上高地山岳研究所は昭和48年(1978年)10月に新築され、以来18年年間〔さんけん〕の愛称で会員やその関係者に親しまれて来ましたが、温気などによる老朽化で数年前から改築の話が出ておりました。
平成2年度の通常総会において改築案を提案して承認され、ここに「上高地山岳研究所改築委員会」が組織されて設計、資金などの本格的活動を開始したのでした。
新しい山研の設計図や完成図は今後の会報紙上で発表する予定ですが、今回は改築にあたり計画しております幾つかの案のなかから「自然エネルギー利用計画(案)」についてお話します
自然環境保全が世界的規模で叫ばれておりますが、エネルギー利用も当然大きな問題として浮かび上がってくるのです。そこでクリーンなエネルギーとして最近注目を集めているのが各山岳地の山小屋などで検討されている風力、太陽光、水力の自然エネルギーを利用した発電なのです。
山研改築を機会に日本山岳会としてもこの自然エネルギーを利用した発電の可能性を検討し始めたのでした。
立地条件から風力と大陽光は期待出来ませんので山研の裏手に流れる善六沢の水流を利用しようとのことで、昨年(平成3年)6月に科学研究委員会の鳥居亮委員(神奈川工科大名誉教授)と自然力発電プロジェクトの千矢博道氏、それに山研改築委員らが現地で調査を行った結果、その水量は発電に充分見合うほどのものであるとの報告でありました。
同年10月末の山研閉所の折には水力タービン製作メーカーである大分県の林エンジニアリング蒲ム義彰社長をまじえて再び現地を調査し、その発電の可能性に益々自信を深め、自然エネルギー利用に向けて科学研究委員会の協力のもとに本格的に計画を進めております。
善六沢に小水力発電装置を設置して1〜1.5kwの電力の案で検討し、その用途は改築後の山研に作られる「山岳資料館(仮称)の照明とし、余剰の電力は湯を沸かすことに使用することも可能なのです。
日本各地にある山小屋の中には小水力利用の発電可能な適地もかなりあるので、この装置をクリーンエネルギー利用の実験、およびそのお手本としてみたくも考えております。
環境庁、地元営林署には機会ある毎に発電装置設置の主旨を説明しておりその実現に向けて近く計画書を提出する予定でおります。
改築後の山研は益々面白くなります。
(文責・坂本正智)