山遊会設立10周年記念講演会

実施日 2012年9月29日(土) pm2:00〜4:30
会場 四谷・主婦会館プラザエフ
講演内容 星 一男会員 インドヒマラヤ中高年登山「チェマ峰初登頂」
渡辺康之氏  ブータンシボリアゲハとブータンの自然
講師プロフィール 星 一男氏
1950年12月1日 誕生
1996年 日本山岳会入会
東海支部在籍
2000年〜2005年  東海支部総務委員長(事務局長)
現在       支部報編集委員
         支部刊行物編纂委員会
         OMCウォール運営委員会 各委員長
         他登山教室などの委員兼務
海外登山歴    2011年 チェマ峰(インド)初登攀
           2012年 同地区でトレッキングと偵察活動を行う

渡辺康之氏
1951年9月29日   誕生
1970年4月      北海道大学入学 同6月に昆虫研究会の創立に参画
1976年3月      同大学工学部修士課程修了
1989年〜1997年  中華人民共和国の奥地などで撮影
1993年7〜8月    長野県山岳協会主催のアリューシャン列島登山・自然調査隊に参加
1996年〜1997年  南米コロンビアで撮影
1998年〜2003年  ミャンマー・カチン州とチン州で撮影
2003年2〜3月    JODC(海外貿易開発協会)からミャンマー・ヤンゴンに派遣される
2004年〜2009年  ペルーのアマゾン川流域で撮影
2011年8月      日本蝶類学会の隊員としてブータンを訪れ、ブータンシボリアゲハ
              の撮影に成功する
参加者 会員22名 非会員21名  計43名
記録 山崎浩子

  9月29日四谷の主婦会館プラザエフにて第1部は山遊会会員星一男氏によるインドヒマラヤ・ラホール・スピティ山域の未踏峰登頂の軌跡、第2部は蝶の研究家渡辺康之氏による昨年採集に成功したブータンシボリアゲハについての講演を行った。 当日は山遊会会員を含め40名を超える方の参加を頂き2時間を超える講演を熱心に聞き入った。


星 一男氏


渡辺康之氏

 第1部は東海支部50周年記念事業の一つとして行われた第11次インド・ヒマラヤ学術登山隊が昨年チェマ峰(6105m)に初登頂したことについて星一男氏からお話しいただいた。
 2011年東海支部総会時に壮行会をしていただき、その時初めて金一封を頂いた。
当地は国境に近くインド測量局の地図が手に入らないので、閲覧させてもらった折に内緒で写真を撮り、ロシアンマップも参考にした。
現地へ行ってのルート工作には、バタルから頂上までの映像をグーグルで探し、偵察と合わせて登頂ルートを決めた。 チャンドラ・タールで高度順化を行っている時に日本山岳会名誉会員ハリッシュ・カパディア氏に偶然会い貴重な情報をいただいた。
 7月30日、キャラバンが始まる。C2まで馬が荷揚げをしてくれ助かった。8月7日にC3に入り、8日アタックの予定であったが、雪が降り始めたため9日早朝にアタックを開始。くるぶしくらいの積雪で、硬い氷河を歩くより逆に歩きやすくなった。11時25分全員が登頂する。
双耳峰になっているのでもう一方も登る事も考えたがヒドン・クレバス、シュルンド等が有り標高からいってもピークに間違いが無い ので登ったと云う事で認めてもらった。
 BCに戻り日本酒で乾杯する。コックがケーキを作ってくれお祝をしてくれた。
 今回の遠征にもエージェントを使わなかったのでビザを取るため長い時間と労力を要したが、お蔭で多くの人とのつながりが出来こ れを次の機会に生かしていきたい。

 第2部は日本蝶類学会会員の渡辺康之氏に、昨年幻の蝶と言われるブータンシボリアゲハの再発見と採集の様子をうかがった。
渡辺さんは小学3年の時、田淵行男著「高山蝶」を見て自分も採集したいと思い、それ以来の夢であった北海道大学に入学、同時に昆虫研究会の創立に参画。大学卒業後は中国、南米、インド等海外の蝶を探し求め写真を撮り歩いた。1985年に写真集「日本の高山蝶』(序文は田淵行男氏)を出版。
 登山については日本山岳会会員でもある保田直紀氏に教えてもらった。東チベットで日本人が初めて入ったところを中村保氏に話したら、それがきっかけで横断山脈研究会に入ることになった。ナムチャバルワ登頂のテレビを見て自分も行くべきと思いC2まで一人で行き、2週間滞在し蝶の撮影をした。
 シボリアゲハはシボリアゲハ、シナシボリアゲハ、ウンナンシボリアゲハ、ブータンシボリアゲハの4種、ウンナンシボリアゲハは1981年北海道山岳連盟のミニヤコンカ登山時に再発見、採集されていたがブータンシボリアゲハは1933年以降確認されていなかった。唯一ある標本はロンドン大英博物館に保存されている。
研究者の間では何時かの機運を思い描いていたところにNHKが絡んだのが功を奏してチャンスが到来した。日本からは6人の専門家とNHKスタッフがブータン政府の関係者とともに採集に東ブータンへ赴いた。
シボリアゲハの採集地はオグロヅルの越冬地になっていて自然を保護している。集落の人口は50人くらいで周りは日本の里山に似ている。そこの中の民家を1週間借りて調査した。8月12日最初の1頭がそして滞在中全部で5頭を採集する事が出来た。採卵する様子も確認する事が出来た。卵は木の葉の裏に沢山産みつけられるが天敵の蜂がすぐに卵を産みつけ寄生する。卵の80%近くが寄生され、それらは孵化しないので個体数の少ない原因にもなっている。
 捕獲した5頭の標本はブータンに引き渡したが、その後ブータン国王が来日された折に2頭日本に寄贈された。そしてブータンの国蝶にもなった。

Page Top



この改行は必要→