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山研ミニ水力発電 今年度の成果

常時運転可能に

ミニ水力発電実行委員会 森 武昭

 「環境に優しいミニ水力発電を山岳環境保全に役立てよう!」とのキャッチフレーズで平成12年5月から稼働を始めた上高地山岳研究所のミニ水力発電の実用化研究に関しては、その目的と意義、許認可等の試運転までの経緯、完工式については、すでに会報647号、657号、662号で報告してきた。本格稼働1年目の今年度の目標は、安定した電力を得るためのキーポイントとなる善六沢から収水する(山研の裏手約500メートルのところ)際の砂と落ち葉・木屑などのゴミ対策を施すことであった。以下にその検討結果を報告する。

 ミニ水力発電の場合、その取水場所によってゴミの量や内容が違ってくる。善六沢は、砂地である上に上流に落葉樹が多いため、これらの対策は筆者が今までに手掛けてきたケースに比べて難しく、何らかの有効な手法を編み出す必要があった。

 そこで、当初(試運転から5月の完工式過ぎまで)は、十分な水量を碓保することを最優先にして様子を見ることにし、写真のような長さ約1メートルの3インチ(75ミリ)の塩ビパイプ2本に直径約10ミリの穴を多数空けただけの極めてシンプルな収水装置(対策O)で試してみた。その結果、予想をはるかに上回る多量の砂がサージタンクに貯まるとともに木屑などで取水口の穴が直ぐに詰まってしまい、3時間程度で発電量が低下してしまうことが明らかとなった。そして、この取水口に網を巻いたが、ほとんど効果がなかった。3インチパイプは、水を吸い込む力が非常に強く水量を確保する上では優れているが、砂やゴミも多量に吸い込んでしまうという欠点が確認された。

 この欠点を改善するために、6月の第1週末のウェストン祭で上高地入りしたのを機に、取水□からサージタンクまでの約30メートルに1.5インチパイプ3本を布設して様子をみたところ、砂やゴミがかなり軽減できることが碓認できた。そこで、発電システムを維持していくために必要な水量を計算し、1.5インチパイプ6本を布設して(対策1)運転したところ、週2回程度管理人が取水口の掃除に行けばよいことが明らかとなった。しかし、これでは管理人の負担が大きく、また秋からの落ち葉シーズンには対応できないことは目に見えていた。

 そこで、8月最終週に所用で上高地に入った際に、管理人といろいろな意見交換を行い、写真のような手法を検討することにした。即ち、多数の穴を空けて取水口となっている長さ約1メートルの1.5インチ塩ビパイプとサージタンクまでをつなぐ1.5インチポリパイプとを2インチパイプで被せてその中で接続し、さらにこの上下をバーベキュー用の網で覆い、隙間は細い金網で包むようにした(対策2)。このようにすると、取水口は砂地から浮いているため砂はほとんど入らなくなる。また、落ち葉などのゴミは、上部の網に一部付着してしまうが、下部からは取水することができるため、管理人が週一回掃除に行けば十分機能することが明らかとなった。

 この二段階の対策による発電機の運転時間を調べたところ、図のように、対策ごとにかなりの割合で増加していることが定量的に示された。
管理人が休暇または所用で留守している時と雨(特に短時間に大雨が降ると濁ってしまう)で取水に心配のある時は運転を休止しているが、それ以外は夜間を含めてほぼ常時運転可能となっており、安定した発電量を確保できるようになった。昨年度までも、飲料水の確保のため管理人が週1、2回水場の保守に行っていたことを考えると、そう大きな負担増になっていないし、飲料水用パイプも対策2の手法を取り入れたところ、混入する砂の量が大幅に減るというありがたい結果も得られている。

 以上のように、二段階の対策を施したことにより、今年度の当初の目的はほぼ達成できた。来年度は、山小屋などで使用することを前提として、発電機の制御方式と発生した電力を環境保全に役をてるような負荷の使い方の二点について技術的な検討を行っていく予定である。

 本格稼働した初年度に、上記のような成果が得られたのは、現場を預かる立場からいろいろなアイデアを出し、また実践的に試みてくれた管理人(木村太郎・弥生の二人)の全面的な協力に負うところ大であったことを記して謝意を表したい。

 ところで、平成10年12月の理事会で承認されたミニ水力発電実行委員会(委員長・小倉副会長)は、設計・許認可手続き・設置工事・完工式・本格稼働を完了し、当初の目的を果たしたので、今年度末で解散することになった。そして、平成13年度からは、山研運営委員会内にミニ水力発電運営委員会(委員長・小倉副会長)を設置して、実験研究を継続し、今後の課題に取り組んでいくことになった。また、本プロジェクトは、神奈川工科大学との共同研究として実施してきており、平成13年度以降もさらに3年問継続する契約を締結したので、今後も技術面での支援を受けることになった。以上の方針は、平成13年1月の理事会で承認された。

山670(2001/3月号)


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