11月18日(土
東京からの参加者7名は、朝8時6分東京発の新幹線ひかりの車中で全員が一緒になった。9時8分静岡に着くと駅前の駐車場に青野さんが待っていた。青野さん運転の8人用の車に乗り込み、安倍川に沿う国道29号を北上。1000mを越す急峻な山を右手に見上げながら走る。途中、数ヶ所で安倍川にかかる細い吊橋を見た。安倍川はかなり急流のようである。
青空に雲が少し出ている。進むにつれて両側から迫ってくる山の斜面は険しくて、随分山奥にやってきたなと思う頃、梅が島(静岡市葵区)に着いた。見上げると山の頂上付近はうっすらと白いものに覆われて、新雪のようにも見える。
車はさらに北上して梅ヶ島温泉(標高920m、以下標高は2.5万図で読んだ値)を過ぎ、林道を登って山の中腹にある空地(標高1300m)に車を置き、11時半に歩き始めた。すぐ急な山道となった。落葉樹の明るい林の中を、落葉を踏みしめながら進む。細い幹に皮を剥いだような跡があるのはシカの食痕である。「シカはリョウブをよく食べてますね」と石岡さん。
11時55分、安倍峠分岐(1,400m)。12時10分、展望のよい尾根に出た。ここを富士見台(1,620m)といい、南に富士山、北に八紘嶺から七面山に続く山なみが望まれる。「南アルプスカモシカ保護地域」の看板が立っていて、富士山を見ながら少時休憩。
12時40分、登るにつれてガスが立ち込めてきて、辺りは次第に薄暗くなり、それまで樹間から見えていた周りの山々が見えなくなった。午後1時、樹氷が美しい。殆ど無風であるが、時に弱い風に吹かれて氷のかけらが舞い落ちてくる。山麓から見上げて雪が降ったかのように見えた白いものは樹氷だったようである。
1時半、八紘嶺山頂(1,917m)。ガスのために全く展望がきかない。そして頗る寒い。ひとしきり防寒服の話題がはずみ、日本山岳会のダウンジャケットが使ってみてなかなかいいという声があった。山頂では寒いので少し下ってから食べようということになり、少し下った所で昼食休憩(1時45分)。「シカはウリハダカエデが好きなんですよね」と石岡さん。彼が立っているそばの細い幹に剥いだばかりのような真新しいシカの食痕があった。「いま、そこで剥がしていたんじゃないの」と冗談がとぶ。2時10分、下山開始。下るにつれて気温が上ってくるのが判る。頂上では毛の手袋でも寒かったのに、やがて軍手に替えたくなり、登山口近くではそれでも暑くて素手になった。3時半、車を置いた場所に戻る。帰途「黄金の湯」で汗を流し、5時、青野さんの山荘(870m)に着いた。
夕食は鶏鍋。今日はボージョレー・ヌーボーの解禁日ということで、用意されたワインで乾杯。ワインを飲みつけていない筆者の印象では、1本目はあっさりしてジュースの様。2本目は少し渋い味。3本目はまことに芳醇な風味の酒であった。鶏鍋を平らげると次は鴨鍋。大吟醸があけられたり、ひれ酒がまわってきたり、台所で何かやっていた中澤さんがいろいろ変ったものを出してくれたりしたけれど、何が出たかと問われても何も記憶に残っていない。美味追求の議論はきりがなく、やがて疲れて各自持参の寝袋にもぐり込んだ。
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