6月15日(土) 熱海駅8時26分出発の黒塗りの普通列車は、まさに豪華リゾート特急だった。恐る恐る車両の中に入ってみると、海側の座席が一列に外に向けられていた。どう見ても特急仕様なので、掲示板の列車名を確認するが普通列車となっている。結局、1時間ちょっとこの列車で海を眺めながら河津駅まで移動した。
後で調べたら、伊豆急リゾート21の「黒船」と言う名の列車らしい。普通列車として1週間のうち半分、1日に3本だけ運行するようだ。ちなみに下田から熱海行きの上りは、「きんめ」と言う名前の赤い列車らしい。
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黒船電車の外観
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黒船電車の座席 (いずれも伊豆急HPより)
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午前9時40分に河津駅に集合したのは大野、小松と渡辺の3名のみ。他の4名は1日目の行程はパスして直接宿に入ることが前日に決定していた。この日、伊豆市の天気予報は雨ではあるものの雨量は4mm程度だったので、降っても大したことはないと高を括っていた。
伊東辺りでは降っていた雨も、途中から上がり、河津駅付近は降った形跡もなかった。これはラッキーとばかり9時55分発のがら空きのバスに乗り込んだ。
河津七滝(ななだる)バス停にて下車したのは我々のみ。早速、最下流の大滝に向かう。伊豆で最大の滝だという。
ところが、滝のそばにある天城荘という旅館が滝の直ぐ横にプールや温泉を作って一般客は入れないようにしている。私有地なのかも知れないが、余りにも景観を損ねる状況だ!・・・と文句を言いつつ戻り始めたら、大粒の雨が落ちてきた。
雷も鳴り出し、本格的に雨具を着込んで傘を差しながら、上流へ向かう。雨の中、川沿いに作られた遊歩道は木道が多く滑りやすい。途中、沢蟹が道を横切ったり、巨大なガマガエルが木道の真ん中に鎮座していて思わず踏み付けそうになったりした。
最上流の釜滝と猿田淵を見て旧天城道路に出た。宗太郎園地手前の東屋で昼食。雨と雷はますますひどくなる一方で、以後の予定は取りやめてバスで宿に向かうことにした。
宿に着いて1時間もしないうちに後続隊も到着。タクシーの運転手と交渉してバス料金よりも安い金額で来たという。早速、内風呂と露天風呂に分かれて入り寛いだ。他の客はキャンセルしたとかで、この日は我々が貸し切りだった。食事は鮎に猪の鍋、鹿のコロッケ、釜飯(後でたくさんのおにぎりに変身)、天然わさびで頂く刺身などその他のおかずも充実していた。
宿は我々と同世代のご主人が一人で切り盛りしており、猟師として猪や鹿を獲り、食事の準備から布団の上げ下げ、掃除片付けまでやっており、大変だなあと同情した。
夕食後、直ぐ近くだというのでホタル祭りを見に行った。雨はこの時間には止んでいたが、ホタルも大雨の後は余り飛ばないらしく、目を凝らしてようやくちらほらと眺められるくらいの少なさだった。しかし、結構遠くを飛んでいるはずのホタルでも結構明るく、また儚い光の点滅には癒された。戻って風呂に入り、宴会後直ぐに就寝。増水した水の流れる音は寝ていると結構耳につき、しかも夜中には雷と雨がひどかった。
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河津七滝 大滝
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河津七滝 釜滝
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河津七滝 釜滝の落口の柱状節理
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ずらりと並んだジビエ料理
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朝は晴れて部屋からも雲を被った富士山が眺められた(この宿はこの地域で唯一富士山が見えるので富士見山荘と名付けたそうだ)。ちょうど宝永山火口が正面右側に見えた。
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富士見山荘露天風呂付近からの富士山 (16日朝)
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8時前に予約していた2台のタクシーに分乗、八丁池に向かう。寒天林道にはゲートがあり、このタクシー会社のみが鍵を持っているのだそうだ。昭和天皇がよく通われたと言うことで道はきれいに舗装整備されて快適だったが、上るにつれガスが濃くなって風も出てきて不穏な雰囲気になる。
八丁池口に到着するも、何となく意気は上がらない。最初は林道を、途中からはオオルリ歩道を歩くが、ますます風が強くなってきて、結局1時間ほど歩いたところで後続隊グループは離脱して元の八丁口に戻ることになった。戻る頃にバスが出るタイミングだった。
霧に覆われた八丁池は幻想的だった。霧は濃くなるかと思えばさっと晴れ、また濃くなることを繰り返していた。モリアオガエルの卵は残念ながら見つけられなかった。池の縁では蛙の鳴き声が盛んに聞こえるが姿は見えない。
実はここまでが風の最も強い時間(場所)だったようだ。八丁池から白田峠を通り戸塚峠までの1時間ちょっとのコースは、天然林の樹林帯の中を歩くのだが、風は弱く晴れ間も見えてきてほぼ平坦な道で快適だった。
戸塚峠からは小岳に向かって登りが始まる。小岳山頂はブナの自然林に覆われ、山頂として珍しい風景だった。この辺りのブナの幹は苔に覆われ黒っぽい。ブナの幹を伝う水を栄養源にしているのだろう。小岳付近で昼食を取りたかったが、稜線なので強風であきらめ、先へ進んだ。
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ブナの根 (八丁池付近)
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八丁池にて
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馬酔木の若芽が赤く見える
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八丁池から天然林を白田峠に向かう
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歩道で死んでいたジョウビタキ?
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ちょうど盛りの天城ツツジ
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小岳山頂の天然ブナ林
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万三郎岳近くから伊豆大島
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富士山
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石廊崎方面 (風車が見えるが強風で全て止まっていた)
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万三郎岳は1等三角点を持つ藪の中の山頂で、展望はきかなかったが、風はなくゆっくりと昼食が取れた。さすがにここは人が多く、3,4パーティが入れ替わり立ち替わり到着した。
シャクナゲの花が少しでも残っていないかと探しながら万二カ岳に向かって下っていくと、一輪だけ残った花を見つけた。万三郎岳から石楠立(はなだて)を越えて万二カ岳までは確かに石楠花の木が多く、満開の時はさぞかしきれいだろうと思われた。
万三カ岳を出るとき、コースタイムとして30分の余裕があったはずだったが、万二郎岳に着いた時には5分ほどの余裕しかなくなっていた。馬酔木のトンネルをくぐり、時には頭をぶつけながら先を急ぐも、沢が増水して徒渉に苦労したり時間はどんどん過ぎていく。天城高原ゴルフ場のバス停手前700mの四辻と言うところから、最後の道は何と登りになっていて息を切らせながら歩いて何とか4時に到着。
バスは4時10分に出発し伊東に向かって山を下っていった。途中富士山がきれいに眺められた。
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万三郎岳山頂の一等三角点
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万三郎岳山頂にて
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山頂近くに唯一残っていた天城シャクナゲ
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石楠立の天城シャクナゲ説明板
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天城高原ゴルフ場の左手遠笠山、中央に大室山
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万二郎岳山頂にて
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四辻近くで鹿
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天城高原ゴルフ場バス停から富士山
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伊東ではあらかじめ調べてあった駅近くの「まるたか」という海鮮の店に行く。地魚の刺身や金目鯛の煮付けなど新鮮な海鮮中心の肴にビールが進んだ。
最後の締めで食べた「うずわのまご茶」という謎の茶漬けが実に美味かった。聞くとソーダ鰹をたたきにしたものらしい。出汁もソーダ鰹で作っているとか、追加無料サービスの青唐辛子をたっぷり入れて食べた。これだけ飲み食いしても1人3千円程だった。
熱海からのこだまの自由席は空いていて、4人掛けを3人で坐りまた一杯やりながら東京まであっという間だった。
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