3月11日(天気:晴れ)
新宿発8時00分発(あずさ5号・4号車自由席)は空席が多く、辻橋さん、江村さん、田中の3人でボックス席を占領した。
前日の寒い雨の天気と異なり今日は暖かく快晴の好天に恵まれ、沿線の諸所に白い梅の花が咲いているのが見える。
八王子駅で永田さん、山本さんが合流(松田さんは所用により後の電車に乗車の予定)、小仏トンネルを過ぎ山梨県に入ると天候は一変し、低い雲に周囲の山々は覆われ、勝沼周辺のブドウ畑も寒々と冬枯れの姿だった。
小淵沢を過ぎ長野県に入ると天候は急激に回復し、再び晴天になった。茅野から渋の湯へのバスは登山客で満席だ。
車窓には残雪の八ヶ岳から北八つの天狗岳、今回山行の縞枯山、蓼科山更に左には霧が峰が雪の衣を覆っているのが見られる。
渋の湯のバス停の広場は雪がなくアスファルトが露出している。登山の仕度もスパッツ着装だけの軽装で出発。
辻橋さんが橋の袂で登山者カードを届ける。吊橋を渡ると雪山になり、急斜面の途中で黒百合ヒュッテへの登山道を右に分岐する。
バスの乗客の殆どの登山者が黒百合ヒュッテへ向い、小生達他2、3のパーティーだけが高見石小屋方面へ向う。
川に沿う北面の山腹の雪道を過ぎ、無数の巨石が雪に覆われた賽の河原で昼食。気圧の谷の接近のためか上空では北風に追われた雲が飛び去っていくが、まだ地上には到達せず無風で暖かい。
明日の天候が気がかりだ。
石仏の地蔵を過ぎ、左へ緩い登りを過ぎる。薄れ日の差し込むシラビソの原生林の雪道を辿ると高見石小屋に到着する。
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高見石より白駒池を望む
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高見石にて
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辻橋さんが宿泊の手続きを済ませる。まだ宴会を始めるには早いため周囲を散策することになる。
巨岩が堆積した裏山は周囲の風景を一望できる。寒々と冬枯れした山々に囲まれた風景の中に白駒池だけが雪で真っ白に覆われている。
ラッセルされた雪道を下ると全面氷結し雪に覆われた湖面に出る。湖面は深雪にはスキーとスノーシューの踏み跡が対岸に伸びている。
全員でこの深雪に踏み入り「誰が一番真っ直ぐに歩けるか」ミステリーサークルまがいの靴の踏み跡を残す遊びも出来た。
山小屋の2階にはストーブと2つの炬燵があり、その1つを私達で使用する。
暖かい炬燵の上には各自持参の酒、ウイスキーの他、永田さんがワイン(スペイン産XX、小生には名称不明XX、MURUA)を披露するが、松田さんが見えてからと噂話の最中に本人が到着。
ようやくこのワインで乾杯となった。
成熟された葡萄と濃縮された酸味が口腔に広がる。誰ともなく「美味い」の声が漏れる。辻橋さんがクラッカーにブルーチーズを乗せた最高のツマミを作ってくれる。
夕食後再びこの炬燵で宴会になるが、永田さんは仕事で前夜は不眠とのことで早くも鼾をかき始める。
二次会はそこそこに皆床に横になる。間もなく小屋番の若者が「食堂に酒の用意が出来ているので飲みに来て下さい」の声に誘われ、意地汚い小生は茶碗酒をご馳走になり、小屋番の若者と山談義に花を咲かせ最高の気分で床に入った。
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誰もいない白駒池
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白駒池氷上を歩く田中さん
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3月12日(日)天気:吹雪
夜中から強風に見舞われ小屋のあちこちから軋みが聞こえる。
朝食はパン、苦手の私はスープで胃の中に流し込む。
低気圧の接近か、外は強風に粉雪が舞っている。前日と異なり今日は完全装備である。
シラビソの原生林の登山道には5〜6センチの新雪が積もり一人の靴跡が先行している。
短い登りで丸山に着くが、樹木の生えていない山頂は吹雪で何も見えず。
休むこともなく緩く長い下りが続き、ようやく体が暖まる頃吹き抜けの平坦地に建つ三角屋根の麦草ヒュッテに着く。
ヒュッテのストーブは暖かくスキーやスノーシューを楽しむ客が出発の準備をしている。
前日の高見石小屋で宿泊料金と引き換えに受領した「飲料100円割引券」でホットなコーヒーやミルクを注文する。(この割引券は北八つの山小屋で利用が可)
ヒュッテの外は以前に増して吹雪が荒れている。
雪原から原生林の緩い登りで大石峠に着く。先導者の踏み跡は左の出会いの辻方面に消えており、ここから先は新雪を踏んでの登行となる。
中小場を過ぎ、シラビソの原生林に阻まれて強風こそ吹かないが、今日最大の急登が続く。
体調を崩した辻橋さんが遅れ出す。咳き込みが激しく顔色も悪い。彼女のザックを小生が背負う。
諸氏の協力により休み休みであるが茶臼山に到着、吹雪を避けて山頂直下の雪溜まりで休憩する。
出発時にちょっとしたパニックが発生した。トレースが吹雪でかき消され、更に吹き溜まりとなり見失ってしまった。
永田さんと二手に分かれルートを探す。太股まで没する深雪に難渋するが稜線沿いにルートを発見することが出来た。
(以後2度ほど同様のルーと探しを行った。)
縞枯山までの道標は全て雪面以下で、木々に取り付けた赤布だけが頼りであった。
縞枯山から右下に急勾配を一直線に下りる。足下から飛び出す雪がダルマになって転がり落ちる長い下りだ。
樹林帯を抜け雪原の雨池峠の道標を左に猛吹雪に逆らい進む。サングラスには雪が貼りつき、吹雪で顔が痛い。
縞枯山荘を過ぎ赤い旗のポールとザイルに導かれロープウェイ上部駅に到着する。
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白駒池氷上にて
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雪の舞う麦草ヒュッテ前にて
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幸いにロープウェイは山の谷間を運行のため強風を避けて運行していた。
「ロープウェイの横の登山道を下ろう」の声もあったが、多くのボーダーがこの登山道を滑り降りており危険を伴うことから、大金の900円を支払いロープウェイを利用した。
発着所で着替えを行い、食堂で吹雪の悪天にも関わらず予定通り無事に下山したことの乾杯の酒がまた一段と美味しかった。
帰りのバスを待つ停留所では大粒の雪が本降りであったが、途中から雨に変わっていた。
茅野駅から特急あずさに乗る。自由席の空席は前後に分散するが全員座ることが出来た。
八王子駅で永田さん、山本さんが下車。列車が発車するまで見送ってくれた。残りの4名も無事に新宿に到着、解散した。
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