おいらは仕事の都合で、昨年の12月から山形に単身赴任している。山遊会の会合や山行にもなかなか参加できない。ところが、岩手県、秋田県の山に登ると言う企画があるではないか。これなら一緒に行ける、というわけで参加した。
7月17日朝、盛岡駅に着くと、改札口で永田さんが手を振っているのが見えた。久しぶりに会ったけど、みんな変わらない。
その日は盛岡の里山・太田薬師に登った。先頭を行く大西さんはストックを振り回して蜘蛛の巣を払いながら歩いていく。人が全然いないのは良いのだが、暑い。標高407mだからね。暑いのは当然だな。中沢さんは背骨を圧迫骨折して登れないと言いながら、結局この里山は登ってしまった。ソロソロと歩いていたっけ。小さな沢を渡るときには大西さんがエスコート。みんな気を使っていた。やさしいね。 太田薬師の後、七時雨山荘に向かったのだが、車中で隣に座った辻橋さんが、「暑い、暑い、私着替えるから」と言って、本当に着替えたのには驚いた。こちとら人畜無害の存在だけどね。目がつぶれたり、石に変身させられるといけないから、真っ直ぐ前を見ていたけどね、おいらの目の端にさ、チラリと ・・・・ ま、これ以上は言うまい 。
今回2泊する七時雨山荘はいいところだ。なだらかな起伏の広がる広い敷地は芝生でさ、芝生の向こうはぐるりと森なんだ。そして、その向こうを、緑に包まれた山々が重なりながら囲んでいるんだ。鉱泉もある。メシも美味い。これで1泊2食付7,500円とは安い。おいらは初めてだが、みんなは常連らしい。
晩飯の後は例によって酒盛り。地酒・鷲の尾(金印)に人気があった。
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大田薬師堂前にて
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田代岳へいざ出発
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翌7月18日。田代岳を登る山行組6人は6時に出発。田代岳は北秋田の山で、青森県のすぐ近く。結構遠いのだが、連休中にもかかわらず道路はガラガラ。リーダーの大西さんの計画では、荒沢登山口に着くのは9時の予定だったけど8時に着いた。ガタガタの林道を随分長く走った気がしたけど、山荘から2時間で着いたわけだ。
登山口から林道をほんの少し登って山道に入ると、そこはブナ林の世界。これは財産だね。みんな感嘆の声をあげた。こういう山は大事にしなきゃ。
先頭の辻橋さんが快調に登っていく。40−50分歩いて5−10分休むというリズムをキープしてくれたから、歩きやすかった。
喜多さんは、太田薬師で手に入れた長い木の杖、頭にタオル、スパッツといういつものスタイル。懐かしかったなあ。スパッツといえば、みんなスパッツをつけたけど、おいらは持っていかなかったからズボンが汚れた。道がシルコロードだったからな。
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平原に池塘が点在する
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平原の木道を歩いて山頂へ
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山道には、2合目だとか3合目という標識が出て来るんだが、2合目から3合目までがやたらに長い。他の部分は大体等分に標識が出てくるのに、この部分だけが長かった。みんな口々に「何だこれは」とブツブツ言っていた。
天気は曇ったり晴れたりだったが、やっぱり暑い。そして、虫が多い。おいらは前日七時雨山荘に行くまえに防虫ネットを買ったから、それを頭からかぶった。文楽の黒子みないな感じになったが、虫対策としてはお勧めだ。大西さんは、ネットの中に虫が入ったといって騒いでいたけど、それはたまらないだろうな。
やがて頭上があかるくなったら9合目。パッと目の前に広がったのは湿地帯。池塘(漢字あってるか?)が点在していて気持ちがいい。しかも、人がいないんだ。いくらきれいな場所だって、人がいっぱいいたら興ざめだよね。それが人がいないんだからぜいたくだ。
後を歩いていた大西さんに「武藤さん、来て良かったでしょ」と話しかけられたけど、本当に来て良かった。良い山だ。
湿原に敷かれた木道を歩いてから、またちょっとだけ登ると、そこが頂上。時計を見ると10時48分だった。
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田代岳山頂
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七時雨山荘名物のバーベキュー
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頂上には神社があって、その神社の中で休むことも出来る。でも、天気が悪いわけじゃないし、我々は神社の外の階段に陣取って昼飯。ガスで周囲の山は見えなかったけど、40分ほどゆっくりした。
下りは、いま登ってきた道を下るだけ。途中で何組かのパーティーとすれ違った。連休で、こんな良い山なんだから、これが山梨県にでもあったりしたら、ものすごい人が来るんだろうな。
車を停めた荒沢登山口に戻って車に乗ったのが13時半。すぐ山荘へ。昼間だから、朝よりは車が多かったとは言うものの、走ること2時間10分で山荘に着いた。途中、辻橋さんが気分が悪くなって2回車を停めたから、ほとんど往きと同じくらいの時間で戻ってきたわけだ。風呂に入ってビールを飲んで、それから晩飯はバーベキュー。多すぎて食べられない。おにぎりと虹鱒の塩焼きは、ほとんど手付かずのまま部屋に持ち込んで酒の肴にしたけど、それでもかなり余ってしまった。酒盛りは、途中から人が大分減って、そのせいか喜多さんから若かりし頃の話を聞いたんだけど、人って、聞いてみると色んな経験をしているんだね。でもね、無理に聞いちゃ駄目だよ。あの時はそういうムードだったんだから。
山本さんと永田さんの学生運動の話も興味深かったな。おいらはノンポリだったからね。知らなかったことばかりだった。
この山荘には、残念ながら網戸がない。だから、夜、ベランダのドアを開けっ放しにすると虫がいっぱい入る。だが、閉め切って飲んでいると暑くてかなわない。空気の入れかえのため、電気を消してドアを開け放しにしてみた。すると、外に蛍が飛んでいた。一匹だけだったけどね。蛍を見たのは久しぶりだな。
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短角牛はうまかったネ
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七時雨の夕空、雲が綺麗だった
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翌7月19日は安比岳に登る予定だったけど、下見をした大西さんが、あまり面白くなさそうだと言う。安比岳はやめて、安比温泉にだけ行くということになった。安比温泉は、途中で何度か渡渉しながら一時間ほど歩くから、一般人はまず来ない秘湯だそうだ。おいらは前日の田代岳を下るとき以来、右の股関節が痛くなっていたので、にわか温泉同好会には参加せず、その代わり、にわか運転手となって安比高原に行った。安比高原もいいところだね。車に乗るだけで、ブナ林と池塘のあるところに行けるんだから、日本はきれいな国なんだと感じたね。
昼過ぎに、にわか温泉同好会と合流。ゴンドラに乗ろうという中沢さんと、少し早く帰りたいという福原さんがもめたりして、みんなはそれを面白がってさ。結局、ゴンドラ案はボツになって、早めに盛岡に戻ったけど、予定よりも早く出発する電車はすべて満席。連休だからそりゃそうだ。福原さんも諦めた。でも、一杯やるには早すぎて、店なんか開いていない。喜多さんの案内で駅の近くをブラブラして時間をつぶしてから、うま舎という居酒屋で打ち上げ。飲んでいる時間があまりないのに色々と注文しすぎて、最後は焼き魚(ハマチのカマだったかな)を、二皿も、新幹線車中での酒盛り用にテイクアウトするという有様。山遊会は、やることがチグハグでさ、ガサガサ、バタバタしながら、結局は何とか予定通りに運ぶんだから面白い。
おいらは山形に戻るから仙台までは同じ電車だけど、車両が離れていたから車内の酒盛りには参加できなかった。他の乗客のひんしゅくをかっていなけりゃ良いがなあ・・・。心配だな。
今回の山行は、天気もまずまずだった。良い山だったし、楽しかった。山の神様、笑ってくれてありがとう。
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