6月18日、上高地山岳研究所と徳沢園で表題の現地講習会が実施された。
これは山小屋などでの自然エネルギー利用の実情を現地で見学し、当事者の話を直接聞き、その意義や今後の見通しについて理解を深めることを目的としたものである。
12時30分、山研に集合し、曇り空の中を徳沢園まで歩き、14時20分から食堂で、同園経営者上條敏昭氏(本会会員)から話を聞いた。
@ 太陽光発電システムの導入に当たって、技術面では特に問題なかったが、行政面では手続きに苦労した。
A 導入規模とコストのバランスに留意した。
B トイレ関係、常夜灯、カード公衆電話、非常灯など24時間使用する小電力設備に使用し、動力源やお客さんの多い時間の照明などはディーゼル発電に依存している。
C 水力発電は場所が離れている上に、本格的な土木工事になると経済的負担、役所との折衝など困難な問題が多く、保留している。
ついで、屋根にとりつけられた太陽電池パネルと電気室のバッテリーやインバータを見学した。
その後、雨がばらつきはじめた中を山研に戻り、自然エネルギー利用の研究を長年続けてこられた神奈川工科大学名誉教授鳥昼亮氏(本会会員)から、自然エネルギー利用の普及状況の推移と今後の見通しについて、次のような話があった。
@ 最初に本格的に取り組んだのは(穂高岳山荘において、昭和57年から風力発電、59年から太陽光発電の実用化試験である。
A 63年から、北アルプスや八ヶ岳などを中心に多くの山小屋で実用化が進んだ。その中心は技術的に容易な太陽光発電であった。
B 平成元年から、国の補助を受けた白馬山荘で大規模な(70キロワット)実験が行われ、いろいろなデータ収集が3年間にわたって実施された。
C 山の上での実験は、非常に困難をともない、なかなか満足のいくデータが得られないことが多かった。
D 最近数百ワット程度の水力発電の実用化研究に取り組んでおり、立地さえ適切であれば24時間発電可能なため、大変有効である。
約1時間の講演の後、地下資料室に展示されている太陽電池、超ミニ水力発電装置や関連の資料を見学した。
参加者からは、経済性、耐用年数、関係法規などについて数多くの質問が出された。また、当日参加の白馬山荘の宮本氏、奥秩父三条の湯の木下氏から経験談も語られた。
そして、6時半から小倉常務理事の発声で乾杯し、懇親会を催した。参加者の自己紹介では大いに話が弾み、食後の語らいが遅くまで続いた。
翌朝は5時に起床したが、あいにくの雨の上に、焼岳、徳本峠など各自予定していた山行は中止にせざるを得なかった。参加者の多くは、上高地温泉で湯につかり、焼岳登山道を無念の思いで右に見て、バスターミナルからそれぞれの家路についた。 参加者20名。
(森 武昭)