山のおどろき辞典

祝日に「山の日」ができました。
「日本の山」に関する雑学を辞典にしました。はじめて知るようなビックリ知識も掲載しています。これを読んで、山について考えてみましょう。

―あ―

あいぬご【アイヌ語】

北海道や東北などの山名や地名には、アイヌ語を起源とするものが多い。サッポロとは乾いた土地、シレトコとは陸地の先端、トムラウシとは花や草木でおおわれた山、ポロシリとは大きな山、レブンは低い山、などなど。

あかとんぼ【赤トンボ】→あきあかね

あきあかね【アキアカネ、秋茜】

赤トンボと呼ばれるトンボの一種。水田や池沼などに住む。平地で孵化し、夏に1,000m級の高地へ移動して秋になると戻ってくる。同じ仲間のナツアカネは高地に移動しない。赤トンボは全国的に激減しており、稲の育苗時に施す殺虫剤の影響だと考えられている。

あきつ【秋津、蜻蛉】

トンボのこと。秋津島とは日本国のこと。

あめ【雨】

日本は雨が多く、年間降水量は世界2位(1位はフィリピン)、世界平均の約2倍である。雨に関する言葉や雨の違いに名づけられた言葉が多い。「雨上がり」「雨だれ」「雨模様」また雨を表す言葉として「こぬか雨」「五月雨(さみだれ)」「時雨(しぐれ)」「秋霖(しゅうりん)」「氷雨(ひさめ)」などなど。雨の字がある山名は25千分の1地形図で70山以上あり、雨が多い、あるいは雨乞いをするなどの理由でつけられたと考えられる。雨山(神奈川ほか7山)、雨乞山(愛媛など21山)、雨降山(長野など7山)、七時雨山(岩手)。龍や竜がつく山も雨に関した山であることが考えられる。

いおう【硫黄】

日本には火山が多く、採掘が容易なため、古くから硫黄の生産が行われていた。8世紀の『続日本紀』にも登場する。中世以降は鉄砲の火薬として、江戸時代には火をつけるための付け木として利用された。明治時代にはマッチとして使われ、当時の主要輸出品目となった。しかし昭和30年代頃から、石油精製の過程で硫黄が生産されるようになり、日本の硫黄鉱山は全て閉山となった。

いかだ【筏】

河川で木材を運搬するために、丸太を数本平行に並べてつないだもの。日本は河川が多いため、昭和時代までこの方法が盛んに用いられていた。筏はそれ以外に、人や物を運ぶ船舶、あるいは養殖などで利用され、材料も木材だけではなく、竹や葦、皮、現在はプラスチックなどでつくられている。

いし【石】→がんせき、こうぶつ

いっとうさんかくてん【一等三角点】

三角点測量で、40kmほどの間隔で全国をおおうための、基準となる三角点(一等三角補点を含む場合も)。二等、三等と順次密度を増やし地形図を作成する。なお、最も標高が高い一等三角点は、富士山でも北岳でもなく、南アルプスの赤石岳にある。

いっぽんたてる【一本立てる】

登山中、休憩をとること。ボッカさんが休憩するとき、重い背負子(しょいこ)の下に杖をあてがい、立ったまま休むことから。

いなりのかみ【稲荷神】

稲荷神(稲荷大神、稲荷大明神ともいう)は、山城国稲荷山(伊奈利山)の神(現在の伏見稲荷大社)。創建したのは秦氏族だと伝えられており、秦氏の祖先が富裕に驕って餅を的にしたところ、その餅が白い鳥となって山の峰へ飛び去り、そこに稲が生えたので、それを祀ったと『山城国風土記』逸文にある。稲の神であることから食物神と同一視され、中世以降、農業、工業、商業などの神とみなされるようになり、江戸時代には芝居の神にもなった。キツネは古くから稲荷神の使いとされていた。

いのしし【イノシシ、猪】

日本には本州・九州・四国などに生息するニホンイノシシと奄美大島や琉球に生息するリュウキュウイノシシがいる(どちらも固有亜種)。山梨県の金生(きんせい)縄文遺跡では、イノシシの焼けた下顎骨が出土しており、宗教的儀式や食用として飼われていたと考えられている。また、イノシシは多産であることから、豊穣の象徴として土器文様などに描かれている。肉食が穢れとされた平安時代以降も山間部を中心に食されていた。現在はイノシシの増加による農業被害が増えて問題となっている。

いりあいち【入会地】

村や部落などの住人が共同で所有した山。垣内山(かいとやま)、惣山(そうやま)、総持山(そうもちやま)、などと呼ばれ、いまもその名が残る山がある。「さとやま」参照。

いわ【岩】→がんせき

いわのぼり【岩登り】

山登りのひとつ。急傾斜の岩場を登ること。岩壁登攀、ロッククライミングとも。ロープやハーケン、カラビナなど多くの用具を使って登る。また、用具に頼らずに登るフリークライミングがある。

いわくら【磐座】

霊石や霊岩。日本での古い神道の信仰の対象で、神や精霊、魂などが宿るとされるご神体。伊勢市の「二見浦の夫婦岩」や宮島弥山山頂の巨石、大阪交野の磐船神社にある「天の磐船」、群馬県榛名神社の「鉾石」などなど日本全国に数多く存在する。

いわみぎんざん【石見銀山】

①島根県大田市にあった日本最大の銀山。戦国時代後期から江戸時代前期にかけて、日本は世界の銀の約3分の1を産出し、石見銀山の銀がその多くを占めたとされている。精錬のための木材利用において適切な森林管理がなされていたことが評価され、2007年に世界遺産として登録された。②石見銀山でとれる砒石で作られたネズミを殺すための毒薬。

うきしま【浮島】

池塘にはときおり浮島が浮かんでいる。高層湿原では、植物の遺骸が分解されずに積み重なって泥炭化しているため、植物は表面でのみ成長し根は横に張る。池塘の中に広がった植物が、切り離されて浮島となったもの。

うし【ウシ、牛】

日本には、中国大陸から持ち込まれたと考えられ、古墳時代から飼われていた。そのころから江戸時代まで、食料としてより、農耕や運搬など使役での利用が圧倒的だった。ウシは細い道でも橋でも急な坂でも歩けたので、ウマと比べ、山道で重宝がられた。各地に「牛」の字がつく道や峠がある。山も、赤牛岳(富山)、牛ヶ岳(新潟)、牛神山(岡山)など数多い。西日本ではウシの守護神として大日如来の信仰が盛んだった。

うしとら【丑寅】

北東。鬼門→きもん

うたがき【歌垣】

古代、日本では男女が山や市などに集まり、歌を詠みかわして遊んだ行事で、『万葉集』には、筑波山での様子が歌われている。

うたき【御嶽】

沖縄にある聖地。多くは森や岩が聖なる場所となっている。「腰当森(くさてむい)」、「拝み山」ともいう。「斎場御嶽(せいふぁーうたき)」は、首里城跡などとともに「琉球王国のグスク及び関連遺産群」としてユネスコの世界遺産に登録されている。

うたざいもん【歌祭文】

むかし山伏が家々の門口を訪れて、法螺貝(ほらがい)や錫杖(しやくじよう)を伴奏に、神仏の霊験を説いて回っていたが、中世以後、芸能化し、三味線などを用いて、市井の事件や巷談などを聞かせるようになった。

うま【ウマ、馬】

馬事文化が盛んになったのは古墳時代と考えられている。古代律令制時代「駅家」に配置され、通信・交通手段に使われた。鎌倉時代には、軍事に利用された。また中世から荷馬として用いられることも多く、田の耕作や木材の搬出にも用いられた。街道には、ウマの守護仏である馬頭観音が多く残る。馬岳(北海道)、馬ヶ岳(福岡)、馬神山(広島)など馬の名がつく山、駒がつく山は数多い。

うまがえし【馬返し】

山で、そこから上は道が険しくなり、乗ってきた馬を返すところ。富士山、日光、岩手山などにある地名。俗世間と聖域の境でもある。駒返しとも。

うるしぬり【漆塗り】

漆はウルシノキから採取された樹液で、縄文時代から塗料や接着に利用されていた。土器や木製品、鉄器、皮などに使われており、福井県鳥浜貝塚から世界最古(約 12600年前)のウルシの枝が出土された。

えと【干支】

十二支を用いた山名は多く、その年の干支の山に登ったり、自分の干支の山を登る人がいる。たとえば、子の権現、大鼠山、赤牛山、虎毛山、兎山、龍王岳、新蛇抜山、駒ヶ岳、羊蹄山、庚申山、農鳥岳、犬ヶ岳、猪臥山など100山近く存在する。

えぼし【烏帽子】

奈良時代から江戸時代ごろまで広く使われた成人男子の帽子。円筒状のものから、それを折ったものなど多くの形状がある。山の形が烏帽子に似ていることでつけられた「烏帽子岳」や「烏帽子山」などが数多くある。

えんてい【堰堤】

貯水や砂防、治水のため、河川につくられた堤防。大阪府にある狭山池は、『日本書紀』では崇神天皇が、『古事記』では垂仁天皇が建設させたと書かれている。

おうかん【往還】

街道。→脇往還(わきおうかん)参照。

おうこく【横谷】

山脈や丘陵を直角に横切る谷。谷が深く、峡谷となっていることが多い。

おうごんのくに【黄金の国】

1300年ごろに書かれたマルコ・ポーロの『東方見聞録』には、日本(ジパング)が黄金を産出する国と伝えている。平安時代末期に莫大な金を産出して栄えていた奥州の平泉文化のことを示しているとされる。

おおいご【オオイゴ】

平野では神は春に山から下りてきて秋に帰ると信じられていたが、山を生業の場とする猟師や炭焼き、木樵(きこり)、木挽(こびき)などは山の神は一年中山に鎮まると考えていた。その神はオオイゴと呼ばれ、漢字で大子、太子と書いたためダイシ、タイシと読まれ、弘法大師や聖徳太子などの信仰につながった。

おおかみ【狼】

日本でいうオオカミはニホンオオカミのこと。北海道に生息していたエゾオオカミ同様、絶滅しているとみられる。古くから神格化され、犬神や大神(おおかみ)、大口の真神(おおくちのまかみ、おおぐちのまがみ)といい、秩父や奧多摩を中心として、全国的に狼を祀る狼信仰がある。山村の害獣を食べたため神聖視されたと考えられている。魔除けや憑き物落としなどの霊験をもつ。狼信仰の神社の狛犬はオオカミである。

おおやまつみ【オオヤマツミ、大山積神、大山津見神、大山祇神】

大いなる山の神の意味。別名がワタシオオカミ(和多志大神)であることから海の神も表し、山と海の両方を司る神ともなっている。また酒造の神、軍神としても信仰されている。コノハナノサクヤビメの父。

おかぼ【陸稲】

畑で栽培されるイネのことで、縄文時代から栽培され、水田の稲作より起源が古いと考えられている。江戸時代ごろまで南九州や北関東などで栽培されていたが、いまはほとんど栽培されていない。

おくみや【奥宮】

奥社。本社より奧(山奥や山頂)にある神社。

おこぜ【オコゼ、虎魚】

一般にオニオコゼのこと。山の神は嫉妬深い女神であるため、醜いオコゼを捧げると、喜ぶという言い伝えがある。夏が旬で美味。

おし【御師】

古くは祈禱をおこなう神職、社僧だったが、社寺で参拝者の案内や宿泊など世話をするようになった。平安時代末期頃から活発になっていき、熊野三山の熊野御師をはじめ、石清水、賀茂社、春日社、富士山、白山、伊勢神宮、出雲大社など多くの神社で見られるようになった。江戸時代には信仰に加えて遊興の側面を併せ持つようになって、伊勢神宮や富士・御嶽・立山など多くの神社で御師が活躍し、講が組織された。富士山の吉田市、東京の御岳山、丹沢の大山などに御師の宿が残っている。

おに【鬼】

語源は「穏(おん)」という目に見えない超自然的な存在。古代、大和朝廷に敵対する勢力などが鬼と呼ばれており、死者の霊魂であったり、祟りであった疫病などをもたらす存在だった。中世から江戸時代にかけて、仏教や陰陽道の影響で、地獄にいて、角を生やし金棒を持って虎の皮のふんどしをした姿が定着するようになる。

おにび【鬼火】

①火山で硫黄が燃える炎。②火の玉のこと。湿地で小雨の降る闇夜に燃えて浮遊する青火。

おね【尾根】

山の地形で、谷と谷にはさまれたもっとも高いところの連なり、あるいは山頂と山頂をつなぐ山のもっとも高いところの連なりをいう。山稜、稜線とも。

おねあるき【尾根歩き】

登山形式のひとつで、最も一般的なもの。開放的で展望を楽しめ、道もわかりやすい。縦走をする場合は、尾根をたどっていくことが多い。

おねみち【尾根道】

尾根を行く道で、山に登る際には、現在位置やコースが把握しやすいが、下る際には尾根が枝状に別れるため注意が必要。迷ったときには、尾根にでて上に登るのがいい。日本の山の尾根には高い確率で道がついている。

おの【斧】

伝統的な和斧の刃には、一般的に「七つ目」と呼ばれる筋が刻まれている。一方に3本、反対の面に4本で、地域によっていろいろな理由があるが、山の恵みに感謝するとともに、危険な山仕事から身を守るための護符となっている。

おはなばたけ【お花畑】

山では、高山植物が群生する場所をいう。北海道の大雪山、岩手県の早池峰山、北アルプスの白馬岳、中央アルプスの木曾駒ヶ岳、南アルプスの荒川岳などが有名。田中澄江『花の百名山』が参考になる。

おりんぽすさん【オリンポス山】

太陽系最大の火星にある山。標高約22km(平地よりの高さ26km)、裾野の直径が約700kmある。外縁部には高さ5,000m以上の崖が切り立ち、山頂には富士山がほぼ収まってしまう巨大なカルデラがある。240万年前ごろに噴火したらしい形跡が発見されている。なお、火星には太陽系最大の峡谷、マリナー峡谷も存在している(全長2,000km、最大深さ10km)。

おろち【大蛇】

大きな蛇。『古事記』『日本書紀』に登場する頭と尾が8つある「ヤマタノオロチ」が有名だが、大きな蛇が出てくる神話・伝説は日本各地にある。山の神や水の神、あるいは火山の神の化身であることが多い。

おんし【御師】→おし(伊勢神宮では「おんし」)

おんしりん【恩賜林】

無償で山梨県に下賜された山林のこと。明治政府は全国の山林を国有化し、一部を皇室所有にした。しかし山林が荒廃して災害が相次ぐなどしたため、皇室の御料林約16

ha(県の面積の3分の1)が払い下げられ、現在は県有林となっている。

おんせん【温泉】

火山国である日本は世界一の温泉大国でもある。源泉総数は約3万、温泉地は約3000。2位のイタリアの10倍の温泉地である。日本人は温泉を古くから利用しており、全国の温泉には開湯伝説や神話などが数多く存在する。『日本書紀』をはじめ多くの文献に温泉が登場し、信仰の対象となり、病気や怪我の治療に利用されてきた。温泉の神オオナムチ/オオクニヌシ(大己貴神/大国主)とスクナヒコ(少彦名神)を祀る温泉神社も多い。なお、日本でもっとも高いところにある温泉は、立山にある「みくりが池温泉」で2430m。

おんたい【温帯気候】

日本列島のほとんどが温帯気候(北海道、東北地方内陸部、関東・中部山岳地帯、沖縄県南部などは亜寒帯や熱帯)。年間を通して温暖で、四季がはっきりし、動植物が多く生息して農業に適する。

おんりょう【怨霊】

恨みをいだいて祟りをする死霊。平安時代の物の怪(もののけ)、中世の怨霊や御霊、近世の無縁仏や幽霊など。菅原道真や平将門、崇徳上皇などの祟りが有名で、神として祀られている。

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かーる【カール】

高山の尾根直下などに見られるスプーンですくったような地形。氷河が成長する際に山肌を削ったもので、氷河地形の一つ。日高山脈や日本アルプスの高山で見ることができ、穂高の涸沢、宝剣岳の千畳敷、立山西面・東面などが代表的。日本語は圏谷(けんこく)。

かいき【開基】

寺院を創設すること。または創設する際の経済的支援者をさす。→かいざん

かいこん【開墾】

山林を切り開き、あるいは池沼・海面を干拓して田畑にすること。

かいさく【開削】

山野を切りひらいて道や運河を通すこと。

かいざん【開山】

寺院を創設すること。または創設した僧侶を指す。仏道修行の場として山中が選ばれ、山号をつけ開山という。なお、開基と開山は、宗派によって意味が異なる。

かいどう【街道】

古代~近世の主要な道路。古代、律令制国家では畿内を中心に七街道をつくって駅馬を設置。中世では鎌倉を中心に、江戸時代には五街道が設けられ宿駅が設置された。現在使用されなくなった道もあるが、歴史の道として歩かれている。「歴史の道百選」が文化庁によって選定されている。

かいはつ【開発】

かいばつ【海抜】

「標高」と同じだが、東京湾ではなく近くの港湾などの平均海面が基準。地球以外の天体では、海面が存在しないので、海面の代わりに使う適当な基準面を天体ごとに定義している。

かいりゅう【海流】

日本列島には、暖流の黒潮(日本海流)と対馬海流、寒流のリマン海流と親潮(千島海流)が流れる。夏、南東からの風が、黒潮を通過してくるときに、水蒸気を大量に取り込むため湿気が高く、冬は大陸からの寒気が対馬海流の上を渡るときに水蒸気を取り込んで豪雪になる。北海道や東北地方の太平洋側では、夏に親潮を通過してくるやませの影響で、冷害になることがある。なお暖流と寒流がぶつかるところは好漁場となる。

がいりんざん【外輪山】

カルデラを環状または馬蹄形に取巻く山の連なり。箱根山の金時山や明神ヶ岳、阿蘇山の大観望や宮地岳などが外輪山。

かがんだんきゅう【河岸段丘】

川の中・下流にある階段状の地形。 関東の武蔵野台地は多摩川、秩父盆地は荒川、群馬県の沼田市は利根川や片品川の河岸段丘として有名。

かくらん【撹乱】

撹乱とは、自然あるいは人間が、生物の自然環境を乱すことを言う。たとえば、山崩れや山火事などによって森林が大きく破壊されるようなことで、撹乱によりできた新たな環境に、新たな生態系がつくられる。大規模な撹乱があることで、自然は多様性を得て豊かになる。

かこう【火口】

マグマや熱泥などが地表を出てきたときの穴で、噴火口ともいう。火口は直線上に並んでいることがよくある(火口列という)。

かこうきゅう【火口丘】

カルデラや大きな火口の中に形成された新しく小さな火山。中央火口丘ともいう。箱根火山の駒ヶ岳や阿蘇山の中岳など。

かこうげん【火口原】

大きな火口やカルデラの底の平坦なところ。箱根火山の仙石原、阿蘇山の阿蘇谷や南郷谷など。

かこうこ【火口湖】

火口に水がたまってできた湖。霧島の大浪池、立山のみくりが池、蔵王山の御釜など。

かざん【火山】

マグマが地表または水中に噴出してできる山のことだが、カルデラのような凹地形も火山と呼ぶ。日本には活火山が110山あり、世界の活火山の約7%を占しめる火山大国である。

かざんばい【火山灰】

マグマが噴出する際にできる直径2mm以下の細かい破片。視界不良による運行障害や農業被害、健康被害などをおこす。約2

9000年前に起きた鹿児島の姶良(あいら)火山の巨大噴火では、降灰は北海道を除く全国におよび関東地方にも10cmの厚さの降灰があったと言われている。また、約7,300年前に巨大噴火した鬼界カルデラのアカホヤ火山灰からは縄文人の遺跡が見つかっており、九州や西日本の縄文初期の文明が絶滅したという説もある。

かぜ【風】

日本列島は山が多くて複雑な地形である上に、周囲を海に囲まれているため、さまざまな風(局地風)が吹く。風の宝庫といっても過言ではない。山から吹く山越えの風、海や湖との間に吹く海陸風や湖陸風。「関東の空っ風」や「やませ」をはじめ「赤城おろし」「荒川だし」「神通おろし」「六甲おろし」など地域に特有の風が多くある。また季節風も吹く。冬には日本海側では雪や雷を生み、太平洋側では木枯らしとなる。夏には梅雨をもたらし、さらには夏から秋にかけて台風が日本に訪れる。

かせい【火星】

太陽から数えて4番目の惑星で、太陽系で最大の火山であるオリンポス山(21,900m)があるほか、アスクレウス山(14,900m)、エリシウム山(12,600m)、アルシア山(11,700m)、パヴォニス山(8,400m)、アンセリス山 (6,200m)など多くの巨大な山がある。〔http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2002JE002031/full〕

かせいがん【火成岩】

マグマが冷えて固まった岩石。急激に冷えて固まった「火山岩」と、ゆっくり固まった「深成岩」に分類される。玄武岩や安山岩は火山岩、花崗岩は深成岩である。

がでんいんすい【我田引水】

物事を自分の都合のいいように言ったりしたりすることを言うが、これは、水田に使う水を自分のところだけに引いてしまうことからできた言葉である。水田に引く水で収穫が左右され死者さえ出た時代、我田引水は戒められた。

かなくそ【金糞】

滋賀県と岐阜県の境に金糞岳という山がある。古代タタラ製鉄で鉄を作るときに生じるカナグソ(スラッグ)からその名がついたと言われる。弥生時代、琵琶湖周辺は鉄の産地だった。

かなやま【金山】

金山(きんざん)のこと。

かま【釜】

水流で深くえぐられた滝壺のことも言う。形が似ている、水しぶきが湯気のように見える、という説がある。深い緑の色が美しく、滝とあわせて観光の名所となっているところも多い。上高地に通じる急勾配のトンネル「釜トンネル」の名称は、そこが以前、釜であったことからつけられている。江戸時代、難所として知られていた。

かみおろし【神降ろし】

天や山あるいは海や湖などから、祭りの初めに、祭場に神霊を招くこと。また、巫女(みこ)が、自分の身体に神霊を乗り移らせること。

かもしか【カモシカ、羚羊、氈鹿】

ニホンカモシカは日本の固有種で、高山に生息している(いまは低地にも出没するようになった)。シカ科ではなく、ウシ科である。特別天然記念物に指定されているが、食害防止のため駆除もおこなわれている。

かもしかさんこう【カモシカ山行】

長い距離を早く長時問歩く山行。夜眠らずに歩く。加茂鹿之助の考案による「加茂鹿之助式夜行日帰り山行」の略。

からす【カラス、烏】

①カラスは世界中に生息するが、日本にふつうにいるのは、ハシブトガラスとハシボソガラス。ワタリガラスなどが渡り鳥として飛来する。高地にはホシガラスが生息する。②日本では古くからカラスは霊魂を運ぶとされ、また修験道では神の使いとされてきた。熊野三山での神の使いは八咫烏(やたがらす)である。全国に烏ヶ岳や烏岳など烏がつく山は40山以上ある。

かりしき【刈敷】

肥料のひとつ。山林の柴草や雑木の若葉・若芽、ワラなどを田畑に敷きこみ地中で腐らせ堆肥にする。江戸時代までの肥料は、人糞尿、牛馬などのし尿である厩肥(きゅうひ)、そして刈敷だった。そのため、多くの山が草を生やすための「草山」や「芝山」、あるいは柴用の低木がある「柴山」だった。「施肥する田畑の面積の10倍以上の山々から草を刈り取ってこなければならなかった」(水本邦彦『草山の語る近世』山川出版社)。

かるでら【カルデラ】

火山の噴火などによってできた大きな凹地のこと。盆地や湖、湾などとして美しい景観をつくり、また温泉も湧くなどして、人気の観光スポットになることが多い。屈斜路湖、洞爺湖、十和田湖、箱根、立山、穂高山、三原山、伯耆大山、阿蘇山などはカルデラである。

がれば【ガレ場】

岩壁などから石が崩落し、大小さまざまな石が散乱する場所。不安定な石が多くあり、落石も起こりやすい。できれば避けて歩きたい。ガラ場とも。

かれさんすい【枯山水】

日本庭園の様式のひとつ。水を用いない庭のことで、石や砂などで水の風景を表現している。龍安寺方丈石庭や大徳寺の庭は有名。

かわ【川】

川は貴重な資源である。生活用水、工業用水、農業用水、あるいは水力発電として利用、移動や運搬などの手段としても重要であった。遠いむかしから、わたしたちは川によってつくられた扇状地や河岸段丘、沖積平野に住み、肥沃な大地の恩恵を受けてきた。ただ、急峻な地形の日本では、雨が降ってもすぐに流出してしまうため、渇水や洪水に見舞われやすい。

がんせき【岩石】

地球は岩石によってできている。岩石とは、砂、泥、石、プレートなどのことで、でき方で、マグマが冷えてかたまった「火成岩」、風化・浸食された岩石が堆積され固まってできた「堆積岩」、いろいろな岩石が地球内部の高温高圧で組織が変わったり新しい鉱物ができたりしてできる「変成岩」の3種類に大別されている。

かんてんぼうき【観天望気】

雲や風などの自然現象や動物の行動などから天気を予測することを言うが、雲の状態や気圧変化、温度変化などを科学的に捉え、海や山での天候の変化や気象現象をつかむためには必要な知識である。

かんとうろーむそう【関東ローム層】

関東地方に分布する地層群の総称で、風成堆積物や火山灰などが堆積、風化、粘土化したもの。保水性が良く透水性も大きいという稀な特徴を持つ。旧石器時代の遺跡が関東ローム層の中から発見されている。

きがん【奇岩】

珍しい形や奇妙な形をした岩石のこと。奇岩怪石ともいう。浸食や風化あるいはマグマが固まったことなどによってできる。人びとは遠いむかしから、神として祀ったり、物語を作ったりしてきた。また観光の対象としてきた。「霊山 (りょうぜん)」(福島県伊達市)、「妙義山(みょうぎさん) 」(群馬県富岡市)、「瑞牆山 (みずがきやま)」(山梨県北社市)、「鬼岩」(岐阜県瑞浪市)、「乳岩 (ちいわ)」(愛知県新城市)、「伊勢山上・飯福田寺」(三重県松阪市)、「古岩屋」(愛媛県久万高原町)、「黒髪山」(佐賀県有田町)などが有名。

きじ【キジ、雉】

日本の固有種であり、日本の国鳥。明るい林、草地、農耕地、河川敷などに生息している。飛ぶのは苦手。

きじうち【キジウチ】

山中でおしっこやうんこをすること。お花摘みとも。

きつね【キツネ、狐】

日本でいうキツネは、ホンドギツネか北海道のキタキツネのこと。日本人とキツネとのかかわりは深く、人を化かしたり、人と結婚するなど、数多くの伝説や昔話に登場している。また神の使いとして信仰され、稲荷神の使いとなって全国に広がっている。油揚げを好むとされ、油揚げが入ったうどんを「きつねうどん」というというのもここからきている。

きもん【鬼門】

北東の方位。陰陽道では、鬼が出入りする方角で忌むべき方角としている。平安京の鬼門の方角の守りとして比叡山があるといわれている。

きょうこく【峡谷】

渓谷よりさらに深い谷のこと。谷の断面がV字形をし、谷底に平らなところがない。V字谷とも。日本では風光明媚なところが多く、黒部峡谷、天竜峡、瀞八丁(熊野川)などが有名である。

きょくそうりん【極相林】

森林は、それを構成する種が常に移り変わっていくが、ある種が優占となり、それ以上樹木の種類が変化しなくなる森林を極相林という。日本の森林では、陰樹(比較的光を必要としない樹木)が徐々に優占するようになっていく。白神山地のブナ林、屋久島の照葉樹林などが有名。

きょじゅ【巨樹】

極めて大きい樹木のこと。巨木、大木、大樹などともいう。日本ではほとんどの巨樹が聖なる樹とされる。鹿児島県蒲生町にある「蒲生の大楠(がもうのおおくす)」、熱海市来宮神社にある「阿豆佐和気神社(あずさわけじんじゃ)の大クス」、青森県深浦町の「北金ヶ沢のイチョウ」などが特に大きい。

ぎょどう【魚道】

ダムや堰などにある、魚が遡行できるように設けられた道。階段式やプール式などさまざまな構造の魚道があり、またエビやカニ用に人工芝などを張るなど、特殊な魚道もある。

きりどおし【切り通し】

山や丘などを掘り削って開いた道。鎌倉の朝夷奈(朝比奈、あさひな)切通や極楽寺坂切通などが有名。

きりん【麒麟】

中国神話の霊獣。鹿の体をもち鱗がある。顔は龍、尾は牛、蹄は馬、角が一本であることが多い。新潟県阿賀町にある麒麟山の名は、山容が麒麟の姿に似ているからだと言われている。

きんざん【金山】

日本は「金の国」といえないこともない。マルコ・ポーロが『東方見聞録』で 「黄金の国ジパング」と紹介したように、平安時代の奥州で中尊寺を中心とした黄金文化が栄え、その後、足利義満の金閣寺や豊臣秀吉の金の茶室などがつくられた。江戸時代には佐渡島の佐渡金山や鹿児島串木野金山、静岡県の土肥金山など多くの金山があり、輸出していた。現在でも鹿児島県にある菱刈金山は世界一の高品位金鉱床を誇っている。

ぎんざん【銀山】

日本では飛鳥時代まで銀を産出しなかったが、それ以降、各地に銀山が開発され、16世紀から17世紀にかけて世界の銀生産の3分の1を産出したと言われている。ユネスコの世界遺産に登録された島根県の石見(いわみ)銀山が有名だが、兵庫県の生野(いくの)銀山、秋田県の院内(いんない)銀山、山形県の延沢(のべさわ)銀山、福島県の半田(はんだ)銀山など多くの銀山があった。

くさりば【鎖場】

登山道で、登山者がつかんで上り下りできるよう、岩場などに鎖を固定しているところ。バランスをとるために補助として利用し、鎖に頼りすぎるとかえって危険。

くま【クマ、熊】

北海道にはヒグマが生息し、本州にはツキノワグマが生息する。九州では絶滅したと考えられている。ツキノワグマは人間を襲うことはないといわれているが、驚いた場合や子熊を守る場合襲うこともある(人が食料を持っていることを知るクマは人に近づくこともある)。クマに襲われないよう鈴を鳴らすことに科学的根拠はない。→ひぐま参照。

くまのさんざん【熊野三山】

熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社の3つの神社の総称。

けいこく【渓谷】

尾根にはさまれ渓流が流れる谷。滝や岩壁などがあって風光明媚なところも多い。また寒暖の差があって紅葉の名所にもなりやすい。龍王峡(栃木県)、吾妻渓谷(群馬県)、九頭竜渓谷(福井県)、寒霞溪(香川県)、深耶馬溪(大分県)などが有名。

けいだい【境内】

神社や寺院などが占有している土地のことで、富士山の山頂は富士山本宮浅間大社の境内。日光三山(男体山(なんたいさん)、女峯山(にょほうさん)、太郎山)や日光連山、華厳滝、いろは坂などは日光二荒山神社の境内。木曽御嶽山の山頂は御嶽神社の境内である。

けものみち【けもの道】

山に住む動物が通ることでできた道。まちがって迷いこむことがある。

けんがいづくり【懸崖作り】

懸造り(かけづくり)、崖造り(がけづくり)とも。岩壁や岩稜、山の斜面に建てられた寺院建築様式で、世界的にも珍しい。浜地や堤防上に建てられることもある。清水寺の清水の舞台(京都)、醍醐寺如意輪堂(京都)、長谷寺本堂、笠森観音(千葉)、三佛寺投入堂(鳥取)などが有名。

けんこう【健康】

山登りは健康にいいと言われている。老化防止、筋力アップ、新陳代謝の活性、心肺機能向上、糖尿病改善、ダイエット効果、睡眠改善効果、リラックス効果、鬱解消効果、免疫力上昇効果、脳の活性効果などなど。ただし科学的には部分的にしか実証されていない。また、反面、滑落や転倒などによるケガ、高山病や熱中症、凍傷などの病気も発生する。

げんしりん【原始林】

有史以来、人間の手がまったく入っていない森林。しかし日本には、そうした森林はないと考えられている。

げんせいりん【原生林】

極相に達した後に長期間にわたって人の手が入っていない森林。白神山地、知床、春日山原始林、屋久島などがある。

けんぞく【眷族/眷属】

仏や菩薩などの従者。伏見稲荷大社の狐、日吉大社の猿、護王神社の猪、春日大社や鹿島神宮の鹿、大神(おおみわ)神社の蛇、熊野三山の八咫烏、出雲大社の鶺鴒(せきれい)など。

げんりゅう【源流】

川のもととなる水が流れる大元の場所。水源とも。諸説あるが、日本で一番長い信濃川(千曲川)の源流は甲武信ヶ岳の長野県側斜面。利根川は群馬県みなかみ町の大水上山。石狩川は石狩岳の西斜面。天塩川は天塩岳付近。北上川は岩手県岩手町の弓弭の泉(ゆはずのいずみ)。

こう【講】

古くは仏典の研究などをする集団を言ったが、しだいに信仰的な会合を講というようになった。近世になり参詣旅行費を出し合い交代で参詣するものも言うようになった。当初は修験者が霊山への登拝を勧め、やがて御師が参拝者の案内や宿泊など世話をするようになり、全国に広がった。伊勢講、富士講、御嶽講、出羽三山講、立山講などがある。

こうさ【黄砂】

春、中国などにある砂漠や乾燥地域の砂が、上空に巻き上げられ、東アジアなど広範囲に降り注ぐ気象現象。日本でも7万年以上前から影響を受けている。黄砂によって、海洋や土壌にミネラルが供給され、植物や植物プランクトンの生育が促進される効果があり、酸性雨の中和作用なども指摘されている。その反面、健康被害や経済被害があり、気候への影響も懸念されている。

こうざんしょくぶつ【高山植物】

一般に森林限界より高い高山帯に生えている植物をいうが、ハイマツ帯や高層湿原の植物なども含めることがある。日本の高山植物は氷河期以降にやってきて生き残ったものだが、低山帯に生息していて高山に順応した種もある。日本列島は山岳の地形や地質が多種多様で、気候的にも冬季のジェット気流や多雪・多雨、また貧栄養土壌など過酷な条件が積み重なり、高山植物は環境に応じた多様性に富んだ特徴を持つに至っている。日本列島にはシダ植物と種子植物を合わせて約500~600種の高山植物が生育していると考えられている(増沢武弘『高山植物学』)。そのうち固有種は40種以上と非常に多い。固有種には、北岳のキタダケソウをはじめ、ウルップソウ、オゼソウ、オンタデ、シラネアオイ、シレトコスミレなどがある。しかし盗掘や食害、地球温暖化などによる環境の変化によって、現在、脆弱な日本の高山植物は深刻な危機に直面している。

こうざんびょう【高山病】

高山では気圧が低いため低酸素状態となる。頭痛、吐き気、嘔吐、めまい、顔や手足のむくみ、眠気などの症状が出、重症の場合は死に至ることもある。薬で治療が可能な場合もあるが、根本的な治療は低地に移動することである。予防として高所順化をおこなうこともある。

こうじゅう【講中】

講をつくって登拝したり祭に参加する信者の集まり。→こう

こうずい【洪水】

日本の国土の7割が山地であり、残り3割が平野だが、この平野の3割は洪水時の川の水位より低い地域である。急峻な地形の日本では、雨が降ってもすぐに流出してしまうため、渇水や洪水に見舞われやすい。98%の市町村が、10年間に1回以上の水害・土砂災害を経験している(1999~2008年の10年間。国土交通省『平成21年度国土交通白書』)。

ごうせつちたい【豪雪地帯】

大量に積雪がある地域のことで、累年平均積雪積算値が5m/日以上の地域(豪雪地帯対策特別措置法)。日本国土の約半分にあたり、約2000万人の人が住んでいる。とくにその中に青森市や旭川市など大きな都市が含まれ、都市の雪の積雪量では世界的に突出している。

こうそうしつげん【高層湿原】

貧栄養な低温湿地に発達する湿原。中部地方以北の日本海よりの山岳地帯に多い。池塘のある風景と美しいお花畑が特徴。尾瀬ヶ原をはじめ、雨竜沼湿原(北海道)、沼の平湿原(北海道)、田代山湿原(福島・栃木)、苗場山(長野・新潟)などが有名。

こうせき【鉱石】

岩石や鉱物を資源として呼ぶ場合。石灰石、珪石、ボーキサイト、石炭、鉄鉱石などが鉱石。

こうぶつ【鉱物】

石のうちで、純物質で結晶構造を持ち、化学式で表すことができる石。石英、長石、雲母、方解石、カンラン石、ダイヤモンドなどが鉱物。

ごおん【呉音】

漢字の読み方である漢音は唐の時代に日本に入ってきたが、それ以前からあったのが呉音。一般に仏教関係の言葉に多く使われる。たとえば、「大」はダイ(呉音)、タイ(漢音)、「美」はミ(呉音)、ビ(漢音)、「内」はナイ(呉音)、ダイ(漢音)。「山」は、呉音ではセン、漢音ではサン。しかし、大山(ダイセン)、氷ノ山(ヒョウノセン)、蒜山(ヒルゼン)などと、なぜ呉音で呼ぶかは、憶測の域を出ない。ちなみに「やま」はもっと古い言葉。

こくゆうりん【国有林】

日本は世界有数の森林国で、国土面積の約7割は森林。そのうちの約3割が国有林である。明治政府が、それまで幕府や藩が所有していた山林や持ち主が不明な山林を国有化した。国有林は、木材の生産だけではなく、水源涵養や山地災害の防止、環境保全、野生生物保護などを行っている。

こくようせき【黒曜石】

火山岩の一種で、マグマが固まったもの。割るとガラスのように鋭利な断面になることから、先史時代よりナイフやヤジリ、槍の穂先として使われた。日本では後期旧石器時代(約3

5千年前)に栃木県の高原山で採取された黒曜石が発見され(標高1400m前後)、それが関東平野で使われていたことが判明している。そのほか大分県の姫島、長野県の霧ヶ峰、伊豆諸島の神津島など多くのところで採掘されていたことがわかっている。

こにーで【コニーデ】→せいそうかざん

このはなさくやびめ【コノハナノサクヤビメ、木花咲耶姫】

木の花が咲くように美しい女性の意味から桜の花の女神とも言われ、富士山をご神体とする富士山本宮浅間大社ほか全国約1300社の浅間神社に祀られている。富士山本宮浅間大社ではコノハナノサクヤビメは水の神で、噴火を鎮めるために祀られたとしている。火の神として富士山に鎮座して東日本一帯を守っているという説もある。なお、『古事記』では木花之佐久夜毘売、『日本書紀』では木花開耶姫と書かれている。

ごりょうりん【御料林】

大日本帝国憲法下で皇室が所有していた森林。多いときで約360万ヘクタールあったが、戦後はすべて国有財産になった。

ごんげ【権化】→ごんげん

ごんげん【権現】

神仏の称号の一つ。日本固有の神々は、仏が衆生を救うために仮の姿で現れたもの(本地垂迹思想)と解釈して、権現と呼んで仏の性格をもたせた。愛宕権現、秋葉権現、熊野権現、金毘羅権現、蔵王権現などがあり、これらを山中に祀る山を権現山などと言った。全国に権現山は90山近くある(1/25000地形図中)。

―さ―

さいのかわら【賽の河原】

此岸(現世)と彼岸(あの世)を分ける境目にある三途(さんず)の川の河原。死んだ子どもが親孝行のために石を積み上げて塔を作ろうとするが、鬼に絶えず壊される。そこへ地蔵菩薩が現れて子どもを救うという話。信仰のために登られてきた日本の山には、その景観から「賽の河原」の名づけられたところが多い。

さおひめ【佐保姫】

平城京の東に位置する佐保山(奈良県法華寺町)の神で、春の女神。

さてつ【砂鉄】

古墳時代~奈良時代にかけての製鉄は鉄鉱石を用いたが、平安時代以降では、全国的に砂鉄原料に代わった。とくに山陰地方では、純度が高い「真砂(まさ)砂鉄」が採取でき、たたら製鉄の原料として使われた。道後山の前座野呂は当時の砂鉄採掘場で、斜面には鉄穴跡(かんなあと)が残り、大池は鉄穴跡だと言われている。

さとみや【里宮】

本殿が山上にある神社が、参拝者のために里に設けた神社。

さとやま【里山】

里山は主として村が管理していたが、幕府や藩が所有し管理するもの、あるいは寺社で管理するものなど種々の形態があった。日本では古くから山や川は共同の場であり、採鉱、狩猟、伐木、草刈りを生業とする人びと、さらには水の利用者などが山中で互いに共存していた。ただ平安時代から江戸時代に至るまで形骸化していた。村落が管理するものは入会地の形態をとり、「村掟」「村定」などという明文化したさまざまな規則を設けていた。村の住人のみが入会地の動植物を利用できるというもので、山については、盗みの禁止や伐採の使用制限、出入りする時間の制限などが決められていた。破ったものには村八分のような制裁もあった。

さる【猿】

日本ではニホンザルのこと。日本の固有種であり、日本のサルはこれ一種である。古くから山神あるいは山神の使いとされ、日吉神社ではサルは神の使い(猿神)とされている。庚申(こうしん)信仰も「申」が「猿」に通じることから、また神話に登場するサルタヒコ(猿田彦)もその名前から、サルが関連づけられるようになった。また人間に害をなす妖怪として、さまざまな昔話や説話にも登場する。ちなみに猿面峰(長野)など猿がつく山名は60山ほどある(2

5千分の1の地形図中)。

さわ【沢】

谷と同じ。ただ谷は西日本側、沢は東日本側の名称に多い。

さわのぼり【沢登り】

日本で生まれた登山スタイル。沢を遡行して頂をめざす。変化に富んだ滝や川床を抜けていく楽しさがあり、夏は涼しい。黒部峡谷を遡行したことで知られる冠松次郎(かんむりまつじろう)がパイオニアとされる。

さんかくてん【三角点】

むかし地図をつくる際には三角測量を用いておこなったが、三角点とはその基準になる点。見晴らしのいい高山の山頂付近に設置されている場合が多い。

さんがくぶっきょう【山岳仏教】

平安時代、天台宗や真言宗は、山中に寺院をかまえ修行・研学の場とした。

さんご【サンゴ、珊瑚】

、固い骨格を発達させる刺胞動物門花虫綱に属する動物。サンゴをはじめ、有孔虫、ウミユリ、フズリナ、円石藻、石灰藻などの殻は、堆積し石灰岩になる。エベレストの頂上、日本では伊吹山や藤原岳や武甲山などが石灰岩の山である。

さんごう【山号】

寺院に付ける称号で、寺院が所在する山の名を付けていることが多いが、そうでないこともある。

じおぱーく【ジオパーク】

世界ジオパークネットワークの審査を受けて認定されている日本の「世界ジオパーク」は、洞爺湖有珠山、糸魚川、島原半島、山陰海岸、室戸、隠岐、阿蘇、アポイ岳の各ジオパーク8地域。また日本ジオパーク委員会より加盟を認定された「日本ジオパーク」は43地域(2016年9月現在)である。ちなみに「ジオパーク」という言葉を世界で最初に使い始めたのは糸魚川市。

しかざん【死火山】

有史以来噴火した記録がない火山を指すが、現在は学術的には使わない用語。数万年周期の噴火活動もあることがわかってきたためで、休火山とともに使っていない。現在では「活火山ではない」「活火山以外の火山」などという。

しじんそうおう【四神相応】

京都市北区にある船岡山は、平安京をつくるときの、重要な根拠になった場所とされている(諸説あり)。日本の中世の都づくりは、四神相応の地という中国から来た思想に強く影響を受けていて、都の東から西にかけて水があり、西から北が高地で、南が低く、西に長道のある地勢が吉祥とされていた(吉野裕子)。北に玄武、東に青龍、南に朱雀、西に白虎という神獣に守られる。船岡山は平安京の真北にあり、玄武の高山といわれている(諸説あり)。

しちようかいざんれつ【七曜海山列】

太平洋の日本海溝に沿って、小笠原諸島の線上に並んだ海山。日曜海山、月曜海山、火曜海山、水曜海山、木曜海山、金曜海山、土曜海山がある。そのほか九州南方には、太陰暦海山群があり、睦月海山、如月海山、弥生海山、卯月海山、皐月海山、水無月海山、文月海山、葉月海山、長月海山、神無月海山、霜月海山、師走海山という名がつけられ、元号火山列や長寿海山群などおもしろい名前の海山が数多く存在する。

しめの【注連野、標野】→ごりょうち

じゅうこく【縦谷】

山脈や丘陵に沿ってほぼ平行に走る谷。北上川、吉野川、紀ノ川など。

しゅげんしゃ【修験者】

修験道の実践者。山伏とも。

しゅげんどう【修験道】

古くからある山岳信仰と仏教の密教的要素が習合してできた日本独特の宗教。山で厳しい修行をつみ、呪力を体得して加持祈祷をおこなう。奈良時代に役小角(役行者)が創始したとされる。熊野・大峰山、白山、出羽三山、石鎚山(四国)などが修行の道場となった。

しゅみせん【須弥山】

宇宙の中心にそびえるという山。弥山(みせん)という名の山が、広島県厳島のをはじめ、奈良県天川村、山口県岩国市、島根県出雲市、四国石鎚山の主峰などにある。

しょうようじゅりん【照葉樹林】

温帯の常緑広葉樹林で、葉に光沢があることからその名がある。シイ・カシ・クスノキ・ツバキなどの林。中国南西部から日本列島西南部にかけて広く分布していたと考えられるが、現在はほぼ壊滅している。伐採などの影響で落葉広葉樹林に変化し、またスギ、ヒノキなどの人工林になったためである。宮崎県綾町「綾の森」をはじめ、香川県の金刀比羅宮など社寺林に残る。

じんこうりん【人工林】

人の手によって樹木の生殖や育成がされている林(そうでないのは天然林)。スギやヒノキを植えることが多い。これまでは一種類の樹を植えていたが、最近は複数の樹種や広葉樹を植えることもおこなわれている。手入れがされず土砂災害の原因となったり、生態系の破壊、健康被害など多くの問題を抱える。全森林面積の約4割が人工林である。

しんざんゆうこく【深山幽谷】

奥深い山岳や渓谷がおりなす静かな自然の世界を表現した言葉。中国の和歌や句に詠まれ、山水画や水墨画のモチーフともなった。日本の近代登山の黎明期には、日本アルプスや秩父の山などに入り、自然を捉え直す観想的な登山をおこなった。挑戦的ではない、日本の山登りのありかたのひとつ。

しんたんりん【薪炭林】

エネルギー源であった薪や炭をつくるための森林。関東平野に残る広葉樹林の多くは、その名残り。江戸時代中期の年間薪炭消費量は800万トン、その生産に必要な里山は300万ヘクタールだったという(養父志乃夫『里地里山文化論 上』農山漁村文化協会)。なお300万ヘクタールとは東京都の面積の15倍。

しんぼく【神木】

神体である木。日本での古い神道の信仰の対象で、神や精霊、魂などが宿るとされる。一般的に神社神道の神社、神宮の境内にある。実相寺の「山高神代桜」(山梨県)、長泉寺の「大銀杏」(岩手県)、八坂神社の「日本一の大杉」(高知県)、清澄寺の大杉(千葉県)、杉桙別命神社(すぎほこわけのみことじんじゃ)の大クス(静岡県)など数多くの神木がある。

しんりんげんかい【森林限界】

富士山の上の方には樹木がない。森林限界とは高木が生育できなくなる限界の高度のことで、低い気温、積雪、風、貧栄養な土壌などの影響による。とくに日本の場合、ヨーロッパや北アメリカなど世界的な基準よりも標高が低くなっており、それは冬季のジェット気流による強風や多雪によって高木の生育がむずかしいからだと考えられている。なお、森林限界は緯度によって変化し、本州中部の高山では2500m前後、北海道では1500m前後(利尻島550m)である。

しんりんよく【森林浴】

森林の中や野山を歩き、自然に接すること。精神的な癒しや健康増進などが目的。フィトンチッドの影響もあり、ストレスホルモンの減少、副交感神経活動の上昇、交感神経活動の抑制、血圧や脈拍数の低下などが実証されている。

すいげんかんよう【水源かん養】

土壌には水などを蓄え、洪水や渇水を緩和する機能がある。森や山地に降った雨や雪解けの水は一時的に土壌に蓄えられて、徐々に流れてゆく。「緑のダム」とも。ただし土壌が荒廃した森林は土砂災害をもたらす。

すぎ【スギ、杉】

日本の固有種。学名の「クリプトメリア・ジャポニカ」は「隠された日本の財産」の意味。北海道南部から屋久島まで分布し、縄文時代から利用されていた。軽量で加工しやすく、湿度を一定に保ち、香りがよく、木目が美しいため、建築材や家具、桶類、舟などを作るのに利用され、日本人の生活には不可欠の木だった。病害に強く成長スピードが速いため、江戸時代には植林がおこなわれている。現在、森林面積の約18%をスギの人工林が占める(林野庁)。手入れが行き届かない人工林とスギ花粉が懸念事項。

すみ【炭】→もくたん

すみせん【須彌山】→しゅみせん

せいそうかざん【成層火山】

同じ火口から複数回にわって噴火を繰りかえし、溶岩などが積み重なって形成された円錐状の火山。富士山をはじめ、羊蹄山、岩木山、鳥海山、磐梯山、浅間山などで、「××富士」と呼ばれることが多い。

せきらんうん【積乱雲】

別名「雷雲」。雄大積雲とあわせて「入道雲」と呼ぶこともある。落雷や雹(ひょう)、突風や強雨、平地では竜巻の原因ともなる。登山者にとっては最も危険な雲。

せっかいせき【石灰石】

サンゴやフズリナなどの生物の死骸から形成された生物岩的なものと、水中に溶解していた炭酸カルシウムが沈殿した化学岩的なものの両方がある。炭酸カルシウムの純度が高い良質なものが多く、セメントだけではなく、鉄鋼、化学、食品、医薬、水処理、公害防止など幅広い分野で利用されている。世界の石灰石の採石量はアメリカ、中国に次いで3位であり、国内で自給できる唯一の天然資源でもある。

せっけい【雪渓】

高山などで谷に積もった雪が夏にかけて溶けずに残っているもの。日本の三大雪渓は、白馬岳の「白馬大雪渓」、針ノ木岳の「針ノ木雪渓」、剱岳の「剱沢雪渓」。

せつでん【雪田】

高山の稜線付近で、夏まで解けない残雪をいう。冬季、日本の高山は猛烈な強風下に晒されて、植物にはきわめて厳しい環境になるが、風が比較的弱い場所では雪が大量に積もり、積雪による断熱効果によって土壌の気温がほぼ0度前後に保たれる。夏になって雪が溶けた後は地表温度も上がり、雪解けで水の供給多くなるため、植物の生育には好条件となる。

せんこうこく【先行谷】

もともと川が流れていたところを川を横切るように地盤が隆起してきて、隆起の速度よりも川を穿つ速度が速かったためにできた谷。最上峡(山形)、保津峡(京都)、大歩危・小歩危(徳島)など。

そうじほう【双耳峰】

似かよった山頂が2つある山。鹿島槍ヶ岳、谷川岳、燧が岳、四阿山、雨飾山、水晶岳、笊が岳、筑波山など。耳がつくのは谷川岳のみ(オキの耳、トマの耳)。

そうもくばい【草木灰】

草や木を燃やしてつくった灰。カリウムと石灰分を含む肥料で、遠い昔からあった焼畑農業では速効性のある無機成分として利用されていた。

―た―

だいやもんどふじ【ダイヤモンド富士】

富士山頂でダイヤモンドが輝いているような光景。山頂から太陽が昇る瞬間と沈む瞬間に見られる。富士山が東もしくは西の方角に見える場所から、気象などの条件が整えば、年に2回見ることができる。月が輝く「パール富士」というのもある。

たき【滝】

日本列島は山が多く平野が少ないため川の傾斜がきつく、滝となって下るところも多い。滝は景勝地として人気を集め、観光スポットとなりやすい。日本の主要な滝は、「日本の滝百選」に選定されている。那智滝(和歌山)、華厳滝(栃木)、袋田の滝(茨城)、秋保大滝(宮城)、三条の滝(福島)、安倍の大滝(静岡)、称名滝(富山)、白糸の滝(静岡)、白水滝(岐阜)などが有名。

だし【山車】

祭礼の際に引いたり担いだりして巡行する出し物。地域によって曳山(ひきやま)、屋台(やたい)などという。神が鎮座、あるいは降臨する山を模してつくられている。

たたらせいてつ【たたら製鉄、踏鞴製鉄】

砂鉄や鉄鉱石を原料とし、木炭を燃やして鉄をつくる技術で、6世紀後半(古墳時代後期)に朝鮮半島から伝えられ、江戸時代中期に技術的に完成した。純度の高い鉄が生産でき、日本刀が誕生している。中国山地では良質な砂鉄が産出され、江戸時代に全国の70~80%の鉄を産出したといわれる。広島の道後山には、県史跡指定の「六の原製鉄場跡」があり、製鉄の神様をまつる金屋子(かなやご)神社や砂鉄を流す鉄穴(かんな)流しの溝が残っている。たたら製鉄は燃料として大量の木炭が必要なため、中国山地では近世以降、禿げ山となった山が多く、現在でも牧場や草地の山がある。

たつたひめ【竜田姫】

竜田山の神で秋の女神。いま竜田山という地名は存在しないが、関西の生駒山地の最南端に竜田神社や竜田川という名が残る。

ちけいず【地形図】

地形図は国土交通省国土地理院が発行しており、とくに縮尺が5万分1と2

5千分1、1万分1の図を地形図としている。印刷された地図は大型書店や国土地理院で入手でき、国土地理院のウェブサイトでは「地理院地図」もしくは「電子国土基本図」(地図情報)で閲覧できる。また、地理院地図のデータを活用し、独自の地理情報発信サイトを構築することも可能になっている。

ちとう【池塘】

高層湿原にある池沼。堆積した貧栄養な泥炭層に雪解けの水などがたまってできるため、周囲とは隔絶した環境となる。浮島やお花畑が広がる景観は格別。雨竜沼湿原(北海道)、平ヶ岳(新潟・群馬)、鬼怒沼湿原(栃木)、田代山湿原(福島・栃木)、苗場山(長野・新潟)など。

ちねつはつでん【地熱発電】

地熱を利用しておこなう発電。火山が多い日本では再生可能エネルギーとして期待されるが、初期費用や国定公園・国立公園の規制、温泉地からの反発などのハードルもある。現在20基が運転され、発電電力量は、国内の総発電量のわずか0.24%である(2014年)。

つきやま【築山】

人工的につくった日本庭園や公園などの山。大阪にある天保山(4.53m)や蘇鉄山(6.97m)、または東京の六義園や小石川後楽園など。

つち【土】

土は陸地表面の3割を占める。地球の土は最初は岩石が風化して細かくなった無機物質だったが、5億年前に土壌が誕生した。地衣類やコケが腐食して土壌となったもので、4億年前頃からシダやキノコなどが加わり、生物の死骸や生物によって分解などされたものが加わって現在のような土壌になった。地表からの深さはせいぜい1~2mにすぎない。ちなみに月や火星には土はない。

つんどらきこう【ツンドラ気候】

寒帯の気候で、樹木が成長できず永久凍土が広がっていることが多い。日本の大部分が温帯気候だが、富士山はツンドラ気候。

てんじょうがわ【天井川】

周辺の地面より高いところを流れる川のこと。川の下を鉄道や車がくぐることになる。繰り返しおこなわれる河川の改修で、川底に土砂がたまるとそれにあわせて堤防を高くするため、それを繰り返すうちに川が上がっていくもの。渡良瀬川(栃木県足利市付近)、百瀬川(滋賀県マキノ町沢付近)、寝屋川 (大阪府寝屋川市付近)、白川(熊本市市街)などがある。

とうげ【峠】

道が山を越える場合、山道を登りつめ、そこから下りになるところ。山頂と山頂をつなぐ尾根道の最も低いところでもある。乗越(のっこし)とか、越(こえ、こし)または、尾根側から見て、鞍部(あんぶ)、窓、コルと言う。峠はかつて国や村の境であったこともあり、祠や石碑、地蔵や道祖神などが設けられているところも多い。異界、異文化との接点でもあり、数々の神話や伝説、歴史が残されている。美幌峠(北海道)、星峠(新潟)、仏ノ山峠(栃木)、大菩薩峠(山梨)、旧碓氷峠(長野)、ザラ峠(富山)、さった峠(静岡)、 鋳物師戻峠(兵庫)、坂堂峠(山口)、国見峠(宮崎)などなど。

とうこうせん【等高線】

地図上、同じ高さを結んだ線。山や谷などの地形の起伏を表現する。等高線と等高線の間が密になっている場合は急斜面、疎になっている場合は緩斜面。山頂など高い方から見て、等高線が凸状になっているところは尾根、川の方から見て凸状になっているところは谷になる。

どうざん【銅山】

弥生時代から青銅器が入って来ていたが、銅が生産されはじめたのは飛鳥時代末期から。銅を用いた貨幣(和同開珎)がつくられ流通するようになった。奈良時代につくられた東大寺の大仏は500トンもの銅を使っており、山口県の長登(ながのぼり)銅山での産出だったと考えられている。戦国期より明治年間まで、銅が日本の主要輸出品となり、17 世紀後半から 18 世紀前半まで、世界1位の銅生産国であった。江戸時代の大きな銅山としては、足尾銅山(栃木)、別子銅山(愛媛)、阿仁(あに)銅山(秋田)などがある。しかし明治になって足尾鉱毒事件に代表される環境問題が社会問題化する。現在、日本の銅山はすべて閉山している。

とめやま【留山】

江戸時代、山林保護のために狩りや伐木など一般の利用を禁じた山林。大量伐採による資源の枯渇や土砂流出に歯止めをかけようとした治水政策。すでにこうした措置は、奈良時代にもおこなわれていたが形骸化していた。なお、東京の目白にある「御留山」(おとめ山公園)は徳川幕府が鷹狩りをするため、伐採だけでなく立入りも禁じていた。

とやま【外山】

人里に近い山。

とんぼ【トンボ】→あきあかね

―な―

にほんあるぷす【日本アルプス】

日本アルプスという名称は、イギリス人鉱山技師ウィリアム・ゴーランドによってつけられた。後に小島烏水(こじまうすい)が飛騨山脈を「北アルプス」、木曽山脈を「中央アルプス」、赤石山脈を「南アルプス」と名づけた。また、イギリス人宣教師のウォルター・ウェストンは、日本アルプスに登り、1896年『日本アルプスの登山と探検』を出版し、日本アルプスをヨーロッパに紹介した。

にほんざる【ニホンザル、日本猿】→さる

にほんていえん【日本庭園】

一般的に、西洋の庭園が人工的な美しさを追及しているのに比べ、日本庭園は自然の情景を表現している。海や川に見立てた池を中心に、山をつくり、草木や石を配して四季を楽しむ。また実際の山などを借景とすることもある。そのほかに、「枯山水」のように水を使わない庭園、「露地」のように近景のわび・さびを茶室に付随させた庭園がある。

にゅうどうぐも【入道雲】→せきらんうん

―は―

はいまつ【ハイマツ、這松】

常緑低木のマツ。シベリアやカムチャツカに分布し、日本は南限となる。日本の高山の森林限界にはハイマツの群落が多い。冬季の強風や低温下でも、低木であるため雪の中に埋もれ過酷な環境をしのいでいると考えられる。積雪による夏季の豊富な降水には恵まれている。

ばかおね【バカ尾根】

単調な長い登り下りがある尾根。仙丈ヶ岳の「仙塩尾根」、甲斐駒ヶ岳の「黒戸尾根」、丹沢の「大倉尾根」など。

はげやま【はげ山】

いまの日本の山は緑が豊かだが、過去2000年以上にわたって山は荒れていた。人は木で家や道具をつくるだけでなく、肥料やエネルギー源としても利用してきた。多くの産業で薪や炭を使い、落葉や下草などを肥料に使っていた。平城京や平安京の建設、あるいは城や城下町の建設などで膨大な量の木材が使われている。都に近い山から伐り出しがおこなわれ、木材がなくなると次第に範囲を広げていった。琵琶湖の南にある田上(たなかみ)山地は、藤原宮や平城京の造営、さらには江戸時代になっても伐採がつづけられ、山林が荒れてふもと一帯に洪水や土砂崩れなど大きな被害をもたらしていた。山は「田上のはげ」といわれていた。

はなつみ【花摘み】

山中でおしっこやウンコをすること(とくに女性)。キジウチとも。

はなみ【花見】

花見の歴史は古く、『万葉集』などにも登場する。もっとも奈良時代まではウメの花で、サクラになるのは平安時代から。農漁村では「山遊び」「野遊び」あるいは「浜遊び」と言って、仕事を休んで野山や浜辺で遊んだり食事をする習わしがあった。ほとんどの地域が桜の開花日を設定しており、豊穣を願う行事だったと考えられている。

はやま【端山】

人里に近い山。

ひぐま【ヒグマ、羆】

エゾヒグマのことで北海道に生息する。アイヌはキムンカムイ(山の神)として崇めている。平成24年度現在10,600頭±6,700頭生息していると推定されている(北海道環境生活部環境局生物多様性保全課)。

ひすい【翡翠】

2016年(平成28年)、日本の国石として日本鉱物科学会が選定した。世界最古の翡翠大珠(たいしゅ)が山梨県天神遺跡(縄文時代前期末)で発見されている。弥生時代から古墳時代にかけて、祭祀や呪術あるいは装身具や勾玉などに用いられた。

ひょうが【氷河】

かつて日本に氷河はないとされていたが、2012年(平成24年)に日本雪氷学会が、富山県立山連峰の剱岳三ノ窓雪渓と小窓雪渓、立山の御前沢雪渓に氷河が現存することを調査発表。それぞれ「三ノ窓氷河」「小窓氷河」「御前沢氷河」と名がついた。

ひょうこう【標高】

日本の山の標高は、東京湾の平均海面からの高さをいう。日本では、遠方の離島を除いて、東京湾の平均海面が基準である。実際の測量の基準点としては、国会前庭にある日本水準原点を用いている。

ふぃとんちっど【フィトンチッド】

樹木などが周囲のバクテリアから自分を守るために発散する化学物質(テルペン類等の揮発性物質)。人間がこれを吸うと精神安定作用(ストレス解消)があり、さらに付着することで除菌作用や消臭・脱臭作用があることで知られている。また、森林浴によって、ストレスホルモンの減少、副交感神経活動の上昇、交感神経活動の抑制、血圧や脈拍数の低下などが実証されている。

ふうか【風化】

風化作用。岩石が風・水・温度・生物などの影響で、次第に崩れて、砂や土となること。

ふがく【富岳】

富士山の別称。

ふじこう【富士講】

江戸時代、江戸を中心とした関東で流行した講のひとつ。富士のふもとに店を構える御師(おし)が信仰の指導者をし、富士登山時の宿泊所や食料、装備、さらには娯楽の場などを提供していた。「講」参照。

ふどう【不動】

不動尊・不動明王の略。

ふくりゅうすい【伏流水】

地下を流れている川で、多くは河川敷や旧河道の下などを流れている。ただ伏流水の流れの速度はきわめて遅く、1m流れるのに1日、長いもので数年かかるものがあることが明らかにされている。富士山の場合はかつての溶岩流に沿って流れ、末端部で湧き水となって地表に出てくる。流れた雨によっては100年以上かかってふもとに到着するところもあるという。富士山周辺では湧き水に恵まれ、柿田川をはじめ、忍野、楽寿園小浜池、湧玉園、白糸ノ滝などが有名。生活用水や農業用水ばかりでなく、静岡の名産であるワサビ栽培や日本酒の製造、紙の製造などと多く人びとが恩恵を受けている。また、雨が伏流水となることで、周辺の水害も少ないという。

ぶんすいれい【分水嶺】

降った雨は、山の稜線でどちら側かに流れ、異なる水系を流れことになる。最終的には海に注ぐ。中央分水嶺(中央分水界)とは、片方が太平洋に、片方が日本海に流れる分水嶺である。2006年、日本山岳会がこれを踏査した。

ほうらいさん【蓬莱山】

古代の中国で、仙人が住むといわれていた島。不死の薬、金銀の宮殿があるとされる。日本には10山以上の蓬莱山(宝来山、鳳来山含む)がある(2

5千分の1地形図)。

ぼたやま【ぼた山】

石炭や亜炭を採掘する際に捨てた石(ボタという)が積み上がってできた山。炭鉱があった地域にあり、北海道の赤平市や夕張市、福岡県の飯塚市などでは産業遺産として保存している。

ぼっか【ボッカ】

荷物を背負って運ぶ、むかしの職業。山小屋などに荷物を運んだ。漢字では「歩荷」。

―ま―

またぎ【マタギ】

狩猟を専業とする集団で、とくに中世からつづく独特の宗教観や生命倫理もつ。山は山の神が支配するところと考え、猟のあいだ女性と話しをしたり身体に触れることをせず、マタギ言葉を使う。現在は、カモシカが天然記念物になったため、冬期に北海道や東北の奥深い山中でクマなどを中心に狩る。秋田市県の阿仁はマタギの里として知られている。

みくまり【水分り】

①分水嶺。②水を分けること。水を調節すること。

みね【峰】

山の一番高いところ。

めいざん【名山】

名高い山。日本百名山や山梨百名山などがある。

もくたん【木炭】

新石器時代から使われていたと考えられている。平安時代ごろより炭焼きがおこなわれるようになり、年貢としても徴収された。おもに燃料として利用され、その後、暖房や調理に用いられ、戦後、石油や都市ガスなどが普及するまで用いられていた。

もくどう【木道】

高層湿原やお花畑などで、板を渡して歩道としたもの。登山者による環境破壊を防ぐためのもの。登山者の便を考えてつくっているわけではない。尾瀬(群馬など)や釧路湿原(北海道)、雨竜沼湿原(北海道)などは規模が大きい。

もり【森、杜】

森林。日本の国土の66.4%が森。森林限界を除き、日本の山のほとんどが森におおわれている。山が急峻であるため、人が住んだり耕作できるところは限られ、また雨量が多い日本では伐採しない限り、荒れ地であっても樹木が生い茂り森となる。山と森は、あまり区別することができず、古くは同じ意味で使われていた。『万葉集』などに登場する奈良県の畝傍山(うねびやま)や天香具山(あまのかぐやま)は、「モリ(森あるいは杜)」「ミモロ(神が降臨するところ)」「カムナビ(神がいるところ)」と呼ばれる神聖な場所であった。また東北地方の山には大白森(おおしろもり)、竜ヶ森(りゅうがもり)のように末尾に森がつく山がいくつもあり、アイヌ語で「モリ」とは「小さい山」をいう。

―や―

やせおね【痩せ尾根】

尾根で、両側の傾斜が急なところ。刃渡り、戸渡り、馬の背、金冷やしなどの名がつく。とくに鋭利なものはナイフリッジと呼ばれる。槍ヶ岳の北鎌尾根、剱岳の八ツ峰、戸隠山の剱の刃渡り・蟻の塔渡り(ありのとわたり)など。

やち【谷地】

東日本で使われる言葉で、湿地帯のこと。

やまいぬ【山犬】

ニホンオオカミのこと。野犬のことを指すことも稀にある。

やまかがし【ヤマカガシ、山楝蛇】

日本の固有種。北海道と南西諸島、小笠原以外の日本全国に棲息する。日本の古語では「山の蛇」を意味する。しかし実際には水辺や水田などに多い。危険が迫るとコブラのように頭を持ち上げる。毒蛇。

やまくじら【山鯨】

イノシシの肉。

やまことば【山言葉】

木こりや漁師が山仕事のときなどに使う言葉。

やますきー【山スキー】

バックカントリースキーとも。ゲレンデ以外を登りかつ滑る。高度な雪山登山のスキルが必要。

やまつなみ【山津波】

大規模な山崩れ。

やまどめ【山止め】→とめやま

やまねこ【山猫】

日本にはツシマヤマネコ(対馬)とイリオモテヤマネコ(西表島)のみが棲息する。「野猫(ノネコ)」は野生化したイエネコで、山猫ではない。

やまびらき【山開き】

その年初めて山を登山者に開放することで、登山の安全などを祈って祭祀をおこなう。海開きや川開きと同様のもの。開山祭ともいう。古くは、霊山では神霊の宿る地であるため入山が禁止され、夏のある期間解放されるときにおこなった儀式。

やまぶし【山伏】→しゅげんしゃ

ゆさん【遊山】

山や野に遊びにいくこと。「物見―」

ようがん【溶岩】

マグマの液体状態のものと固まったもの。

ようがんどーむ【溶岩ドーム】

溶岩円頂丘(ようがんえんちょうきゅう)とも。溶岩がゆっくり流れ出、噴出した火口に高く盛り上がってできた、ほぼドーム状の地形。昭和新山(北海道)、樽前山(北海道)、三瓶山(島根)、九重山・三俣山(大分)など。

―ら―

らいちょう【ライチョウ、雷鳥】

ニホンライチョウのことで、日本の固有種。1年を通じ高山で暮らし、本州中部地方の高山帯にのみに生息する。2万年前の氷河期に日本にやってきて温暖になっても一部が日本の高山に残った。シカやサル、カラスの生息域拡大などによって急激な減少が続いている。

らくらい【落雷】

高山では雷雲が近づいてきて落雷があるのではなく、ガスの中で落雷が起こる。落雷にあった場合に安全なのは家屋や車の中。森林限界での落雷は逃げ場がないため非常に危険で、事前の回避が重要。高山では午後から落雷が多発するので、午前中に行動を終えることも必要。

りくとう【陸島】

もとは大陸の一部だったが地盤陥没によって大陸と切り離された島。日本列島やイギリス諸島など。

りくとう【陸稲】→おかぼ

れいざん【霊山】

聖なる山。神そのもの、あるいは神が住む、もしくは神が降りてくる山。神体山・神奈備(かむなび)とも。霊山(れいざん、りょうざん)という名の山もある(福島、三重、大分など)。

ろっこんしょうじょう【六根清浄】

六根(眼根・耳根・鼻根・舌根・身根・意根)からの迷いを絶ち心身を清らかにすること。信仰登山などで唱えられた。

ろんぐとれーる【ロングトレール】

〈「歩く旅」を楽しむためにつくられた道のことです。登頂を目的とする登山とは異なり、登山道やハイキング道、自然散策路、里山のあぜ道、ときには車道などを歩きながら、その地域の自然や歴史、文化に触れることができるのがロングトレイルです。(日本ロングトレイル協会のホームページより)〉信越トレイル(80㎞、 長野県)や高島トレイル(80㎞、滋賀県)、八ヶ岳山麓スーパートレイル(200km、長野県、山梨県)などがある。

―わ―

わ【倭】

古代、中国や朝鮮では、日本を「倭」呼んでいた。魏志倭人伝には、「倭人在帯方東南大海之中、依山島為国邑」(倭人は帯方郡の東南の大海にあって、)島の国に住んでいる)とある。

わきおうかん【脇往還】

江戸時代、五街道を設け、それ以外は脇往還と呼ばれた。歴史的に萩往還、矢倉沢往還、秩父往還などが有名。