11月山行 南アルプス・八紘嶺山伏

日程 2006年11月18〜19日
コース 第1日
JR静岡駅→梅ヶ島温泉→林道車止→安倍峠分岐→富士見台→山頂→富士見台→安部峠分岐→車止→黄金の湯→青野氏山荘(泊)
第2日
A班山伏:山荘→登山口→山伏→登山口→山荘
B班安倍大滝:山荘→車止(安倍川・逆川合流点)→安倍大滝→車止→山荘
その後は全員で、黄金の湯→JR静岡駅
参加者 永田、大西、喜多、岡田、石岡、福原、青野、中澤  計8名  (敬称略、順不同)
記録 喜多、大西


11月18日(土
東京からの参加者7名は、朝8時6分東京発の新幹線ひかりの車中で全員が一緒になった。9時8分静岡に着くと駅前の駐車場に青野さんが待っていた。青野さん運転の8人用の車に乗り込み、安倍川に沿う国道29号を北上。1000mを越す急峻な山を右手に見上げながら走る。途中、数ヶ所で安倍川にかかる細い吊橋を見た。安倍川はかなり急流のようである。
青空に雲が少し出ている。進むにつれて両側から迫ってくる山の斜面は険しくて、随分山奥にやってきたなと思う頃、梅が島(静岡市葵区)に着いた。見上げると山の頂上付近はうっすらと白いものに覆われて、新雪のようにも見える。
車はさらに北上して梅ヶ島温泉(標高920m、以下標高は2.5万図で読んだ値)を過ぎ、林道を登って山の中腹にある空地(標高1300m)に車を置き、11時半に歩き始めた。すぐ急な山道となった。落葉樹の明るい林の中を、落葉を踏みしめながら進む。細い幹に皮を剥いだような跡があるのはシカの食痕である。「シカはリョウブをよく食べてますね」と石岡さん。
11時55分、安倍峠分岐(1,400m)。12時10分、展望のよい尾根に出た。ここを富士見台(1,620m)といい、南に富士山、北に八紘嶺から七面山に続く山なみが望まれる。「南アルプスカモシカ保護地域」の看板が立っていて、富士山を見ながら少時休憩。
12時40分、登るにつれてガスが立ち込めてきて、辺りは次第に薄暗くなり、それまで樹間から見えていた周りの山々が見えなくなった。午後1時、樹氷が美しい。殆ど無風であるが、時に弱い風に吹かれて氷のかけらが舞い落ちてくる。山麓から見上げて雪が降ったかのように見えた白いものは樹氷だったようである。
1時半、八紘嶺山頂(1,917m)。ガスのために全く展望がきかない。そして頗る寒い。ひとしきり防寒服の話題がはずみ、日本山岳会のダウンジャケットが使ってみてなかなかいいという声があった。山頂では寒いので少し下ってから食べようということになり、少し下った所で昼食休憩(1時45分)。「シカはウリハダカエデが好きなんですよね」と石岡さん。彼が立っているそばの細い幹に剥いだばかりのような真新しいシカの食痕があった。「いま、そこで剥がしていたんじゃないの」と冗談がとぶ。2時10分、下山開始。下るにつれて気温が上ってくるのが判る。頂上では毛の手袋でも寒かったのに、やがて軍手に替えたくなり、登山口近くではそれでも暑くて素手になった。3時半、車を置いた場所に戻る。帰途「黄金の湯」で汗を流し、5時、青野さんの山荘(870m)に着いた。
夕食は鶏鍋。今日はボージョレー・ヌーボーの解禁日ということで、用意されたワインで乾杯。ワインを飲みつけていない筆者の印象では、1本目はあっさりしてジュースの様。2本目は少し渋い味。3本目はまことに芳醇な風味の酒であった。鶏鍋を平らげると次は鴨鍋。大吟醸があけられたり、ひれ酒がまわってきたり、台所で何かやっていた中澤さんがいろいろ変ったものを出してくれたりしたけれど、何が出たかと問われても何も記憶に残っていない。美味追求の議論はきりがなく、やがて疲れて各自持参の寝袋にもぐり込んだ。



11月19日(日)
朝から小雨模様。仕事のため先に帰る永田さんを送り出した後、8時に山伏(やんぶし)に登る3人(岡田、大西、石岡)が出発。後に残った3人(中澤、福原、喜多)は青野さんとしばらくおしゃべりしてから腰をあげ、安倍大滝に向った。(執筆:喜多)

(A班、山伏/執筆:大西)
11月19日(日)小雨
昨晩はボジョレヌーボから始めて、各種の美酒をかなり飲んでいた。まだ完全に体内から酒がぬけていない状態の私でしたが青野さんの山荘で朝を迎えた。昨日は全員、八紘嶺に登ったが、今日は小雨が降っていた。今日の天気は、昨日から予測していたので参加者全員が観光と温泉三昧で帰京するものと思っていた。ところが朝支度をしているころには、私の薄髪頭にも雨粒があまり感じられない程度になり、近くの周り山々も比較的良く見通せた。山伏コースの岡田リーダが、このぐらいの天気であれば決行との言葉で岡田、石岡、大西の3人で登ることになった。
青野さんに車で登山口まで送っていただき、8時には歩き始めた。西日影沢の谷は今が紅葉の盛りで、雨に洗われた紅葉の色づきが余計に綺麗であった。わさび畑の作業用運搬モノレールが登山道のわきに沿って見え隠れしている。しばらくして植林された杉林の中の道を登っていくとわさび畑が出てきた。ここで小休止していたら少し雨脚が強くなり慌てて雨具を着て出発する。歩き始めてすぐに大岩が現れて休憩用のベンチを通り過ぎて道は西日影沢から離れて登っていく。しばらく登り上部奥にもわさび畑が出てくる。種が跳んで生えたらしい雑草に見える小わさびが登山道脇まで生えていた。確認のため噛んで見ると口の中に辛さが広がった。尾根に出る詰め近くの最後の水場を過ぎ急登すると蓬峠に9時25分についた。ここは西日影沢の谷と蓬沢の谷を分ける尾根の上で峠の休憩場所になっている。我々もここで休憩をとり、りんごや石岡さんからのブドウ糖など口に入れた。それほど気にならない小雨が降り続いているが、歩く分には寒くも暑くなく、また風もなく順調に登っていく。尾根道ではあるが所々で急斜面に巻き道の横断があり、ジグザグの登りも出てきて辛いところである。やがて尾根も広がり緩やかになり市営の非難小屋と山伏の分岐に10時48分につく。ここからは緩やかなで草原も現れ夏にはヤナギランも咲くらしいハイカー好みの風景に変わる。山伏山頂には10時59分につく。記念写真とみかんやお茶など飲んで休息するが、さすがに気温が低く寒くなる。11時13分には下山にかかるが車の迎え約束時間まで間がありすぎるようなので避難小屋まで足を伸ばそうと言ことにした。少し降りると途中からかなりの下り坂になり、また戻りの登り返しを考えると辛いので途中でやめた。それでも11時37分には分岐に戻り蓬峠に向かって下山を開始する。
蓬峠には12時30分に着きここからは雑談しながらゆっくりと降りた。そして登山口には13時35分に到着したが待つよりは迎え車の逢う処まで歩こうと思い車道を歩き始める。豪雨で流された為に造った仮の広い川原道に差しかかったときに青野さんのお迎え車に出会った。青野さんのお陰で車の送り迎え付き大名登山が出来て感謝しています。又山荘に着くやいな中澤さんが暖かい具の多い豚汁を作り、遅い昼食を食べさせてくれた。小雨で冷えた身体の三人には大満足でした。

(B班、安倍大滝/執筆:喜多)
午前10時、青野さんの車で山荘出発。10時15分、支流の逆川(さかさがわ)が安倍川に流れ込む地点の空地(標高800m)に車を置き、小雨の中を歩き始めた。遊歩道とはいえ逆川沿いの急斜面に造られた山道はアップダウンが大きい。途中で3本の吊橋を渡った。第1の吊橋はしっかりしていたが、第2と第3の吊橋はチャチな造りで、特に2番目はスリルがあった。人一人が歩く幅で長さは約50m。下は激流という程ではないがごうごうと音を立てて流れる川。渡り口に「一人ずつ渡って下さい」と書いてある。先頭の青野さんは慣れた足どりで渡って行く。歩くのに合わせて波うつように上下に揺れる。それと共に左右にもかなり揺れている。二番手の筆者はさしていた傘を畳んでザックに納め、両側のワイヤーに両手を滑らせながらそろそろと渡った。敷いてある2枚の細い板が雨に濡れて滑りそうで、心臓が縮む思いだった。渡り終って振り向くと、三番手の福原さんは平気な様子でスタスタと追ってきた。最後尾の中澤さんもやや慎重に渡ってきた。
第3の吊橋を渡ると程なく、轟音とともに忽然と安倍大滝が現れた。時は11時。なかなか見事な滝だった。観光資料によれば落差80m、幅4mという。滝壷のそばに東屋(950m)があり、しばしの間滝を見上げて休憩。車止から滝までの所要時間は行きも帰りも45分。12時半に山荘帰着。
午後2時過ぎ、山伏に登った3人が帰ってきた。全員で掃除・後片付けをして3時退去。「黄金の湯」に立寄り入浴して、5時過ぎに静岡駅着。青野さんに別れを告げ、5時23分発のこだまに乗車。車中でビールを飲みながら残り物を片付けた。
後日調べた所では、前記第2の吊橋は、延長57.4m、橋幅0.9m、橋歩幅40cm、川面までの最大高さ7.4mということであった。


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