七夕の夜、日本山岳会上高地山岳研究所に「山遊会10周年記念国内山行」の前夜祭にメンバーが集う。しかし参加者はたったの4名。なんとも寂しいかぎりだが、辻橋さんの手料理にそんなことも忘れて楽しい宴となった。外は雨、テレビの天気予報の降水確率は80%と報じている。明日は記念登山の焼岳は中止で温泉巡りと決めてかかり、ほろ酔い気分のまま就寝する。
「おはようございます」と玄関から聞こえるのは山本さんの声、窓を開けると降っているはずの雨は止んでいる。それからが、さあ大変。大急ぎで朝食をとり山の支度をして、徳本峠を往復する辻橋・松島組の見送りをうけ出発する。
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上高地名物サルのお出迎え
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山研前にて
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木々の葉末のあいだから太陽がさしこみ好天気となった。西穂高岳登山口の指導標をすぎ焼岳登山口を出発する。樹林帯の中のなだらかな整備された登山道で、山本さんと永田さんは四方山話で盛り上っているが、私は温泉モードから登山モードへの切り替えがままならず、かつ飲み過ぎで体が重い。
しだいに傾斜もきつくなり梯子を数箇所通過し、峠沢に沿って登って行く。樹林帯を過ぎると草つきの展望のよいところで数人の若者のパーティが先行していった。岩壁にかけられた高さ10m斜度80度のアルミ製の梯子をこえ、笹の斜面のジグザギ道を登り詰めると焼岳小屋に到着した。
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増水した梓川の向こうに青空が
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大正池方向の眺め
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焼岳小屋から10ほどで展望台だがガスで視界がきかない。中尾峠方面の指導標を過ぎるとうっすらと山影が見えてきた。足元は活火山特のザレタ斜面で、硫黄の臭いも漂っている。稜線にでる最後の登りで、途中で行合った若者のパーティが休んでいたので、私も「休みたいな」とつぶやくも同行の二人は無視。しかたなく残された力を振り絞って山頂にむかう。
突然、山頂付近から「落岩― 落岩―」の声、10mほど間をおいて一抱えもする岩が音をたて転がっているではないか、数分の差で我々の運命もどうなったことやら、肝を冷やした一瞬だった。下にいた若者のパーティの無事も確認でき、山頂直下の噴気孔の右側の岩場を登りきり、やっと焼岳の山頂を踏むことができた。徳本峠組に連絡するが不通だった。山頂は若者でいっぱいで、なんとはなしに嬉しい気分になる。ガスの晴れ間にあたりの景色を楽しんで中の湯へ下山する。
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コイワカガミ
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山頂にて
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北峰と南峰のあいだの石がごろごろの斜面をひたすら下る。沢筋にはまだ雪もしっかりと残っている。笹やダケカンバやナナカマドなどが目立つようになり、下りにうんざりするころ広々とした下堀沢出会にでた。中の湯ルートは昨年の土砂崩れで通行不能のため新中の湯ルートをとる。針葉樹林帯の中をひたすら下る。下山後の湯上がりのビールをイメージしてさらにひたすら下る。
中の湯で念願の温泉とビールを満喫してタクシーで松本駅を目指す。徳行峠組と車中から連絡をとりあい結果10秒とおかず改札口で合流できた。なおかつ、焼岳の山頂でシャッターを押してもらった滋賀からきたという青年と中の湯でもあい、改札口でもあい1日に3回も遭遇した。松本駅近くの居酒屋で反省会を開き、20時の「スーパーあずさ」で帰路についた。
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