学会、日本風力エネルギー協会の4学会・協会から推薦していただいた。
3月15日の授賞式については、4月号で紹介ずみなので省略する。なお、式典終了後、祝賀パーティーが催された。会場では、業績に関係した展示品(太陽電池モジュール、超ミニ水力発電装置、南極で稼働した風力発電装置のプロペラ)や多数の写真を展示し、妃殿下や文部政務次官など出席者へ筆者らが説明するとともに多くの質問にお答えした。
また、明くる16日には、受賞者3名と本会中村副会長や関係団体の代表が秩父宮邸での午餐会に招かれた。本研究に関する話から始まって、登山一般、秩父宮殿下の想い出、最近の妃殿下のご様子などいろいろなことが話題になり、和やかな雰囲気の中で楽しい一時を過ごすことができた。
筆者らは、この受賞を励みに、これからも本研究テーマを通して、環境に優しい自然エネルギーの実用化にいっそう努力していきたいと思っています。
最後に、お世話になりました本会の関係各位に深甚な謝意を表します。