山中にあらわれる

山みさき(やまみさき)

タイプ/ 悪い
エリア/ 山口県、四国
カタチ/ 人の生首の形
攻 撃/ 憑かれると体が重くなり、動けなくなる。大熱が出る。
特 性/ 山で体が重くなったら、山みさきに憑かれているのかもしれない。山みさきは、崖から落ちたりして山で死んだ者の霊魂が、死後8日目まで生首の形となってあらわれるものだ。魔風を伴い、落ち葉の上を車輪のように回り飛ぶこともある。不慮の事故で死んだから、行くべき場所を求めてさまよっているらしい。

子泣き爺(こなきじじい)

タイプ/ 悪い
エリア/ 徳島県
カタチ/ おじいさん
攻 撃/ 重さで人を押しつぶし、命を取る
特 性/ 山中で「オギャア、オギャア」と泣いている赤子を見つけても、たやすく近寄ってはいけない。可哀そうに思って赤子を拾い上げると、顔は皺くちゃの子泣き爺かもしれないからだ。子泣き爺は抱き上げたとたん、石のように重くなり、引き離そうとしてもしがみついて離れない。ついにはあまりの重さでこちらが押しつぶされてしまうのだ。

笑い男(わらいおとこ)

タイプ/ 悪い
エリア/ 高知県
カタチ/ 15歳くらいの子ども
攻 撃/ 響くような笑い声で相手を苦しめる
特 性/ 月の1、9、17日に山に出かけると、笑い男に出会うといわれる。山中で15、6歳くらいの男の子が、ずっと先から旅人を指さしてゲラゲラと笑いだす。やがてその笑い声はだんだん高くなり、草木も風も笑っているように聞こえ、しまいに山が崩れる程になるのだ。笑い男に出会ったら最後、死ぬまでその笑い声が鉄砲を撃つような大きな音となって耳にひびき、苦しめられる。

さとり

タイプ/ ふつう
エリア/ 千葉県、茨城県
カタチ/ おかっぱ頭の小僧
攻 撃/ 特に危害は加えない
特 性/ つんつるてんの着物を着たおかっぱ頭の男の子がさびしい山道などにあらわれて、「水飲め、茶飲め」と声をかけてくる。ムジナ(タヌキやアナグマ)が化けて人をおどかしているとも言われるのだが、水分補給のアドバイスかも!?

山みさき(やまみさき)

タイプ/ ふつう
エリア/ 飛騨・美濃、福島
カタチ/ 全身毛むくじゃらの獣
攻 撃/ 人間をからかう
特 性/ さとりは、杣(そま。林業従事者)や山小屋の爺の前にあらわれる。相手の心をすべて見通し、「お前はこんなことを考えているだろう」と、先に相手の思っていることを口にする。でも杣の仕事中に木片がはね飛んだりすることは予測することができず、「人間は悟りきれぬことをする」などと言って逃げ帰るお茶目な面も。もともと人里近くに住んでいて、占いなどをしていたが、何もかもが分かってしまうため、つまらなくなって山の奥へ入ったそうだ。

一本足(いっぽんあし)

タイプ/ 悪い
エリア/ 奈良県の伯母ヶ峰山
カタチ/ 一つ目で一本足
攻 撃/ 旅人を取って食う
特 性/ 昔むかし、奈良の伯母ヶ峰山で猟師が背中に熊笹の生えた「猪笹王(いのざさおう)」という大イノシシを撃った。猪笹王は自分を殺した猟師と猟犬を憎むあまり一本足の鬼と化し、伯母ヶ峰で旅人を襲うようになった。この鬼はえらい僧によって鎮められたが、12月20日だけは自由にふるまってよいという条件付きだったので、旅人たちはこの日に伯母ヶ峰を通るのを避けたという。

土転び(つちころび)

タイプ/ ふつう
エリア/ 中部地方、中国地方
カタチ/ 毛むくじゃら・小型
攻 撃/ 何も悪さはしない
特 性/ 峠で旅人の足にひっついたり噛みついたりして歩みをジャマする毛むくじゃらの妖怪。気配を感じても恐れず通り過ぎればよい。逃げるとしがみついてくるから要注意だ。土転びのいる道を避けようとすると、道に迷ってしまうと言われる。旅人を守る神という説もあるらしい。

かまいたち

タイプ/ 悪い
エリア/ 全国
カタチ/ 両手に鎌のような巨大な鋭い爪を生やした、いたちのような姿
攻 撃/ 人に切りつける
特 性/ 旋風に乗ってあらわれ、両手の鋭い爪で旅人に切りつける魔獣。かまいたちにつけられた傷は、最初は痛みも出血もなく気づかないほどだが、あとで激痛と出血があり、命取りになる。もし山を歩いていて知らないうちに傷ができていたら、かまいたちの仕業かもしれない。暦を大切にしていると、出会わないという。

手長足長(てながあしなが)

タイプ/ 極悪
エリア/ 東北地方
カタチ/ 手足の長い巨人
攻 撃/ 人間を食う
特 性/ 山に棲んでいるが、里に下りて悪さをしたり、手を伸ばして日本海の船をおそい船員を食ったりする恐ろしい巨人だ。山形県の鳥海山では、高僧が退治のために百日間祈りをささげて山頂を吹き飛ばすと、手長足長も姿を消したという。福島県磐梯山の手長足長は、弘法大師空海によって小箱に閉じ込められたそうだ。

猿虎蛇(さるとらへび)

タイプ/ 悪い
エリア/ 岐阜県高賀山
カタチ/ 頭は猿、胴は虎、尾が蛇で、大きさは5mくらい
攻 撃/ 危害を加える
特 性/ 平安時代、岐阜県高賀山に棲んでいた妖怪。奇妙な姿で牛に似た奇怪な声を出す。ある日、猿虎蛇が京の御殿にいた公家の子どもをさらって殺してしまったので、帝の命を受けた藤原高光という貴族が、ひょうたんに化けて沼に浮かんでいた猿虎蛇を矢で射て退治した。

山姥(やまんば)

タイプ/ 悪い・良い
エリア/ 全国
カタチ/ おばあさん
攻 撃/ 人を取って食う
特 性/ 全国の山に棲む妖婆で、山にきたものを取って食うおそろしい存在。山姥に追いかけられた子どもたちが神に請い、天から下りてきた鎖を上って逃げ、それを追ってきた山姥がそば畑に落ちて死んだという伝説も残る。そばの茎が赤いのは、山姥の血で染まったからだそうだ。一方優しい山姥もいて、里に下りてきて糸紡ぎを手伝ったり、酒を売ってくれた者を金持ちにしてくれるなど、福を分けてくれる山姥もいる。

雪女(ゆきおんな)

タイプ/ 悪い
エリア/ 東北地方
カタチ/ 顔面蒼白のひょろりとした女
攻 撃/ 息を吹きかけて人間を凍死させる
特 性/ 山で猛吹雪に閉じ込められると、白い単衣を着た雪女があらわれることがある。雪女が出た時は道を譲ったり、声をかけてはならない。魅入られて冷たい息を吹きかけられ、殺されるからだ。子ども(雪ん子)を抱いた雪女もいて、通る人間に子を抱いてくれとせがんでくるが、抱くとみるみるうちにその子が重くなり、雪に埋もれて凍死する。雪女は、風呂に入れたり湯をかけると消えてしまう。

猿鬼(さるおに)

タイプ/ 悪い
エリア/ 石川県
カタチ/ トシをとった猿
攻 撃/ 人や作物を食う
特 性/ 石川県の岩井戸神社の裏にある洞穴に棲み、18匹の鬼を引き連れて里に下りてきては女子どもをさらったり、作物を盗んだりしていた。みかねた神々は神在月の出雲で相談し、退治することにした。退治に遣わされた氏神が射た矢が猿鬼の目に当たり、流れた黒い血がいまの黒川という川になった。岩井戸神社は、この神恩に感謝するために建立されたものだ。

お膳岩(おぜんいわ)

タイプ/ 良い
エリア/ 長野県
カタチ/ 巨大な岩
攻 撃/ 食器を貸してくれる
特 性/ 村人に食器を貸してくれる岩の妖怪。結婚式や葬式など、人が集まる行事があるときは、前夜にこの岩に「お膳を何人分貸してください」と頼むと、翌朝には岩から浸み出る清水の池に、人数分の食器が浮いている。借りた食器を返さないと、次から貸してくれなくなる。

殺生石(せっしょうせき)

タイプ/ 極悪
エリア/ 栃木県、福島県、愛知県、岡山県、山口県
カタチ/ 大きな石
攻 撃/ 毒気で近寄る生き物を殺す
特 性/ 中国、インド、日本の3ヵ国を飛び回り悪さをしていた九尾の狐が、京都の御殿に入ろうとして見破られ、逃げて山中の石と化した。石となっても毒気を吐き続け、近寄る生き物をすべて殺してしまうので、えらいお坊さんが念力で石を砕いた。このとき砕けた石が全国に散らばっていて、これを踏んだ人の足にはマメができる。