今回のフォーラムは第10回の節目の会で、「山の写真の撮り方」、「虫刺され」、「ライチョウの保護」,「草津白根火山噴火」の4講演が、去る3月10日(土)に立正大学品川キャンパスで行われ、約120名(委員を含む)の参加者が講演に聞き入った。
第1の講演は、科学委員で日本山岳写真協会会員の大村粛氏による「山の写真を楽しむ−初級者から脱皮するためには−」。撮影に必要なもの、よい写真、撮影場所、画面構成、ピントの合わせ方、露出法、と詳細な説明があった。よい写真を撮るには多くの工夫・配慮が必要であることを自覚させられた。撮った写真を岳に収めるまでの過程について、熱のこもった話であった。最後に登山中の撮影で事故を起こさないためにカメラを首にかけたままで行動しないように、とのことだった。
第2の講演は、科学委員で医療委員でもある野口いづみ氏による「山での虫刺されと対策−ブヨ、ヒル、マダニ、ハチなど−」。@ヌカカとブヨ、Aヤマビル、Bマダニ、Cハチに分けてそれぞれにさされた場合の症状と問題点を初めに解説ののち、予防・対処について説明。写真とイラストを用いての分かりやすい講演は、実用的で山行中にすぐに役立つことばかりであった。特にハチに刺されたときは、死に至ることもあるので、初期対応の重要性が解説された。山行では長袖を着、黒色の衣類を避けることが大切であることを学習した。
第3は環境省自然保護官の福田真氏の「ライチョウを守り育てよう!ライチョウが棲む<天上の楽園>を永遠に。」 神の鳥と言われ、人を恐れず、登山者を迎えてくれるライチョウは絶滅に瀕している。その生態、激変の実態、保全保護作業の現場報告で、大変興味深い内容であった。山での保全活動と卵を動物園などで孵化させる活動のそれぞれの実態報告があった。
山での保全活動の実際は動画を用いて、ヒナが親鳥について歩き、エサの採り方を学んでいく姿など、大変ほのぼのとした姿は感動的で
もあった。保全活動が始まって、減少の程度は下がったようだが、まだ増加には転じていないようである。カラス、サル、テンによる捕食、シカによるライチョウの餌場の植生の変化をどれだけ防げるのか、などまだ多くの課題があることが分かった。
第4は1月23日に突然、水蒸気噴火を起こした草津白根火山噴火について、科学委員で日本火山学会会員の福岡孝昭氏による緊急速
報「草津白根火山噴火−突然の噴火に備えた活火山の安全登山心得−」である。今回の噴火の経過、噴火メカニズムの解説で、水蒸気噴
火は事前予測が困難な場合があることが説明された。登山者が活火山を(噴火災害に遭わないで)安全に登山するためのチェック項目と
して、@登る山は火山か非火山か、A活火山か非活火山か、B活火山の場合は常時観測火山か、C活火山の場合、最近の活動状況と噴火史を知ろう、D過去の噴火はマグマ噴火か水蒸気噴火か、E水蒸気噴火の火山の登山は要注意、とのコメントがあった。活火山の安全
登山には、これら山の特徴についての事前学習を心掛けよう。
参加者の多くは従来から中・高年者であったが、今回は3名の高校生の参加があり、立派な質問もして注目された。今回の4講演に対する参加者の評価はどの講演も好評で、特に火山噴火に関する講演はタイムリーであると評価された。最後に快適な講演会場をご提供いただいた立正大学に感謝申し上げる。
今回のフォーラムの講演要旨に残部があるので、ご希望の方は山岳会事務局においでいただくか、kagaku@jac.or.jp に申し込みください(有料、一部100円十送料)。
また今回のフォーラムの講演に関連しての保護活動現場見学を、探索山行として9月に行なうことを付記します(本号インフォメーション欄参照)。
(福岡孝昭)